【インタビュー】Anly、美しくちいさな島で育まれた大器。2ndシングル「笑顔/いいの」に迫る

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美しくちいさな島で育まれた、純粋無垢な感受性。洋楽のブルースやカントリーやロックンロールなど、年齢に似合わぬ骨太なルーツ。デビュー・シングル「太陽に笑え」(ドラマ『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』主題歌)のヒットで一躍注目を浴びる19歳のシンガーソングライター、その名はAnly(アンリィ)。

待望の2ndシングルは、読売テレビ・日本テレビ系スペシャルドラマ『ぼくのいのち』の主題歌として書き下ろした「笑顔」と、高校生のピュアな片思いをみずみずしく描く「いいの」とのダブルAサイド。エアリーなボイス、キュートなルックス、確かなギターのスキル、世代を問わず届くリリック。華奢な体に可能性をいっぱいに秘めた、大器の登場だ。

◆Anly 画像

■東京は音の刺激がすごく多いんですよ。
■島にいると本当に静かで、歌詞から浮かぶことが多いんですけど


――沖縄の伊江島という、ちいさな島で生まれ育ったAnlyさん。それはやっぱり、人格形成にも、大きく影響してますか。

Anly:はい。人格形成にも影響してますし、音楽にも。

――あ、音楽にも。

Anly:CDショップもなくて、ネットの動画サイトを見る環境もなかったので。父が持っているCDを聴くしか、音楽の情報源がなかったんですよ。なので、エリック・クラプトン、ZZトップ、CCRとか、そういうものばかり聴いていたので、それが今の自分の根っこにあるルーツ・ミュージックですね。

――めっちゃ渋い。かっこいいです。情報がなかったのがかえってよかった……のかな?

Anly:みなさんそう言ってくださいます(笑)。今思えば、ああいう昔のロックとか、フォーキーなものとかを聴いていなかったら、今作っている曲はなかったであろうと思うので。伊江島という環境には、本当に感謝しています。人間もみんなあたたかいし。みんな知り合いで、必ず話しかけてくれるんですよ。

――島では、音楽は盛んですか。

Anly:自分の先輩に、バンドはよくいました。おじさんたちも、たまに倉庫に集まってバンドして、遊んでたりしますね。普通に菊畑で働いていたり、車の整備をしているおじさんたちが、夜8時ぐらいになって、大工のおじさんの倉庫に集まってバンドやるとか。

――ガレージバンドだ!(笑)

Anly:本当にガレージバンドですね(笑)。伊江島は百合が有名で、100万輪ぐらい咲くんですけど、百合祭りになると、ガレージバンドたちがこぞって外に出てくる。そこに父も、たまに参加したりして。私も舞台に上げてもらって、歌ったりとか。みんなで音楽を楽しむ環境がありましたね。

――弾き語りでストリート・ライブを始めたのは、高校生の時でしたっけ。

Anly:Anlyとしての活動を始めたのは、高校2年生の時です。高校1年生の間は吹奏楽部に所属していて、すごく忙しい部活で、合間に曲は作っていたんですけど、発表する場もなく。これだと自分がやりたいことができないかもなと思ったので、高校2年生の時に決断して、吹奏楽部をやめて。まずは初めてのライブを伊江島でやりました。お客さんはほとんど顔見知りの人たちですけど、“いい声だし、いい歌だから、頑張ってね”と言ってもらえて、勇気を振り絞って、次は本島で頑張ります!という感じで、活動を始めました。

――そう、一番最初に言うの忘れてましたが。本当にいい声。

Anly:ありがとうございます(笑)。

――ふわっとエアリーなんだけど、芯があって伸びていく。影響を受けたアーティストはいます? もともと聴いていた昔のロックは別にして、今につながる曲作りや、歌い方の面で。

Anly:歌い方とかは、特に誰も参考にはしていなくて。曲も、“この人、いい”じゃなくて、“この曲、いい”という感じで聴いてたので、特に誰というのはないです。どっちかというとイギリスのアーティストが好きで、今はエド・シーランが好きです。インディーズの時に一緒にレコーディングさせてもらった、ガブリエル・アプリンさんもイギリスですね。

――インディーズ時代の曲も聴かせてもらいましたけど、「Boys Blues」みたいな、めちゃめちゃ渋くてかっこいいブルースがあったり。ああいう曲を作る時と、いわゆるポップ寄りの曲を作る時って、頭の中で分けて考えてるのかな?と。

Anly:あー、「Boys Blues」は、16歳ぐらいの時に作ったんです。何の予定もない日曜日に、ごろごろしながら作った曲で。自然体の時になると、うっかり出てくるブルースみたいな(笑)。

――なるほど! あれが素なのか。

Anly:素なんです。ポップっぽい曲を作っていても、気づかないうちにブルーノート(音階)になってたりして。指摘されて直したりとか、しますね。気を抜くと出るんです(笑)。

――インディーズを経て、昨年メジャーデビュー。環境はどんどん変わってきましたけど、曲作りにもターニング・ポイントはありました?

Anly:ターニング・ポイントは、伊江島から那覇に移り住んだのが一回目で、那覇から東京に出てきたのが二回目で。東京に来てからは、今までとは全然違う、“このメロディどこから出てきたんだ?”というものが、よくできますね。東京は、音の刺激がすごく多いんですよ。島にいると本当に静かで、牛の鳴き声がするぐらいで、歌詞から浮かぶことが多いんですけど。東京に来はじめてからは、真夜中にパトカーのサイレンとか、話し声が聞こえたりするので、メロディからできることが多いですね。こんなふうに影響を受けるんだ、って。

――それ面白いです。デビュー・シングルの「太陽に笑え」は、東京で作った曲?

Anly:「太陽に笑え」は、那覇で作りました。国際通りでストリート・ライブをしてる時に、浮かんできた曲ですね。おととしです。

――じゃあ、ドラマの前なのか。ぴったりだったので、書き下ろしだと思ってました。

Anly:自分もびっくりしました。台本をいただいて、見て、“あれ? 合うな”みたいな。すごくうれしかったですね、こんなにぴたっとくっついてくれて。カップリングの「Don’t give it up!」は、『サイレーン』の台本を読んで、影響を受けて書いた曲ですけど。



▲「笑顔/いいの」

――今回は? 新曲「笑顔」は、ドラマ『ぼくのいのち』主題歌になってます。

Anly:今回は、完全に台本を読んで書き下ろした曲です。初めてそういうパターンで書いてみました。いろんな試行錯誤をして、難しかったんですけど、すごくいい曲ができたなと思ってます。自分で作ったけど、何回も聴きたくなるような曲になりました。

――歌詞が先?

Anly:元になる歌詞を少しずつ書いて、メロディをつけていく、同時進行型ですね。ドラマのストーリーが、家族の話なんです。男の子が病気になって、お母さんはショックを受けてるんですけど、男の子は力強く生きていて、笑顔を絶やさずに、逆にお母さんを励ましたりしてる。お母さんも強くなって、一緒に乗り越えようという気持ちになっていくというストーリーなんですけど、全体を通して“笑顔”がテーマだろうなと自分は感じたので、それをストレートに書いてみました。それを自分と当てはめてみると、自分の周りにある当たり前の風景も、当たり前じゃないと思ったんですよ。伊江島にいた頃に見ていた風景は、今は見れないし、今こうして東京で過ごしている日常も、当たり前のことじゃない。“当たり前じゃない”ということに気づけたらいいなと思って、この曲を書きました。

――自転車走らせ家まで、とか、柔らかい潮風を切って、とか。たぶん島の風景なんだろうなと思って、聴きました。

Anly:そうですね。偶然、ドラマの中でも、家族が住んでいる家が海に近いんですよ。そんなに意識せずに書いたんですけど、台本を読み返してみて、気づいて、ちゃんと海があってよかったと思いました(笑)。自然に書いたものがそうなって、うれしいです。

――ヒントはドラマにもらったけど、ストーリーの中に自分がいるというか。

Anly:そうですね。自分が聴いた時に、元気になる曲が作りたかったので。自分が元気になれるんだったら、聴いてくれる人も、何かしら感じてくれるんじゃないかな?と思ったので。

――“あなた”の笑顔に助けられた、という“あなた”は、このストーリーの中では、お母さんということになるのかな。その人にとって、当てはまる人は違うかもしれないけれど。

Anly:家族とか、恋人とかでも、当てはまるかなと思いますね。自分の場合は家族で、母のことですね。自分は冷え性なので、寝る時にふとんに手を突っ込んで、気づかれないようにお母さんの手を探してたとか。

――それ、まんま歌詞にありますね(笑)。そういう意味だったのか。

Anly:はい(笑)。自分の思い出も入ってます。“家族”で見えてくるような風景を入れようと思ってました。それはきょうだいかもしれないし、そういうふうにくっついて寝ていた人もいるだろうし。そういう思いで書きました。

――ちなみに何人きょうだいですか。

Anly:ひとりです。

――それは甘やかされましたね。

Anly:はい(笑)。でも、ひとりっこは、淋しいですよ。ひとりごとが多くなるし。遊び相手はギターしかいないし、みたいな感じでした。ちっちゃい時は。

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