【インタビュー】奥華子、切ない恋愛ソングの達人が語る“男性目線”と新境地

■曲を作り始めた初期に書いた曲なんですよ。全曲ライブでこの曲を歌ったらファンの人も知らなくて。でも反響があったんです。

──カップリングの「小さなアリ」は全曲ライブで演奏されたものを収録したんですね。これこそ、自然を見て書いた曲じゃないですか。

奥：そうですよね。曲を作り始めた初期に書いた曲なんですよ。それこそ十代の頃に。出来た当時はライブでも歌ってたんですけど、途中から恥ずかしくてずっと歌ってなかったんです。この間の全曲ライブでシークレットソングって言って、未発表曲を歌ったんですけど、この曲を歌ったらファンの人も知らなくて。でも反響があったんです。アンケートにもCD化してほしいとか、音源を作ってくださいという意見があったので、全曲ライブの音源をそのまま入れようかなと。

──すごくメッセージ性がありますよね。

奥：作った当時にしか書けなかったと思う。まず、今なら「小さなアリ」っていうタイトルをつけないと思うんです(笑）。だからCDに入れるには恥ずかしさもあるんですけど、全曲ライブの音源だから入れられるというか。ここで音源化する必然性もあるし。

──確かに。昔作った曲なのに、不思議と今の世の中に問いたくなるような内容ですよね。すごく合っている。「地震や雷よりも人の中で生きていくことの方が怖い」とか。

奥：当時は意識してなかったけど、今言うと、この言葉は重く感じますよね。

──時代に合っているからこそ、音源化を望む声も大きかったんでしょうね。「小さなアリ」と最後の「ありのまま」は掛けているの？

奥：そこは自分でも笑っちゃうんですよ(笑）。笑っちゃいけないんですけど、私、シャレ言ってるのか！？って。作った当時は掛けてたのかもしれないけど、今となってはもう覚えていないですね。ただ、これを作った当時はまだ実家にいたので、ピアノがリビングにあったんですよ。隣に家族がいてくつろいでいる中で歌ったり、曲を作ってたんですね。「♪夢って　夢って　なんだかわからない～」「人間って　人間って　なんだかわからない」って、この曲を歌うたびに、「お前、なんにもわからないんだな」ってすごい突っ込まれていたのは覚えてる(笑）。

──わははは(笑）。

奥：特に兄にはツッコまれてましたね。「もっと明るい曲を作れよ！」って。昔作った曲を歌うと、そういうことを思い出しますね。相当突っ込まれてたな。

──(笑）何か悩みでもあるのかなとは思いますね。

奥：これを作った当時は自信満々の時だったので、悩みはなかったし、暗いとも思ってないんですけどね(笑）。でも、「こう書いたらどう思われるんだろう」っていう気持ちがない時に書いている曲だから、今と違うんですよ。だから今では書かない言葉ばかりなんでしょうね。

──比喩としてアリを使って、人間界に対しての皮肉も歌ってるんですよね。深い世界が描かれてますよ。若い時の視点が今の時代に合っているというのも面白いですね。

奥：小さい頃、アリを見ているのが好きで、その経験がここに繋がってるんですけどね。今でもこの曲に描かれているようなことは思うんですよ。昔はこういうことをより考えてましたね。何のために生きるんだろうとか。

──彩りのあるユニークなシングルになりましたね。最近はアジアでもライブを行なっていて。

奥：そうなんです。今年からいきなり。もう3回もアジアでライブをやったんですよ。

──台湾、香港、上海ですよね。しかも上海は単独ライブということですが。

奥：そうなんです。海外でライブをするなんて、考えたこともなかったんですよ。でもそういう話がきて。最初はアニメのフェスで台湾に行ったら、そこで見た方が香港でのライブに誘ってくれて。その後、上海っていう感じですね。もし必要としてくれるなら、今後も行きたいですね。

──ノリは違いますか？

奥：違いますね。日本だと集中してじっくり聞いてくれるイメージですが、全面に感情を出す感じです。シングル以外の曲も全部歌ってくれるので、「知ってるんだ！」って、びっくりしました。MCも日本語で喋っているのにわかってくれて。

──10周年を経てまだ初体験がたくさんあって、世界が広がっていきそうですね。

奥：やってないことってまだまだたくさんあるんですね。今後も、自分がやれることはどんどんやっていきたいですね。秋は学祭もありますし、ライブが多いです。またファンのみなさんと会えるのも楽しみです。頑張ります。

取材・文◎大橋美貴子




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