【ライブレポート】the pillows、ツアー完結。「新曲作ったらまた一緒に遊んでくれよ」
結成27年目のthe pillowsが20thアルバム『STROLL AND ROLL』を携えた全国ツアーのファイナルを7月22日(金)に東京・Zepp Tokyoで開催した。
◆the pillows ライブ画像
客電が落ち、開演を待ち望んでいたBUSTERS(=the pillowsファンの名称)から悲鳴にも近い歓声が上がる。新作のオープニング曲「デブリ」で幕を開けたステージは、5月から27公演を積み重ねてきたツアーの集大成だけあって、圧巻のクオリティでBUSTERSの期待と情熱を包み込む。長いキャリアの中でストイックにあらゆる障害も乗り越え自分たちの目標に到達してきた彼らだが、2012年に“バンドのメンテナンス”を理由に活動を休止。今回のアルバムは復帰後2作目であり、“STROLL=散歩”と表現した通り、目指した頂上に辿り着いたあとのリラックスした気分が反映された作品だった。ツアーも、純粋に演奏を楽しむメンバーからこぼれ出る笑顔が印象的。「久しぶりじゃないか。今夜はいよいよクライマックスだ!最後の最後まで仲良くしようぜ」と煽る山中さわお(vo&g)。ぐいぐいと場内のボルテージを上げていく。
場内から「さわおさ〜ん」「Peeちゃ〜ん(=真鍋吉明(g))」「シンちゃ〜ん=(佐藤シンイチロウ(ds))」とさかんに声がかかると、山中が突然、「お客さ〜んっ」と呼びかけ場内大爆笑。普段、“俺様キャラ”な印象の山中のご機嫌もすこぶる良いみたいだ。
新作は、5人のベーシスト参加でも話題を集めた。初期リーダー上田健司、第2期サポートを務めた鹿島達也、山中とはTHE PREDATORSのメンバー同士であるJIRO(GLAY)、宮川トモユキ(髭)と、現在のツアー・サポートメンバー、有江嘉典(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)。このツアーで有江は、個性豊かなゲスト・プレイヤーたちがアルバムに収めたフレーズも、これまでの曲も、抜群のセンスとテクニックで吸収し、一貫性のあるベース・プレイでツアー全般を支えた。
中盤で山中が「俺たちの青春時代にはインターネットはなかった。音楽を、ロックを教えてくれたのはラジオだ。ラジオに感謝を込めて」と前置きして「レディオテレグラフィー」を披露。「ここからロマンティックなラブソングを3曲も歌っちゃうよ」と新旧ラブソングで甘酸っぱい感情を呼び起こしてくれた。続いて新作から演奏された3曲がこのツアーの中でも秀逸の存在感を放った。「エリオットの悲劇」「ブラゴダルノスト」「カッコーの巣の下で」のセンチメンタルな旋律に繊細な言葉を織り交ぜた歌世界は、脳内に実に切ない余韻を残した。
イントロが流れ「この曲知ってる? 14年ぶりにこの曲を」と「Come on ghost」を、山中がめずらしくハンドマイクで歌う。新作から「I RIOT」もハンドマイクで踊りながら、ステージを自在に動きまわりながら、前方のBUSTERSとタッチを交わしながら歌うさまが新鮮だった。
メンバー紹介では、有江が「くれぐれも会場内でポケモンGOとかしないでライブに集中してみんなで楽しみましょう」と、初めてロング・ツアーに参加したとは思えない“馴染み感”を示した。佐藤は「ツアーの合間を縫って個人的に桜島とか北海道に旅行に行ってきた」と、兼務するTheピーズのツアーに絡めて笑いを誘う。真鍋は「ロックバンドはアルバム作ってツアーやるのはワンセットなので、今日はバンドにとって大晦日。そんな日を見届けにきてくれてありがとう」と語り、それぞれこのツアーの充実感を伝えていた。BUSTERSとの絆に欠かせない「LITTLE BUSTERS」、アルバム表題曲「STROLL AND ROLL」と怒涛のナンバーで一気に終盤を盛り上げて本編が終了。アンコールに応えて山中は「今回アルバムを作詞作曲をしてるときに俺はものすごく調子がよくて、会場限定のシングルも作った。その中に入っている「エターナル トレジャー」は、前回のツアーで初めて宮崎に行って、長い間活動してるのにまだ行ったことがない街があって、初めて来たぞというテンションで着いてすぐホテルで曲を作り、翌日ステージで『今日できたよ』って演奏したんだ」とエピソードを交えて演奏してくれた。去り際に「今も俺調子よくて、もう新曲8曲も作っちゃったんだよ」と告白して場内から大歓声。「27年もやってる長いバンドだから、一応代表曲なんかもあったりして、黄金期もあると自分では思っていて。今日は「ハイブリッド レインボウ」とか「Funny Bunny」とか演んなくてごめんね。また君たちが『あの頃のあの曲聴きたいな』って思ってくれるのも演るからさ、新曲作ったらまた一緒に遊んでくれよ」なんて、素直な心情を吐露する場面がたまらなく素敵だった。
ダブルアンコールでは、4人がステージ上でビールで乾杯をして、ツアー中の沖縄や徳島でのエピソードなど、取り止めのないおしゃべりを続けてリラックスしたひととき。「16年ぶりに「フリクリ」の続編が出るということで、まんまと音楽の話がやってまいりました!」と、the pillowsが海外でブレイクするきっかけとなったアニメの続編も担当することを報告。「愛着があるから嬉しいね。似合う、いい新曲を書いてみせる!」と誓う山中。同作の公開時期に関しては、米国にて2017年末または2018年初頭からを予定と現状アナウンスされており「マネージャーに『(それまで)元気でいてください』と言われました(笑)」と自虐ギャグに続いて前回の主題歌「Ride on shooting star」を披露した。
興奮冷めやらぬBUSTERSの拍手に促され、トリプルアンコールも実現し「POISON ROCK’N’ROLL」で2時間半を超えるライブは幕を閉じた。この日のライブを収録したDVDとBlu-rayが11月下旬にリリースされることが決定し、すでに発表されている9月の対バンイベントに続いて、11月、12月にもthe pillows主催イベントの開催も発表された。これからの展開にもますます目が離せない。
取材・文:浅野保志
撮影:橋本塁(SOUND SHOOTER)
◆ ◆ ◆
01. デブリ
02. ロックンロールと太陽
03. ROCK’N’ROLL SINNERS
04. Wake up! dodo
05. 空中レジスター
06. ターミナル・ヘヴンズ・ロック
07. Calvero
08. レディオテレグラフィー
09. Subtropical Fantasy
10. オレンジ・フィルム・ガーデン
11. Kim Deal
12. エリオットの悲劇
13. ブラゴダルノスト
14. カッコーの巣の下で
15. Come on ghost
16. I RIOT
17. About A Rock’n’roll Band
18. LITTLE BUSTERS
19. STROLL AND ROLL
20. Locomotion, more! more!
En.1
01. エターナル トレジャー
02. Ready Steady Go!
En.2
01. Ride on shooting star
02. Advice
En3
01. POISON ROCK’N’ROLL
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