【インタビュー】ザ・ポップ・グループ、攻めの姿勢を崩さないポストパンク界の生ける伝説

ポスト

■目を見開いて耳も常に構えておくこと
■ミスこそが最高のハプニングだったりするんだから


──アルバムのアートワークも印象的ですが、これにはどういう意味が?

マーク:アルバムのジャケットの絵についての解釈は皆に任せるよ、ある程度までは、ね。ただ…、いや、まあ、そういうことだ。俺は音楽でもモンタージュのような作り方をすることがあるが、それと同じで…ウィリアム・バロウズ的にあるものを細かく切り分けてバラまいて、偶発性に任せて拾ったものを並べてみるとそこに閃きが生まれることがある。俺たちの曲作りもそんな感じで、スタジオで実験している時にフッと何かが生まれてくるんだよ。何かを具体的に狙って探しに行く、というよりも。人生もそう。目を見開いて、耳も常に構えておくこと。場合によっちゃ、ミスこそが最高のハプニングだったりするんだから。わかるかな。

──それにしても、THE POP GROUPが再始動して喜んだファンの多くも、実は継続して活動するとまでは予想していなかったんじゃないでしょうか。

マーク:まあな。でもTHE POP GROUPに予想など立たない。予想できるとしたら、予想できないことが起こるということだけだ。俺たち自身、どうするつもりかわかっていないんだからな。俺たちがこれをやっている理由は、自分たちを楽しませるためだ。他で聴けない音楽を作り、他じゃ手に入らないものを創り出すことで自分たちが楽しんでいる。出来上がったのがたとえカセットテープ1本だとしても、欲しいものを作れりゃそれでいい。だから、作っている最中は他人のことなんか考えちゃいないんだ。それがああいう結果になったのは…セールスを見てもたまげたよ。日本では輸入盤チャートのトップ5に入ったんだぜ。異常だよ、異常! あ、輸入盤じゃないか、日本盤が出たんだから。


──洋楽チャートですね。

マーク:そう、そう。しかし、俺にとって大きかったのは、THE POP GROUPがどうこういうよりも、世界中には非常に頭のいい、知的で意識の高い人間が大勢いて、社会のクソみたいな右翼やらアホどもやらが俺たちの世界を左右して乗っ取ろうとしているということに気づいている、ということがその結果から感じられたことだ。そういう善良な人たちは、音楽を含めて何に対してもオープンで、嬉しいことに支え合うことを知っている。俺の好きな仲間意識ってやつがあるんだ。ジャーナリストと話をしたり、俺は理論の世界でもあれこれヘンなことをやったりもしてるが、どこでもそれは同じこと。THE POP GROUPは、若い頃の活動や、いわゆるポストパンクってやつも踏まえて…俺たちだけじゃなく、GANG OF FOURやTHROBBING GRISTLEなんかも一緒に、「良いと思ったものは徹底的に支持する」という姿勢の象徴になっている。俺だったら、実験的な姿勢を支持するし、ポスト・コンセプチュアルを支持するっていう、そうやって敬意を表するのが大事なんだ。これはいいことだよ。説明すんのが難しいけど、例えばJ-Popなんかとは一線を画してるわけで。

──ところで、最近はどんな人の音楽を聴いていますか?

マーク:Spoonie Gee! あとGOTH-TRAD。最高だよ。リミックスをやってもらったばっかりで昨日届いたんだけど、これが文句なしに素晴らしい。あと、NYのヒップホップの連中で、このところ一緒に仕事をやったりしてるダーリックってのもすごいいいし、バグも好きだし、ファクトリー・フロアなんかもいいし、ディスコとかダンス系だとDIAGONALから出てるやつとか、パウエルの。テクノなんかだと一番先端いってる実験的なやつを出してる。GOTH-TRADはたぶん、日本人の男がひとりでやってるんだと思うけど、とにかく音が素晴らしい。昔のTHE WILD BUNCHみたいな、初期のMASSIVE ATTACKみたいな、そこに興味深いポスト・グライムっぽい新しい何かが加わっているような…。昨日はそのリミックスを聴いて背筋に戦慄が走ったよ。文句なしに素晴らしいトラック。ものすごく「今」なんだ。俺たちのよりずっといい(笑)。だから買え!(笑)

──あなた方のじゃなくて、彼のを?(笑)

マーク:パンクの時代にはよく言ったもんだ。「俺たちなんか聴いてないで自分でバンドを組め」って。

──なるほど。さて、THE POP GROUPは先が読めない、ということでしたから、今後の予定は聞いても無駄でしょうかね。

マーク:とりあえず、次はカントリー&ウエスタンのアルバムになりそうだよ。フルート入りで。フルートっていっても、ペルーの笛だけどね。というのは冗談で、当面俺たちはこのTHE POP GROUPという、いわゆるプロジェクトにコミットしていくつもりだ。俺自身は他にも人の手伝いとか色々やっていくが、全員、今はこれが気に入って没頭できているから、あちこちでライヴもやるだろうし、THE POP GROUPとしての活動は続いていくだろう。『Y』の再発もあるしね。THE POP GROUPの1stアルバムだ。その他諸々、やりたいことはいくつも転がっている。だから消えやしないよ、俺たちは。やってて楽しいんだから、困ったもんだ。

──困りますか、楽しくて。

マーク:楽しいなんて、パンクじゃなかろうが。深刻な顔してなくちゃ。笑ってるのはスジじゃない。

──それはそうかもしれませんね。

マーク:19年の写真を見てみろよ。どれもこれも必ず白黒で、NMEに出てるJOY DIVISIONもGANG OF FOURも、誰も笑ってない。みんな地面を見てる。そして、灰色のコートをガボッと着てる。ガハハハ!

──でも、やってることを楽しんでなかったわけじゃないでしょう?

マーク:楽しんでたさ。ただ、写真で笑顔を見せるのはパンクじゃなかった。眼光鋭く、反逆児らしく映るのがスジだった。

──楽しくないことも多い昨今ですが…。

マーク:あぁ、昨日もニュースを見ていて暗澹たる気持ちになった。だが、インタビューを受ける時、俺の公的な顔としては、そこに希望を感じてもらうことが大事だと思っているんだ。そう感じさせてくれる人も必要だよ。世の中、嘆いている連中ばっかりだ。正直、俺だって誰とも変わらないぐらい嘆いちゃいるが、希望には力がある(hope is a power)と思うからね。希望にはエネルギーもある。わかる?

──もちろん。その希望を世に広めるツアーの予定はありますか。

マーク:あるよ。こっちでROUGH TRADEの40周年ってのが大きなアートセンターで開かれるんだが、そこに色んな人が集まって特別なコラボレーションをやるっていうのが10月の予定。俺たちはそこで、素晴らしいアメリカの新人バンド PROTOMARTYREと一緒にやることになっている。CABARET VOLTAIREも来るし、色んな人がコラボレーションするスペシャル・イベントだ。その1週間後には、俺たちのこのアルバムをライブでどうやるかの検討を始める。そのさらに11月からはヨーロッパ・ツアーが始まるからな。その他各国は手配中。

──日本は?

マーク:当然だ。俺を日本から遠ざけておこうったって、それは無理な相談だぜ。今度日本に行ったら俺にテレビ番組を持たせてやるって約束してもらってるしな。誰かに言われたんだよ、番組を持たせてやるって。

──それは面白いでしょうけれど、翻訳が大変でしょうね。

マーク:『シンプソンズ』でも参考にしてもらうしかないな。

──あるいは、イギリス俗語の講座とか。

マーク:英語ですらないからな。ブリストル語だ。「Lean Bristolian(ブリストル語を学ぼう)」、しかも訛りの超キツイやつを(笑) ガハハハ!

『ハネムーン・オン・マーズ』

2016.10.28世界同時発売
\2,600+税 / VICP-65423
1. Instant Halo / インスタント・ヘイロー
2. City Of Eyes / シティ・オブ・アイズ
3. Michael 13 / マイケル13
4. War Inc. / ウォー・インク
5. Pure Ones / ピュア・ワンズ
6. Little Town / リトル・タウン
7. Days Like These / デイズ・ライク・ジーズ
8. Zipperface / ジッパーフェイス (※1stシングル)
9. Heaven? / ヘヴン?
10. Burn Your Flag / バーン・ユア・フラッグ
11. Stor Mo Chroi / ストール・モア・クリー


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