【インタビュー】タイガース・オブ・パンタン、自信みなぎるセルフタイトル作品登場
NWOBHMサウンドを誇るバンドとして、タイガース・オブ・パンタンが自信に満ちたメロディック・ハード・ロック・アルバムを作り出した。4年振りの最新スタジオ・アルバムにて、セルフタイトルを冠した『タイガース・オブ・パンタン』だ。
◆タイガース・オブ・パンタン画像
1978年、ジェス・コックス(Vo)、ロブ・ウィアー(G)、リチャード・ロウズ(B)、ブライアン・ディック(Dr)によって結成されたタイガース・オブ・パンタンは、イギリス出身のバンドとしてNWOBHMシーンの注目株となり、後にシン・リジーやホワイトスネイクへ加入することになる若獅子ことジョン・サイクスを輩出したバンドとして知られている。
ニート・レコードからシングルをリリースした後、MCAからデビュー作『Wild Cat』(1980)をリリースし、サクソンやスコーピオンズのサポートを経験した。その後、STREETFIGHTERで活動していたジョン・サイクスが加入、シンガーにジョン・デヴァレスを起用した彼らは2nd『Spellbound』(1981)、3rd『Crazy Nights』(1982)を発表した。直後に、サイクスはバンドを脱退しシン・リジーへ加入したが、新ギタリストとしてフレッド・パーサーを迎えたバンドは4th『The Cage』(1982)を発表し、好セールスを記録、日本公演も実現することとなった。
順調かと思われたタイガース・オブ・パンタンだったが、USツアー・サポートや楽曲の問題でレーベルと対立してしまい、最終的にバンドは解散の道を選択する。
ジョン・デヴァリルを中心としたバンドは1985年に再結成し、アルバムを2枚リリースするも再度バンドは解散。一方オリジナルのロブ・ウィアーとジェス・コックスはTYGER-TYGERを結成するも話題になることなく消滅する。
1998年、バンド結成20周年を祝してロブ・ウィアー、ジェス・コックスらによってバンドが再び結成される。<Wacken Open Air>出演も果たしたバンドはファンからも好意的に受け入れられ、その模様を収録した『Live At Wacken』(2001)がリリースされた。オリジナル・メンバーはロブのみとなったバンドだが、2001年にアルバム『Mystical』を発表し、活動を続行し、新たなシンガー、リッチー・ウィックス(ANGEL WITCH)を迎えて『Noises In The Cathouse』(2004)を発表。後に現シンガーであるジャコポ・メイレを従えて、5曲入EP「Back And Beyond」(2007)をリリース、翌年にはアルバム『Animal Instinct』を発表し、健在振りをアピール。2012年には『Ambush』を発表した。
ラインナップ変更を経て2015年からソングライトを行っていたバンドはMighty Musicと新たに契約を結び、心機一転、バンド名をアルバム・タイトルに据えたニュー・アルバムを完成させた。そこには、彼らの今を体感することのできる原点回帰型メロディック・ハード・ロックを凝縮し、シーンへと挑む勝負作が息づいている。クリエイティヴィティーに富んだ最新ラインナップで将来を見据え、New Wave Of British Heavy Metalのプライドがバンドをさらに突き動かすかたちだ。
アルバムは、グレン・ヒューズの最新作にギタリスト/プロデューサーとして参加しているソレン・アンダーセンとバンドとの共同プロデュースだ。マスタリングにはハーレム・スキャーレムのハリー・ヘスが担当している。8月に先行ファースト・シングル「Only The Brave」をリリース。カヴァー曲としてHEARTも取り上げたTHE KIKI DEE BANDの「I Got The Music In Me」(「歌は恋人」)を収録している。
──4年振りのニュー・アルバムですね。今のお気持ちは?
ロブ・ウィアー:ありがとう、レコーディング全てが旅路だった感覚だね。どこへ向かうべきか地図を見ることもあったし、心のままに進んだところもあった。リハーサルも入念に行ったけど、時間が経つと違うアイディアも湧いてくる。そういう時は感じたままにプレイしていったんだ。このアルバムは、TYGERSの歴史の中でもベストと呼べるに相応しいものに仕上がった。それはまさにモンスターだよ!1曲目を聴いてもらえればそれが理解できると思うよ。
──このアルバムのセールス・ポイントはどういうところになりますか?
ロブ・ウィアー:そうだな…まずはオレたちらしいアートワークに目が行くと思う。ロベルト・トーデリコがいい仕事をしてくれた。まさにTYGERSというジャケットだね。サウンド面ではソレン・アンダーセンが素晴しい手腕を発揮してくれた。納得の行くサウンドに仕上がっている。マスタリングはハーレム・スキャーレムのハリー・ヘスが担当した。CDはもちろん限定ピクチャー・ディスクやアナログもリリースするよ(註:海外のみ)。曲はもちろんいいから絶対に聴いて欲しいね。まさにこれぞTYGERSという曲のオンパレードさ。キミたちも聴いた事のあるカヴァー曲を1曲取り上げているよ。
──アルバム・タイトルはなぜセルフ・タイトルにしたのですか?
ロブ・ウィアー:TYGERSの新しい歴史、新しいステージが始まるからさ。それに相応しい作品に仕上がったし、オレたちはまだまだ現役でこれからもシーンで活動を続行していく。そういった意志の表れでもあるんだ。Tygers Of Pan Tangという名前は、マイケル・ムアコックが70年代初頭に書いた小説「Strombringer」からインスパイアされたんだ。
──あなたが影響を受けたアーティストについて教えて下さい。
ロブ・ウィアー:エルヴィス・プレスリー、クリフ・リチャード、ザ・ビートルズや1960年代のものさ。音楽好きの姉の影響もかなりあるよ。彼女のベッドルームからいつも刺激的な音楽が聴こえてきた。音楽に興味を持ったオレはジミ・ヘンドリックス、ブラック・サバス、ユーライア・ヒープ、ステイタス・クォー、ラッシュ、テッド・ニュージェントをはじめとするロックにどっぷり(笑)。AC/DC『Let There Be Rock』、ジューダス・プリースト『British Steel』、ディープ・パープル『Stormbringer』、テッド・ニュージェント『S/T』、シン・リジー『Jailbreak』がオレにとって特に重要なアルバムだね。
──現在のメンバーは?
ロブ・ウィアー:クレイグ・エリスは2000年からTYGERSを代表するパワフルなドラマーだ。彼は曲も作るし、メロディック、AORな感性の持ち主だよ。ジャコポ・メイレはイタリア人シンガー。もう12年も一緒に活動している。彼はバンドの中で一番インテリジェントな人物で、レッド・ツェッペリン命な男なんだ。ベースのガヴはアレンジ能力が高い。バンドへ加入して5年だね。彼はラムシュタインの大ファンだ。ミッキー・クリスタルはまだバンドへ加入して日が浅いけど、ギターは上手いしルックスもいいから評価が高い。彼はロックのみならずミュージカルやジャズ、カントリーと幅広い嗜好を持つ優れたミュージシャンなんだ。彼のギター・ヒーローはスティーヴィー・レイ・ヴォーン。
──TYGERSは『The Cage』を引っ提げて1982年に来日していますが、印象的だったことや思い出はありますか?
ロブ・ウィアー:日本はファンタスティックな国だったよ。東京で3回、大阪と名古屋で1回ずつ計5回の公演を行った。聴衆が凄くて400~500人のホールがソールド・アウトだった。当時大阪ではスコーピオンズのライヴと日程が重なっていたけど、TYGERSがソールド・アウトでスコーピオンズはそうではなかったと記憶している。日本の都市はどこへ行ってもとてもクリーンだったし、人々がとてもフレンドリーだったね。食べ物も最高に美味しかった。
──当時、ジョン・サイクスはなぜバンドを脱退したのですか?
ロブ・ウィアー:ランディ・ローズが不慮の事故で亡くなった後、ギタリストのポジションが空白になっていたオジー・オズボーンのバンドへ加入するためだと思うよ。彼から直接聞いたことはないけど、そう考えていたと思う。ジョン・スローマンと新しいバンドを結成するかもしれないとも聞いたことがある。いずれにせよオジーのバンドへ加入することができたら、彼の新しいキャリアには最高のポジションだよね。でも、その座はジェイク・E・リーに決まった。でもジョンは、TYGERSへは二度と戻ることはできないと感じていたんだと思う。バンドやマネージメントではなくMCAへ連絡していたからね。MCAはジョンにソロ・レコード契約のオファーを出していたんだ。そしてジョンは、シングル「Please Don't Leave Me」をリリースするために、フィル・ライノットへ参加して欲しいと頼んだ。これがキッカケとなって、彼は沈みかけていたシン・リジーへ参加することになるという流れさ。
──今でもジョン・サイクスやジョン・デヴァリルとは連絡を取っていますか?
ロブ・ウィアー:デヴァリルはイギリスに住んでいるから、よく話はするよ。といっても年に3~4回くらいだけど。今でもいい関係だよ。サイクスとは約1年前に話した。彼はアメリカに住んでいるけど、最近はあまり世の中や社会と関わっていない様子だった。元気と言える声ではなかった印象がある。彼は才能あるミュージシャンだから一日も早くシーンに戻ってきて欲しいよ。ファンもそれを望んでいると思う。
──今振り返ってみて、1980年代のタイガース・オブ・パンタンの存在をどう感じますか?
ロブ・ウィアー:ここまで音楽活動を続けてくることができて、とてもラッキーだと思う。TYGERSはメタル・シーンで大きく注目されたし、チャート・ランクインも果たしたバンドだった。テレビにもたくさん出演したしね。当時のシーンはまさにファンタスティックだった。ユーライア・ヒープ、UFO、ナザレス、AC/DCなんかと一緒にツアーしたし、夜は毎日パーティー(笑)。ニューキャッスル出身のレイヴンやFISTとも仲が良かった。今は別々だけど、才能あるミュージシャンたちと一緒に活動することができたことを光栄に思っている。レーベルとのトラブルがあったり、同じメンバーで長く活動を共にすることはできなかったけど、ステージやスタジオで大きな夢を共有することができたし、普通では経験することができないようなことも経験できた。今でも誇りに思うし大切な宝物だよ。残したアルバムが全てを物語っている。現在は全く違うメンバーだけど、今でも元気に活動しているし新しいアルバムもリリースする。ツアーも続けていくし、タイガース・オブ・パンタンの名に恥じぬよう今を突き進んでいくよ。
──TYGERSをここまで続けることができた秘訣というのは何でしょうか。
ロブ・ウィアー:曲を書き続け、レコーディングを行い、聴衆が求めているロックをプレイし続けること。そしていつも言うんだ「You Rock、We Roar!」ってね。自分の心にいつも正直に、嘘偽り無く真っ直ぐに生きていくことだと思うよ。
──では、日本のファンへもメッセージを。
ロブ・ウィアー:ファンタスティックな日本のみんな、ここまでインタビューを読んでくれてありがとう。来年の<LOUD PARK>にはTYGERSが立候補するから応援をよろしく頼むぜ。そろそろ新生TYGERSが日本へ行くべきタイミングだと思わないかい?そして新しいアルバムをリリースするから聴いてくれよ。絶対楽しめるはずさ。MONSTER級の仕上がりだからね。
タイガース・オブ・パンタン『タイガース・オブ・パンタン』
BKMY-1035 2,222円(税抜価格)+税
※輸入盤日本仕様
1.Only The Brave
2.Dust
3.Glad Rags
4.Never Give In
5.The Reason Why
6.Do It Again
7.I Got The Music In Me
8.Praying For A Miracle
9.Blood Red Sky
10.Angel In Disguise
11.The Devil You Know
Produced by Tygers Of Pan Tang & Soren Andersen [Glenn Hughes、Mike Tramp]
Mastering by Harry Hess [Harem Scarem]
Line-up
・Robb Weir(G)
・Jacopo Meille(Vo)
・Micky Crystal(G)
・Gav Gray(B)
・Craig Ellis(Dr)