【インタビュー】fhana「“本当は何もない”という前提から一周回った希望を表現したのがアルバムの大きな軸なんです」

■2nd Album『What a Wonderful World Line』
■全曲をメンバーが詳細解説

01.The Color to Gray World　（佐藤純一）
「灰色の世界に色彩を与えよう」というテーマの曲。人生にもともと意味なんか無い、だからこそそこに意味（＝色彩）を与えるのは自分自身の意志なんだ、という曲です。実はアルバムのエンディング的な大団円な曲です。エンディングから物語が始まって、最初に戻ってスタートする、そんなイメージです。

02.What a Wonderful World Line　（佐藤純一）
アルバム表題曲。スピード感のある曲です。メジャーデビュー前のfhanaのサウンドをアップデートした感じですね。この表題曲が出来るまで、何曲もボツにして、4度目の正直でひねり出しました。「人は分かり合えないからこそ一周回った希望がある」奇跡は祈り続けた人のもとに訪れるかもしれない、そんな曲です。

03.ワンダーステラ　（佐藤純一）
『プリズマ☆イリヤ　ツヴァイヘルツ！』のOP主題歌。作品のストーリーに寄り添って「絆」がテーマです。ジェットコースターのように展開が激しい曲なのですが、そんな「衝撃的な体験」を共有して、絆が生まれたら良いなと。そんな思いも込められています。冒険の地図を見つける曲。

04.Relief　（佐藤純一）
初の全編英語詞の曲。サウンド的には、僕の趣味がかなり反映されています。テクノっぽさとロックっぽさの融合を、クールな質感でまとめる。クールなんだけど秘めた熱さがあります。「Relief」というのは「救済」という意味で、世界中の人々がそれぞれ救いを求めている。だけどそれは他人から安易に与えられるものじゃなくて、本当の救いは自分の中にある、という曲。

05.little secret magic　（yuxuki waga）
使う楽器の数を減らして、ガツンとした曲を作りたくて作った曲。全編生楽器かつ、勢いを録りたくて、ギター・ベース・ドラムで“せーの”で合わせて録っています。キメと転調がやたら多いのは、渋谷系の楽曲からの影響。結構な勢いで攻めてる歌メロになりましたが、towanaが良い感じに、楽しげに歌いこなしてくれました。ぜひライブで、拳を挙げて一緒に盛り上がっていただければ。



06.Antivirus　（kevin mitsunaga）
デジタルな質感と生の質感の融合をとても意識した曲。fhanaの曲は基本的に前者と後者どちらの要素も持ち合わせていますが、この曲は他の曲に比べてデジタルな質感が強めになっています。何度もデモを直し、最終的に2000年代初めのJ-R&Bのようなサウンドにエレクトロニカな要素を加えた質感に落ち着きました。これまでのfhanaには無かった曲調なので、新鮮に感じてもらえるのではないかと思います。

07.虹を編めたら　（佐藤純一）
『ハルチカ』のOP主題歌。吹奏楽の楽器をアレンジに取り入れてます。そして、ハルタとチカの掛け合いよろしく、デュエットっぽい構成になっています。虹のように様々な色（＝個性）を持った人がいるが、それが虹の色のように平行線じゃなくて、編むように交わっていけたら良いな、という多様性を肯定する曲です。一筋縄ではいかないし、幻みたいなものかもしれないけど、それでも…っていう。

08.Critique & Curation　（yuxuki waga）
作る過程でアレンジがどんどん変わっていった楽曲。最初はもっとオルタナティヴなロックでしたが、アレンジ過程でみるみる変わっていき今のエレクトロファンクポップに。クラムボンのミトさんによるファンキーベースも聴きどころ。ボーカルはfhana初の佐藤さんがメインを取っています。男女混声ボーカルならではの良さ、面白さをを楽しんでもらえればと思います。

09.c.a.t.　（yuxuki waga）
こちらもライブでみんなで歌って楽しい楽曲。楽器的にはピッチシフトを多用したリフとthe band apart原さんの漢気溢れるベース、そして生ドラムならではのグルーヴがこの曲のキモ。アナログシンセも沢山使いました。読み方は正しくは“シーエーティー”なのですが、ほぼ全員“キャット”としか呼ばないのでもはや“キャット”で良い気がしています。ちなみにキャット＝猫は歌詞の通り、シュレディンガーの猫由来。

10.Appl(E)ication　（kevin mitsunaga）
『ハルチカ』のOP主題歌である「虹を編めたら」のカップリング曲。僕がもともと得意としている手法でサウンドを構築しつつも、他のメンバーによる楽器アレンジとの調和を意識しました。この曲はアルバムの制作がまだ始まっていない頃に出来たにも関わらず、林英樹さんの歌詞には「僕らはずっと互いに欠けてはいけない」等、アルバムの世界観とよくリンクする箇所があります。そういった繋がりを意識して聴いてみると曲がより楽しめるかもしれません。

11.追憶のかなた　（佐藤純一）
『コメット・ルシファー』の特別ED曲。こういう歌とオーケストラみたいな映画音楽的な曲を作りたいと前々から思っていたので、この機会に作れて良かったです。ちなみに、後半の英語パートのtowanaの歌がとても良かったので、“これは全編英語でもいけるぞ！”って思い、「Relief」を作りました。

12.ホシノカケラ　（佐藤純一）
『天体のメソッド』の特別ED曲。「天体のメソッド」という作品も思い入れ深いですが、この「ホシノカケラ」という曲も思い入れ深くて。実は、メジャーデビュー前からデモがあったんです。それが作品とバッチリはまって、とても泣ける場面が流れて。しかも1話目からずっと登場人物たちが鼻歌でこの曲のメロディーを口ずさんでいて。感無量でした。6/8拍子で、泣けるメロで、ちょっと不思議な音階のリフ。

13.コメットルシファー ～The Seed and the Sower～　（佐藤純一）
『コメット・ルシファー』のOP曲。王道ジュブナイル系作品ということで、王道的な曲を作りたい！と思ってすごい勢いで作りました。学生の頃バンド活動をしていたときのマインドで作ったと思います。とても速いロック曲です。実はアルバム用に、ギターを再ダビングして、ミックスもやり直して、シングル時よりもさらに高音質になっています。

14.gift song　（佐藤純一）
人は分かり合えない。でも、もしかしたら…分かり合うことが出来るかもしれない。それは不意に訪れ、そして消えていく。そんな瞬間こそが神様から与えられた「gift」なのだろう。この曲も、デモ自体はデビュー前からありました。しかも当時からタイトルは「gift song」でした。歌詞はまだなかったですが。それが時を経て、2ndアルバム「What a Wonderful World Line」のテーマを共鳴して、完成しました。アルバムの最後の贈り物。一筋の希望の光。

取材・文●武市尚子








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