【インタビュー】アンディ・ティモンズ、人の心を震わせる奇跡のサウンド
アンディ・ティモンズがニューアルバム『Theme From A Perfect World 』を9月30日にリリースした。このアルバムには、音楽が持つ不思議なパワーがたくさん含まれている。
◆アンディ・ティモンズ画像
なかでも『Theme From A Perfect World 』に収録されている「The Next Voice You Hear」は、障害を持つ日本のアンディーファンが危篤の時、彼の為にアンディが急いで書き下ろした作品で、その曲を聴かせたことで危篤状態から脱却、奇跡的に生還したという奇跡の実話ストーリーがある。
アンディの大ファンであるタケシは、ポンベ病という障害を持ち普段から車椅子に乗り人工呼吸を付け話すこともご飯を口から食べることもできない生活をしているギタリストだ。彼と知りあいだったインタビュアーSayaka Shiomiは、2014年の秋にデンジャー・デンジャーの来日公演にタケシをと同行し、タケシはアンディと初対面を果たした。翌日にはアンディから「タケシをライブに連れて来てくれてありがとう」というお礼のメールが届いたという。
いつもタケシを気にして「彼に何かあったら直に連絡して欲しい」と言っていたアンディだが、2015年の2月、そんなタケシの病状が急変した。病院に運ばれたものの、彼は危篤状態になり医者からはサジが投げられ、家族は既に葬儀の準備に入っていたという。「最期にタケシに何かメッセージをくれないか?」との願いにアンディーは、半日後に「彼の為に曲を書いたから、まだミックスは荒いけど、すぐにこれを聴かせてあげて」と「The Next Voice You Hear」を送ってきたのだ。
曲を受け取ったSayaka Shiomiは、直ぐさまタケシに付き添っていた友人経由でタケシに曲を聴かせたという。そこで奇跡が起こったのだ。「アンディがお前の為に曲を書いてくれたぞ」と伝えると、それまで意識のない彼が目を見開き、ビックリした様な表情と共に嬉しそうな顔をして意識を戻したという。間もなくこの世からタケシは旅立つだろうと皆が思っていたところに、アンディの曲がタケシを現世に呼び戻したわけだ。それは医者も「信じられない。科学的に証明することができない」と奇跡を喜んだという。
音楽を通じて人にパワーを捧げるアンディ・ティモンズの音楽は、『Theme From A Perfect World 』にぎっしりと詰め込まれている。
──ついに『Theme From A Perfect World 』が完成しましたね。
アンディ:『Theme From A Perfect World 』はコンセプトアルバムとは言いがたいけれど、レコーディングプロセスにはひとつの信条を掲げていました。それは「音楽をリスナーの心と魂に真っすぐ届けるため、純粋なままできる様、オーガニックでヴィンテージなレコードを作る」ということです。ATB(アンディ・ティモンズ・バンド)のベースプレイヤーで、アルバム共同プロデューサー兼レコーディングエンジニアのMike Daaneも、私も1960年代や1970年代の音楽ファンで、今回のアルバムはそこから受けた影響を反映させたいと望んでいたから。僕は作曲するにあたって、トッド・ラングレン/ユートピア、ザ・フー、ラズベリーズ、ザ・ビートルズなどの影響も受けたけど、彼らはサウンドに加えて歌も凄い。美しいインストルメンタルミュージックには、深い感情が描かれており、言葉の壁を超える音の表現力が感じられるんだ。このアルバム制作は、実は7年以上も前に遡るんだけど、この作品に誇りを持っているし、自分自身の音楽に戻ってこれたことが凄くハッピーだよ。
──このアルバムに込められたメッセージというのは?
アンディ:曲によって異なるメッセージがあると思うけど、それは、皆が最初に聴いたときに湧いてきたり伝わってくる生の感情だと思うよ。「That Day Came」「On Your Way Sweet Soul」「Welcome Home」あたりの曲には深い喪失感があるよね。逆に「Lift Us Up(Something Wicked This Way Comes)」と「Ascension」には、楽観主義のリアリズムがあると思う。
──喪失感というのは、どういう意味ですか?
アンディ:「That Day Came」は凄く悲しいストーリーで、私達の最愛の猫クッキーフェイスが亡くなった時の曲なんだ。息子アレックスが生まれる前から、妻のモニカと私は3匹の猫を飼っていたので、彼らも私達の子供同然だった。我々は、彼らが死んでしまう時、恐怖を感じることも時折ある。でも永遠には続かない。この曲はその時の深い深い喪失が表現されている。また「On Your way Sweet」は、私の友人シルヴィアが飼っていた猫Rubinaについて書いた曲なんだけど、Rubinaは彼女にとってソウルメイトの猫だったんだ。Rubinaが亡くなった時、シルヴィアはもの凄く悲しみ苦しんでいたので、彼女を元気付ける為に捧げたのがこの曲。「Welcome Home」は、深く説明するには時間が必要だけど、アルコール依存症と戦っていた私の弟ブライアンに書いた曲なんだ。私がこの曲を書いた翌年、彼は亡くなってしまった。
──希望の曲もありますよね。タケシの為に書いた曲「The Next Voice You Hear」について教えてください。
アンディ:タケシの悲しい状態について、君がメールしてくれた時のことを今でも鮮明に覚えているよ。実は君が「最後にタケシに何かメッセージをくれないか?」と言って来た時、すぐに曲を自分のオフィスで曲を書き始めていた。もの凄い速くデモをレコーディングしメールで君に送ったね。「The Next Voice You Hear」というタイトルは、実は幼少の頃TVで観た映画のタイトルと同じなんだ。かすかな記憶しかないんだけど、その映画は、神様が地球にやってきてラジオから皆に話をしたんだ。私はあのとき、タケシがこの世から旅立つとは思わなかった。タケシが「The Next Voice You Hear」を聴けたのは良かった。タケシが音楽を聴いた事がきっかけで目を覚ましたことを君から聞いたときは狂喜したよ。音楽が持つ力は非常に強力なんだ。それは人々を癒し助けることができると、私は信じているからね。
──タケシの命を救ったアンディの音楽は神のパワーが宿っていた。そのパワーはどうやって得たものなのでしょう。
▲左からアンディ、タケシ、sayaka
アンディ:そう言ってもらうのはとても光栄なことだけど、それについて話すのは非常に難しいこと。最も純粋な感情や意志…、私にできる全てを音楽に注いでそれを人々が共有する。そこに私がいなくてもつながっていけることを望むよ。
──タケシのために曲を作ろうと思い立った根源は、どこから生まれるものなのでしょう。
アンディ:私は、カレッジに通っていたころから皆に曲を書いてプレゼントしていたんだ。なぜって、友人や家族のためにプレゼントを買うような金銭的な余裕もなかったから(笑)。例えば「There Are Now Words」という曲は、音楽業界という困難な世界にいる私を支えてくれている家族に「ありがとう」という感謝の気持ちと愛を込めて送ったもの。「Olivia's Song」という子守唄は、生まれた時から特殊な疾患を持ち、2歳の誕生日まで生きることが難しい少女の為に書いた曲だけど、彼女はその曲を凄く気に入ってくれた。「September」という曲は、親友のGeorge FullerとMaylee Thomasが結婚した時にプレゼントした曲だよ。今回のニューアルバムに入っている「Sanctuary」は、GeorgeとMaylee が「Guitar Sanctuary」というミュージックショップをテキサス州マッキニーにオープンしたお祝いにプレゼントしたもの。…こんな感じで、他にもたくさんの曲を送ってきたんだ。未発表の曲もたくさんあるから、いつかそれをCDにしようかな。
──音楽のネットワークは奇跡だと感じています。
アンディ:音楽は奇跡を起こすことができるよ。だって、私が自分の人生でたくさん経験してきているもの。
──タケシの奇跡的な出来事のあと、何か変わりましたか?
アンディ:そうは思わないな。奇跡的を私が起こしたとも思わない、たぶん偶然の一致?なのかなぁ。分からないよ。私はこれからもミュージシャン・作曲家として向上し学び続ける必要があるからね。
──11月には来日公演がありますね。
アンディ:東京のコットンクラブで4日間開催します。一日に2回のショーを行うんですが、ワンセット目はニューアルバムの曲を中心に、ツーセット目はクラッシックATBの楽曲をプレイする予定です。今は、このショーを最高潮にするための最終段階に来ているよ。新曲をプレイするのが待ちきれないね。
──最後に日本のファンの皆さんにメッセージを。
アンディ:日本に戻る日が待ちきれないよ。今回でなんと日本に行くのは21回目だよ。今回のアルバムを皆が楽しんでくれたら嬉しいよ。ライブにもぜひ遊びに来てね。Love and Peace, Andy
取材・文:Sayaka Shiomi
ANDY TIMMONS BAND『Theme From A Perfect World 』
Timstone Records
1.Ascension(HEAR IT ABOVE!)
2.Winterland
3.Theme from a Perfect World
4.Sanctuary
5.The Next Voice You Hear
6.Lift Us Up(Something Wicked This Way Comes)
7.That Day Came
8.Firenze
9.Welcome Home
10.On Your Way Sweet Soul
<THE ANDY TIMMONS BAND 来日公演>
@コットンクラブ(東京)
[問]http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/andy-timmons-1st/ http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/andy-timmons-2nd/
◆アンディ・ティモンズ・オフィシャルサイト