【詳細レポート】VAMPS、「綺麗だね。ツアー・ファイナルに合ってる」
全国のZEPPを中心に連続公演を行なう“籠城”スタイルで全4都市20公演を敢行し、先日本編の幕を閉じたVAMPSのライヴハウス・ツアー<VAMPS LIVE 2016>、その追加公演として“-ACOUSTIC DAY-”が9月20日、千葉・舞浜アンフィシアターにて開催された。先ごろ公開した速報レポートに続き、新たな写真を加えて詳細レポートをお届けしたい。
◆VAMPS 画像
“-ACOUSTIC DAY-”とは2016年1月に公開収録されて話題を呼んだ<MTV Unplugged: VAMPS>のパワーアップ版アコースティック・ライヴのことだ。今ツアーでも名古屋、大阪で各2公演、札幌では1公演が行なわれ、各地で大きな反響を巻き起こしてきたライヴがついに関東で初披露される。折しも大型の台風16号が接近する悪天候ながら、当然のごとく客席は満員御礼。通常のスタンディング・スタイルとは異なり着席して楽しむのが“-ACOUSTIC DAY-”の醍醐味とあってか、会場のフォーマルな雰囲気とも相まり、開演前の場内にはどこか上品なハレの日の気配が漂っている。
開演時刻の少し前、まだ暗いステージにサポートメンバーの笹渕啓史(Dr)、堀向彦輝(Piano)、森田晃平(B&Cb)、ストリングス隊の納富彩歌と東山加奈子(Vn)、金孝珍(Vla)、今井香織(Vc)、コーラスのasamiとnana hatori、そしてYUKI(G)がスタンバイ。そうして19時06分きっかりにゆっくりと客電が落ちた。たおやかな弦の調べが響き渡る中、K.A.Zがまず姿を現わし、壇上の椅子に掛ける。ほどなくしてHYDEも登場、柔らかな喝采からグラデーションするように「FAITH」の流麗なアンサンブルが溢れ出した。HYDEとK.A.Zをぐるりと囲むようにメンバーが配されたステージはVAMPSの核をそのまま際立たせているようにも見える。核とはすなわち、このふたりによって生み出される音楽だ。激しいパフォーマンスにもオーディエンスの燃え盛るような熱狂にも依らず、剥き出しの音楽表現のみでその真価を問う。この“-ACOUSTIC DAY-”にはそうした覚悟も備わっているのではないかと、続く「JESUS CHRIST」の切々としながらも鬼気迫る分厚い音像に思った。
「嵐の中をようこそいらっしゃいました。みんなおめかしして、嵐は大丈夫だった? 今日はいつもと違って頭の上を人が転がることも髪を振り乱す人もいないので、安心してじっくり音楽を堪能していってください」──HYDE
軽い挨拶を挟みつつ、「まだ緊張感があるかもしれないけど、勇気のある人は歌ってみて」とHYDEが曲タイトルを告げるとチェロの音色が先陣を切り、「SIN IN JUSTICE」がスタート。コントラバスも加わった5重の弦が奏でる旋律が曲に宿る叙情性を一気に押し広げ、K.A.ZとYUKIによるアコースティック・ギターの乾いたリフがアクセントとなってヘヴィなサウンドの中に軽妙さをも醸し出す。緻密に構築された音に紛れてしまうことなく、朗々とした存在感を立ちのぼらせて、どこまでも強いHYDEの声。むしろアンサンブルに触発されてヴォーカリストとしてのポテンシャルがさらに底上げされているのだろう、なかでも目をみはったのは「DAMNED」だ。コントラバスの独奏から堰を切ったようにほとばしる不穏な重奏のうねりに乗って、張りのあるハイトーンから、がなるような歪んだ低音ヴォイスを響かせ、大きく飛距離を伸ばしてオーディエンスに襲いかかる。声域の幅がここにきてまた広がったのだろうか、自在にノドを操って放たれる歌はいつにも増して殺傷力が高く、不可侵の凄みすら感じてしまう。
鎮魂の祈りと凛とした意志がアコースティック・アレンジにより、いっそう生々しく胸に迫った「REPLAY」。エキゾチックでトランシーな「SAMSARA」から悠久をたたえた「MY FIRST LAST」ではステージの両サイドに設えられたミラー・ボールがレーザー光線を反射し、空間をグリーンの軌跡で満たした。重力を刹那忘れさせるその光景は宇宙空間をも彷彿とさせる。渾身のバラード「VAMPIRE'S LOVE」は息を呑むほどに美しく、これぞアコースティックの真骨頂と客席を唸らせた。
「そろそろリラックスしてもらって大丈夫、咳もしてください。我慢しなくていいですよ」──HYDE
そう言ってHYDE自ら咳払いをひとつ、これで場内の緊張も解きほぐれる。その後、自身のスマートフォンを客席に向けたHYDEだが、ピースでにっこり笑顔を作るオーディエンスにすげなく「自撮りなんで」と言い放って笑いを誘う場面も。また、この日も日本全国、香港、台湾にてライヴ・ビューイングが実施されていることに触れ、「謝謝(中国語で“ありがとう”の意)」と海の向こうのファンにも感謝を伝えた。
K.A.Zとのゆるふわなやり取りや、ひとり一人にコメントを添えたアットホームなメンバー紹介、最後に控えたギターのYUKIを飛ばして「以上のメンバーで……」と締める、今や“-ACOUSTIC DAY-”の恒例となったYUKIいじりで場をすっかり寛がせると「次からはちょっと景気よく、はっちゃけよう」と「ZERO」へ。オリジナルではシンセサイザーとバンド・サウンドのクールな融合がダンサブルな昂揚感を生み出しているこの曲だが、今回はもちろんすべての音が人力だ。贅沢に重ね合わされては間断なく放射されるオーガニックな音のシャワーに客席の熱がグングンと上昇する。ボサノヴァ・タッチのアレンジで奏でられたのは「DEVIL SIDE」と「ANGEL TRIP」。ライヴの定番曲ながらまったく違う表情、聴き心地になるから面白い。
「ホントやり直しのきかないレコーディングをやってるような気持ち。ちょっとフィギュア・スケートと似てるかも。あそこまで僕はストイックじゃないけど、間違わずに最後まで美しく歌えるのかとかね。でも、こうやって歌に集中するのも悪くないなって楽しんでます。(アコースティックは)これまであんまりやったことがなかったけど、やっぱり今年の始めに<MTV Unplugged>をやったことが大きかったなって」──HYDE
「DEVIL SIDE」に入る前のMCでHYDEはそう語り、少し長めに話を続けた。年末の忙しい時期にオファーがきたため一旦は断ったものの、一応は考えてみようかとアイデアを練り始めたこと、そうしてアンプラグド用のアレンジをしたところ新しく生まれ変わった曲がたくさんあり、面白い試みだなと気がついたこと。そこで得た確かな手応えが今ツアーの“-ACOUSTIC DAY-”へと踏み切らせた。籠城スタイルのみならず、小さなライヴハウスやアリーナクラスの会場でのワンマン、<BEAST PARTY>といった野外イベントに<HALLOWEEN PARTY>、対バンイベントに対バンツアーなど国内外を問わず、さまざまなアプローチでライヴを行なってきたVAMPSが、またひとつアコースティックという新たな武器を手に入れたのだ。どれだけキャリアを積もうとも貪欲に自らの音楽の可能性を求め続ける姿勢は揺るがない。だからこそ今なお彼らは先頭を走り続けているのだと思い知らされる。
このMCにはまだ少し続きがあって、<MTV Unplugged: VAMPS>では抽選での観覧だったため、ライヴ慣れしていない観客も多かったのか、途轍もない緊張感が張りつめていたとHYDEは振り返る。「物音ひとつ立てられない緊張感の中、やってきたんです「DEVIL SIDE」が。ご存知だと思いますけど、この曲はサビの最後にみんなで“♪DEVIL SIDE”って歌うんですね。でも、その日は曲が始まっても誰もノらない。その日はちょっとこの曲を選んだことを呪いました」と漫談調で当時の状況を面白おかしく、そのうち自身のツボにも入ってしまい笑い泣きしながら語って聞かせるHYDE。「今日はそうじゃないことを祈ります」と始まった「DEVIL SIDE」では彼の期待を裏切らない大合唱が沸き起こる。「ANGEL TRIP」では、この日のために作られたというグッズのハンケチがいつものタオル代わりに上品に回り、客席の一体感を新たなものにした。
「はっちゃけてたね〜! みんな、ロックが好きなんだね。今日はいつものサポートメンバーも観に来てくれてます。彼らともツアーの最後をともにできてうれしいです」──HYDE
終盤戦も佳境を迎え、しみじみと噛み締めるようにHYDEが言う。「K.A.Z君、楽しんでますか? 綺麗でしょ、これ、K.A.Z君のために」とスタッフがステージ前方のセットに次々と灯していくキャンドルの炎を指して冗談めかすHYDE。「ちょっと誕生日には早いんですけど(笑)、綺麗だね。ツアー・ファイナルに合ってる」とK.A.Zも応える。「最後はK.A.Z君が消してくれないと」「ひと息で?」「……やめとこ、死んじゃう」とどこまでもほのぼのした会話を繰り広げるふたり。全員で演奏するのは次の曲が最後とあって名残惜しそうなサポート・メンバーに、「またやりましょう。みなさんのおかげで気持ちよく歌えました、ありがとう」と感謝を告げることも忘れない。
総勢12名によるアンサンブルのラストを飾ったのは「SWEET DREAMS」だった。情感豊かなサウンドに抱かれるようにして歌声が会場の隅々にまで届き、聴き手の心の奥深くを温かなもので満たしていく。いつまでも味わっていたい極上のひととき、まさしく“-ACOUSTIC DAY-”の集大成だ。曲を終えたメンバーを盛大な拍手が送りだす。
オーラスはHYDEとK.A.Z、ふたりきりの「EVANESCENT」。意外なことに<MTV Unplugged: VAMPS>が行なわれるまで、人前での演奏をこのふたりだけでしたことはなかったという。今後もそうあることではないかもしれない。観客の食い入るような視線に見守られながら、K.A.Zの指先が優しく弦をはじく。こぼれだす温かなメロディに一語一句を丁寧に、そして艶やかに歌い上げるHYDE。どんどんエモーショナルになるその声を、静かに、けれど力強くギターが支えて感傷を増幅する。寄せては返す波のように絶妙な引力で結ばれたふたりの音楽、VAMPSの原点が目の前にあった。ギターと歌だけ、それがこれほどにもダイナミックに心揺さぶるものだとは。
「ありがとうございました。また帰ってくるので、首洗って待ってろよ」──HYDE
キメ台詞を口にしたあと、鳴り止まぬスタンディング・オベーションを浴びながらがっちりと握手を交わすHYDEとK.A.Z。ステージを去るその後ろ姿の向こうに、この先に続く彼らの太くてまっすぐな道行きを見た気がした。
10月にはVAMPSが主宰する毎年恒例のイベント<HALLOWEEN PARTY 2016>も控えている。神戸・ワールド記念ホール(10月22、23日)と千葉・幕張メッセ国際展示場ホール(10月28、29、30日)の2大会場にて国内最大級の規模で今年も開催されるこのハロウィン・ライヴ・イベントを見逃す手はない。
取材・文◎本間夕子
撮影◎田中和子
■<VAMPS LIVE 2016 追加公演 -ACOUSTIC DAY->
2016年9月20日@舞浜アンフィシアターSET LIST
2.JESUS CHRIST
3.SIN IN JUSTICE
4.THE PAST
5.DAMNED
6.REPLAY
7.SAMSARA
8.MY FIRST LAST
9.VAMPIRE'S LOVE
10.ZERO
11.LOVE ADDICT
12.DEVIL SIDE
13.ANGEL TRIP
14.THE JOLLY ROGER
15.MEMORIES
16.SWEET DREAMS
* * *
17.EVANESCENT
■<HALLOWEEN PARTY 2016>
2016年10月23日(日) 神戸ワールド記念ホール
開場 16:00 / 開演 17:00
2016年10月28日(金) 幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
2016年10月29日(土) 幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
2016年10月30日(日) 幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
開場 15:30 / 開演 17:00
●出演アーティスト●
▼10月22日(土) 神戸ワールド記念ホール
VAMPS / チームしゃちほこ / BREAKERZ / MONGOL800 / HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA
【HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA】
明希(シド) / VAMPS / 淳士(SIAM SHADE, BULL ZEICHEN 88) / 逹瑯(MUCC) / チームしゃちほこ / BREAKERZ / ROLLY / 分島花音
▼10月23日(日) 神戸ワールド記念ホール
VAMPS / DAIGO / でんぱ組.inc / HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA and more
【HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA】
明希(シド) / VAMPS / 喜矢武豊(ゴールデンボンバー) / 淳士(SIAM SHADE, BULL ZEICHEN 88) / Shinya(DIR EN GREY) / DAIGO / 逹瑯(MUCC) / でんぱ組.inc / ROLLY / 分島花音
▼10月28日(金) 幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
VAMPS / ゴールデンボンバー / でんぱ組.inc / BREAKERZ / Tommy(スペシャルパフォーマー) / HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA and more
【HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA】
青木隆治 / 明希(シド) / VAMPS / ゴールデンボンバー / 淳士(SIAM SHADE, BULL ZEICHEN 88) / 逹瑯(MUCC) / でんぱ組.inc / Tommy / BREAKERZ / ROLLY / 分島花音
▼10月29日(土) 幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
VAMPS / 氣志團 / DAIGO / RADIO FISH / Silent Siren(スペシャルパフォーマー) / HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA and more
【HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA】
明希(シド) / VAMPS / 氣志團 / Silent Siren / 淳士(SIAM SHADE, BULL ZEICHEN 88) / DAIGO / 逹瑯(MUCC) / YUKI(Rayflower, DUSTAR-3) / RADIO FISH / 分島花音
▼10月30日(日) 幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
VAMPS / BREAKERZ / ももいろクローバーZ / 和楽器バンド / AKi(スペシャルパフォーマー) / HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA and more
【HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA】
AKi / VAMPS / 淳士(SIAM SHADE, BULL ZEICHEN 88) / 逹瑯(MUCC) / 柩(ナイトメア) / BREAKERZ / YUKI(Rayflower, DUSTAR-3) / 和楽器バンド / 分島花音
※スペシャルバンド「HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA」は公演日によって参加アーティストが変わります。今後、参加アーティストに追加がある場合は随時発表いたします。
MC:やまだひさし
▼チケット
前売り ¥9,300(税込)
●神戸公演:スタンド座席指定 / アリーナスタンディングブロック指定
●幕張公演:指定席 / スタンディングブロック指定
一般発売:2016年10月8日(土) AM10:00
(問)神戸公演:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)
(問)幕張公演:ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00~19:00)
【ご注意】
※当公演はハロウィン・ライヴです。仮装してご参加ください。
仮装していただけないと…亡霊たちの機嫌が悪くなってしまいますのでご注意ください!
※ヲタ芸可
※3歳未満入場不可、3歳以上要チケット
※本イベントでは、ライヴ会場内での録音・録画・写真撮影・動画撮影等の行為は固く禁止いたします。
■<VAMPS North American Tour 2016 With Special guest Citizen Zero>
11/07 (Mon) Los Angeles, CA El Rey Theater El Rey Theatre Tickets
11/10 (Thu) Mexico City, Mexico Teatro Metropolitan On-sale 9/22: Teatro Metropolitan
11/13 (Sun) New York, NY Irving Plaza Irving Plaza Tickets
11/14 (Mon) Toronto, ON Lee's Palace Lee's Palace Tickets
11/15 (Tue) Chicago, IL Bottom Lounge On-sale 9/22: Bottom Lounge
※チケット発売はメキシコ、シカゴは日本時間9月23日以降。それ以外は9月20日02時AM から購入可能
■「INSIDE OF ME feat. Chris Motionless of Motionless In White」
【配信】
▼iTunes http://po.st/it_vamps_inside
▼レコチョク http://po.st/reco_vamps_inside
◆BARKS<HALLOWEEN PARTY 2016>特集ページ
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