【インタビュー】大森靖子「子供を産んだら、気持ちよく歌えました」

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前作『洗脳』から1年3ヶ月ぶり、3月23日にメジャー第2弾フルアルバム『TOKYO BLACK HOLE』をリリースする大森靖子。既発売のシングル曲「マジックミラー/さっちゃんのセクシーカレー」「愛してる.com/劇的JOY! ビフォーアフター」を含む全13曲を収録。さらに完全生産限定版【穴盤】では、出産の瞬間までの1ヶ月間を綴った200ページに渡る初の書き下ろしエッセーにDVD付き。この超強力作について、彼女本人に語ってもらった。


◆大森靖子画像

――今回は13曲入りですが、楽曲はいつ頃から書き溜めていたんですか?

大森靖子:一昨年の11~12月頃から書き溜めていました。今回のアルバムに入れる前提で。

――曲はどういう作り方をしているんですか?

大森靖子:普通に生活している中で「こういうものを曲にしたいな」というアイデアをiPhoneにメモしておいて、後で時間を作ってまとめる作業をします。まとめるとき、楽器は使わないです。楽器を使うと、楽器に縛られたメロディになるので。歌は頭の中で完全にできてから録音します。

――詞と曲はどっちが先に出てきますか?

大森靖子:そのときによって違います。大体、詞と曲が一緒にパッと浮かんだところから、詞と曲をそれぞれ派生させていくというか…最初に浮かんだフレーズを発展させていく感じですね。

――歌詞の分量がすごく多いんですよね。


大森靖子:そう、覚えるの大変ですよ。「誰がこんなに書いたんだよ!?…あ、私だ」っていつも思います(笑)。

――曲作りの苦労は?

大森靖子:苦労はしないです(笑)。たま~に、メロディがきれいに決まりすぎてて、そこにはまる日本語が見当たらない、ということはありますけど…でもそんなにないです。

――編曲はアレンジャーの人と相談して進めるのですか?

大森靖子:「この人にまかせておけば大丈夫だろう」と、ほぼお任せです。私、抽象的なことばかり言うんですよ。(その曲の)主人公の人格、たとえば「この人は外に出るのが嫌いで」とか、そういうことはすごく話します。「こういう音ください」とか、具体的なことは言わないです。

――今回、アルバムの制作期間中にお子さんを出産されているんですよね?

大森靖子:はい。デモを出産前に録って、子供を産んでる間にそのデモを進めてもらって、出産後、できあがったものにレコーディングしました。今までのレコーディングは、ライブの合間にちょっとずつ録っていたけど、今回はレコーディング期間が1ヶ月くらいあったので、集中して取り組めました。私にとって、ライブで歌うのと、レコーディングをするのって、全然違う仕事なんですよ。両方やっていると、バイトの掛け持ちみたいな感じになっちゃって(笑)。今回はレコーディングに専念できたことで、気持ちも大分違いました。どういう熱量の込め方をするか、どんなマイクを使うのか、とか、いろんなアプローチができて、いつもより楽しかったです。

――レコーディングは順調に進みました?


大森靖子:そうですね。妊娠中に一時耳の調子が悪くなったんですけど、産んだらそれがなくなって、気持ちよく歌えました。私の場合、上手く歌うというより、「この言葉は、この人格」っていう答えが自分の中で出せたら(歌録りが)終わるんです。全曲というか全フレーズごとに人格が違っていて、1曲で10人くらいいます。さっきの自分と今の自分って違うじゃないですか? さっき「いい」と思ってたものを今は「いい」と思えないことって、余裕であるんで。そのスピードでいたいんですね。元々しゃべるのも早いので、そのスピードで曲も歌いたいし。詞の情報量が多いのも、最近こんな感じじゃないですか、社会が。引っかかるものだけ中を見てみようかなって。そんな感じの社会をそのまま曲にしたいと、今の社会を反映したいという思いからです。

――特に印象に残っている曲は?

大森靖子:1曲目「TOKYO BLACK HOLE」です。表題曲なんですが、かと言って私の熱量を入れすぎると、ちょっとキツくなるというか。曲が強いので私が気配を消しても大丈夫かなと思って消したんですけど、でもちゃんと芯が燃えてなきゃいけない…そこのさじ加減が難しかったです。「超新世代カステラスタンダードMAGICマジKISS」は「調教されてないボカロの可愛さを人力でやったらどうなるか」と思って、わざと変な文節で区切って歌ったり、デュエット曲の「無修正ロマンティック~延長戦~」はリズムをタテで乗らないで、ただ淡々とメロをきれいに歌うことに専念したりと、曲ごとにそれぞれテーマを持って歌っています。

――リスナーの皆さんに向けて、アルバムのPRをお願いします。

大森靖子:“ながら聴き”には向かないので、集中して、できれば正座して聴いてほしいです。私はベッドに寝て、自分の左右にコンポのスピーカーを置いて聴いています。私の声はヒーリング効果があると思うので、聴いていて気持ちいいですよ(笑)。

――今回、長編エッセーもついていますね。

大森靖子:はい。出産前に暇だったんで書いてみました(笑)。アルバムに付けようと思って。去年の9月から日々の出来事をメモっといて、後でまとまった時間をとって書いていきました。出産前は頭が回らなかったので…。(直木賞作家の)朝井リョウさんが解説を書いてくださったんですけど、それが“朝井さんぽい熱量”だったので、うれしかったです。

――今後もエッセーなどを書いたりする予定は?

大森靖子:あまり考えてないです。集中力が歌詞1曲分のサイズに慣れているので、本1冊書くのは無理かなぁ? 書くんだったら芥川賞を狙って本気で書きます!


『TOKYO BLACK HOLE』




2016年3月23日発売
完全生産限定盤(CD+DVD+BOOK)AVCD-93389/B 4,800円+税
※BOOK:大森靖子が出産の瞬間までの1ヶ月間を綴った200ページに渡る初の書き下ろしエッセイ
DVD付(CD+DVD)AVCD-93390/B 3,800円+税
DVD:「愛してる.com」「生kill the time 4 you、、▽」「TOKYO BLACK HOLE」「マジックミラー」のミュージックビデオやメイキングなど収録予定
通常盤(CD ONLY)AVCD-93391 2.800+税
1.TOKYO BLACK HOLE
2.マジックミラー
3.生kill the time 4 you、、▽
4.超新世代カステラスタンダードMAGICマジKISS
5.愛してる.com
6.SHINPIN
7.さっちゃんのセクシーカレー
8.劇的JOY!ビフォーアフター
9.■ックミー、■ックミー
10.ドラマチック私生活
11.無修正ロマンティック~延長戦~
12.給食当番制反対
13.少女漫画少年漫画

◆大森靖子オフィシャルサイト
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