【インタビュー】アルマナック、オーケストラを多彩に操るパワー・メタルとは?

ポスト

2015年2月にジャーマン・メタル・バンドのレイジからの脱退が発表されたヴィクター・スモールスキがニュー・バンドのアルマナックを立ち上げ、アルバム『ツァー』を2016年3月18日にリリースする。レイジが2013年にリリースしたアルバム『リングモア・モーティス・オーケストラfeat.レイジ』のコンセプトを引き継いだというこのアルバムは、メロディック・パワー・メタルにオーケストラをフィーチュアしたもの。このプロジェクトがスタートした経緯からヴィクターに語ってもらった。

◆アルマナック画像

――アルマナックはどういう経緯でスタートしたのですか?

ヴィクター・スモールスキ:2年ほど前に、新しいソロ・アルバムを作ることを考え始めて、一緒にやるミュージシャンを探し始めたんだ。それで、何年も前から知り合いのベース・プレイヤーのアーミン・アリックと、別の活動を通じて知り合った素晴らしいドラマーのマイケル・コールに声を掛けた。ヴォーカルも入ったアルバムにしようと考えていたので、シンガーも何人か起用しようと、ブレインストームのアンディ(B・フランク/Vo)とピンク・クリーム69のデイヴィッド(リードマン/Vo)に声をかけたら、彼らもとても興味を持ってくれていた。そして、レイジを辞めようと決めた時に、ソロ・アルバムを作るか、それとも新しいバンドを組むかと考えて、彼らに新しいバンドをやることに興味があるかと確認した後、試験的なライヴをフランクフルトの『ミュージックメッセ』でやってみたんだ。みんなが俺のコンセプトを気に入ってくれるかどうかも知りたくてね。そのコンセプトは数年前にレイジのLMO(リングモア・モーティス・オーケストラ)で既にやり始めていたもので、複数のシンガーと一緒にやって、バックにオーケストレーションを加えるというものだ。そのショウをやってみて、誰もがそのアイディアをとても気に入ってくれたので、その瞬間から、つまり去年の4月から、俺達で新しいバンドをやると決めたんだ。

――アルバム『ツァー』はコンセプト・アルバムになっていますが、どういったストーリーなのでしょう。

ヴィクター・スモールスキ:歴史に関するコンセプトをもとに、これまでに扱われたことがなかったようなパワフルなものを探していたんだ。それで、ロシアの歴史はあまり知られていないけど、イヴァン4世(イヴァン雷帝)のことは誰もが知っているんじゃないかと思って取り上げてみることにした。学生時代に習って知っていることは沢山あったけど、本も何冊か読んで、このアルバムを作るためのアイディアを準備した。それをシンガーのデイヴィッドとアンディに渡して歌詞を書いてもらったよ。



――『リングモア・モーティス・オーケストラfeat.レイジ』と比べると、アルバムの全体を通してヘヴィ・メタル色が強く、オーケストラのパートが少なくなっていますね。

ヴィクター・スモールスキ: LMOはある種の実験でありサイド・プロジェクトだった。レイジで俺が最後に作ったアルバム『21』(2012年)は、かなりヘヴィでアグレッシヴだったから、LMOではよりシンフォニックなことを実験的にやってみたんだ。アルマナックは俺にとっては間違いなくメタル・バンドだよ。俺の考え方や俺の作曲の仕方の中で、このバランスが完璧だと考えている。

――レイジにも通じるパワー・メタル・スタイルの音楽が展開されていますが、このスタイルがあなたの音楽なのですか?

ヴィクター・スモールスキ:それは何とも言えない。俺が作曲する時には、アイディアがそこにありその瞬間に俺が感じるように音楽をやっているだけだ。プランも立てないし、組み立てたりもしないし、前にやったことを繰り返したりもしない。ただ自分に正直であり続けて、自分の頭の中で聞こえているものを作曲し、プレイしたいと感じるようにプレイするだけ。それが俺のいつものやり方なんだ。やりたいことをやり、感じるようにやり、自分が望むやり方でやる。その結果がこのアルマナックということだよ。

――オーケストラ・アレンジもあなたが行なっているようですが、すべて1人でやっていると、作り込み過ぎたりジャッジに困ることはないですか?

ヴィクター・スモールスキ:そんなことはないよ。複雑なことはやろうとしていないからね。複雑にしたからって、いつも良いとは限らない。作曲している時は、ギターだろうとドラムスだろうとベースだろうと、どの楽器も、複雑なこと、興味深いこと、特別なことをやろうなんて一切考えない。何よりも大事なのはその曲のフィーリングであり、その曲が何を必要としているかなんだ。クオリティが高いことは俺にとって凄く重要なことだけど、クオリティの高さはテクニックや複雑さとは関係ない。それに、3つの音を弾くだけでも、凄く複雑なことはやれるしね(笑)。沢山の音でクレイジーなアルペジオを弾いても、かなりシンプルにやることはできる(笑)。それから、常に新しくて面白いものが見つかるようにもしているよ。自分が既にやったことを繰り返すのは好きじゃないからね。実験することは大好きだ。ミュージシャンにとっては、作曲をして新しい何かを見つけることは、凄くエキサイティングなことなんだ。新しい扉を開くんだよ。(笑)


――アルバムはライヴ感に溢れたサウンドになっていますが、レコーディングで重視したことはなんですか?

ヴィクター・スモールスキ:そうだな…。俺にとって最も重要なことはパワフルな曲に仕上げることだったし、ライヴでプレイできるようにすることも非常に大事なことだ。バンドのアレンジをしていた時、作曲をしていた時から、ライヴでも映える楽曲にすることが大事だった。俺はこういうオーケストラのアレンジが好きだけど、オーケストラを前面に押し出すことはそれほど大事じゃない。どちらかというと色付けとして使っているだけだ。クラブ・ツアーをする時にはオーケストラは同行できないから、それでも良いというのが大事なことだね。

――まもなくヨーロッパ・ツアーが始まりますが、アルバムの曲順にプレイすることになりますか?

ヴィクター・スモールスキ:まだ決めていないんだ。新しい曲を沢山プレイしようとは考えているよ。多分ほとんどはプレイするだろう。2~3曲は過去に作った曲をやるかもしれない。ツアーはリリース日である3月18日から始まって20回ほどもショウをやるハードなものなんだよ(笑)。ツアーの後も夏には色々なフェスティヴァルに出て、秋にツアーの第二部をやる。ロシアへ行くことも考えているし、日本にも行けたらとても嬉しいと思っているよ。

取材・文:Jun Kawai
Photo by Diana Hank

【メンバー】
ヴィクター・スモールスキ(ギター)
アンディー・B・フランク(ヴォーカル)
デヴィッド・リードマン(ヴォーカル)
ジャネット・マルヒェフカ(ヴォーカル)
アーミン・アリック(ベース)
マイケル・コーラー(ドラムス)
エンリック・ガルシア(キーボード/ピアノ)


アルマナック『ツァー』

2016年3月18日発売予定
【通販限定CD+ボーナスDVD+Tシャツ】5,500円+税
【初回限定盤CD+ボーナスDVD】3,500円+税
【通常盤CD】2,500円+税
1.ツァー
2.セルフ・ブラインディッド・アイズ
3.ダークネス
4.ハンズ・アー・タイド
5.チルドレン・オブ・ザ・フューチャー
6.ノー・モア・シャドウズ
7.ネヴァーモアー
8.レイン・オブ・マッドネス
9.フレイムス・オブ・フェイト
【ボーナスDVD収録予定内容】*日本語字幕付き
1.セルフ・ブラインディッド・アイズ
2.ツァー(リリック・ビデオ)
3.メイキング・オブ・ツァー
4.メイキング・オブ・セルフ・ブラインディッド・アイズ
5.ウィンター・マスターズ・オブ・ロック
6.インストゥルメンツ&テクニック
7.バンド・インタビュー
8.アウトテイクス
9.スタジオ・ビッツ
10.B-ロール
11.ユニティ・ミュージック・スクール
12.クレジット

◆アルマナック『ツァー』オフィシャルページ
この記事をポスト

この記事の関連情報