【Tシャツ談義】ユニクロ「UT」音楽ラインをBARKS編集部が徹底検証

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あらゆるウェアアイテムの中で、Tシャツほど着る人の内側までダイレクトに物語るアイテムはないのではないだろうか。Tシャツは個性を彩る自己主張のキャンパスだ。シンプルゆえにとても自由で奥も深い。

世の中には途方も無いほどTシャツのバラエティが存在するが、2003年より始動したユニクロのTシャツブランド「UT」は、ユーザーの個性を表現するツールとして、アート、音楽、映画、漫画、アニメなど様々なポップカルチャーをTシャツを通じ展開してきた。1年365日のほとんどをバンドTで過ごす烏丸編集長を筆頭に、やはりBARKS編集部としては、その中でも音楽シリーズが気になるところ。早速ユニクロから最新の2016年モデルを取り寄せてみた。

手元に届いたのは、“GROOVE MAKERS”と“MUSIC ICONS”の2シリーズで、今回が初登場となる“GROOVE MAKERS”は、音楽好きであれば脊髄反射してしまいそうなクールなレーベル・ロゴやレコード盤などがデザインされている。一方、最近は野外フェスなどで着用者も見かける“MUSIC ICONS”は、特定のミュージシャンをフィーチャー。今回はフー・ファイターズ、レッド・ツェッペリン、ミスフィッツ、カート・コバーン、セックス・ピストルズ、ケミカル・ブラザーズが起用されている。Tシャツを実際に手に取ってみると、細部に宿るこだわりを発見していくとともに、驚くほど音楽愛に溢れたTシャツであったのだ。

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編集部員(さ)(♀):これは並べてみると圧巻ですね。まずGROOVE MAKERSは、女子目線から言わせていただくとレインボーカラーのCapitolのデザインがフェスで活躍しそうで気になります。ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』の盤面から来てるって知らなくても、手に取りたくなる。

編集部員(い)(♂):うん、カワイイしオシャレだよね。ビーチ・ボーイズの他にCapitolのアーティストと言えば、ザ・ビートルズ、アイアン・メイデン、ピンク・フロイド、フランク・シナトラ、ナット・キング・コール…最近ではデヴィッド・ゲッタ、コールドプレイですよね。



烏丸:幅広くいろんなジャンルの音楽を牽引してきたレーベルだよね。1970年代頃にはCapitolが音楽業界の象徴のような時代があって。だからたとえば、アルティメット・イヤーズ(アメリカのイヤモニブランド)がキャピトル・スタジオとコラボレーションしたレコーディング用のイヤモニなんかも出てるんだけど、それはCapitolというレーベルのステータスが成せる技だよね。僕なんかはこのロゴにすごい親しみあるけど、今の若い子達ってどうなんだろうね?

編集部員(い):いや、あんまりないんじゃないですかねぇ。今の子達ってレーベルロゴ自体、目にする機会が少ないと思いますよ。

烏丸:音楽の聴き方がパッケージよりデジタルのほうが主流だから、ダウンロードとかストリーミングとなると必然的にレーベルロゴに触れる機会も減るよね。

編集部員(い):レコードを聞くときは自然とジャケットやライナーノーツを隅から隅まで見るんで、その中の要素としてレーベルロゴも記憶に刷り込まれてますよね。きっとGROOVE MAKERSのTシャツ着る人って、元ネタを知ってる人と知らない人とはっきり分かれそうですね。で、音楽が詳しいおじさんは、若い子にうんちくをいっぱい語れるっていう。



烏丸:詳しいおじさん目線で言えば、黒のほうはレコード盤を忠実に再現してあって、白は着やすい色味だね。

編集部員(さ):スカイブルーのVirginのTシャツもフェス向きですよね。この元ネタはセックス・ピストルズの『勝手にしやがれ』の盤面です。

編集部員(い):そっか、このアルバムCDでしか持ってないから気づかなかった! 爽やか過ぎてピストルズと結びつかなかったな。



烏丸:今の有名なVirginロゴを使わないのはもったいないとも思っちゃったけど、ほら、表からは見えないところ…めくると首周りにちゃんと入っているんだよね。

編集部員(さ):本当ですね!

烏丸:しかも『勝手にしやがれ』のレコード品番を、敢えて白字で白い生地の部分に置いてある。ここにこんな印刷があるなんてそれ自体なかなか気づかないよ。何も知らないでこのTシャツ買った人がこの番号に気がついてネットで調べてみたらピストルズがヒットする。まさかセックス・ピストルズを着回していただなんて…と、ちょっとした探偵気分。



編集部員(い): GROOVE MAKERSは、元ネタを誰かに教えてもらわなかったら気づけないくらい、さりげなくネタが散りばめられてるのが音楽好きにはたまらないですよね。

編集部員(に)(♂):元ネタを知らないで着てる子どもに、親が「お、なんだそのTシャツは!」と反応することもありそう。

烏丸:それ、あるかもね。うちの息子に「お前いいTシャツ着てるな」って言ったんだけど、実は俺のTシャツを持ち出してて勝手に着ていたという。ひとまわりして自分のセンスを褒めてたっていう恥ずかしい話(笑)。

編集部員(い): Tシャツを通して、音楽が世代を越えて届いていくのは嬉しいですよね。

烏丸:そう。音楽って世代を越える力があるから、こうやってTシャツ自体のデザインがよければ、10代から60代のあいだまで誰でも手に取れるだろし、そこからこういう音楽談義にも発展していくよね。

編集部員(い):2~30年後にこのコレクションが着られてたらいいし、十分その可能性はありますよね。

烏丸:UTのクリエイティブディレクターのNIGOさんも、企画を練っていく時に、発売当初は爆発的に売れなくても時間が経ってからレアアイテムになるような価値のあるものにしたいっていう思いがあったんだって。



編集部員(さ):今から一式揃えておくのも手ですよね。ところでこれはなんのTシャツだかわかります? EMIデザインなんですよ! 正式名称の“Electric & Musical Industries Ltd.”がメインヴィジュアルになってますけど、馴染みのある現在の赤いロゴも脇にプリントされてます。

烏丸:ここだけ赤で刷られてるんだね。長年音楽サイトの編集長なんてやってますが、EMIがこの略だって知らなかったです。勉強になりました。

編集部員(い):これは音楽上級者向けのプロダクトですよね。レコードショップの店員とかにも注目されそうだし、なんならこれ着てEMIに打ち合わせに行きたい(笑)。



編集部員(に):EMI系のアーティストのライブにも着て行きたいですよね。誰にも気づかれないだろうけど、実はっていう。みんなは出演してるアーティストTを着てるなか、自分はその一歩も二歩も上を行ってるんだぜって思える。

編集部員(い):うちなる満足だよね。

編集部員(さ):それ重要ですよね。

烏丸:いずれにせよ、ここまでこだわって商品化しちゃうあたり、なんというか…異常だよね(笑)。

編集部員(い):ユニクロの中でよく企画通ったなって思いますもん(笑)。ユーザーに対して過剰に説明的な主張はしないで、見る人が見ればわかるこの企画ってきっとユニクロの中でも異端ですよね。もちろん謎解き的な遊び心もあるだろうけど、音楽ファンに対する信頼感みたいなものも感じるんだよな。



烏丸:ユニクロって音楽が好きなんだよ。ほら、これ知ってる? ユニクロの名義でCDも出しているんだよ(『BLUE NOTE MEETS UNIQLO』/2011年)。ブルーノートのアーティストTシャツをUTで出した時に、対象アーティストの楽曲も記念でコンピにしたものでさ。

編集部員(さ):実際の音楽プロダクトまで作っちゃうんですね。Motownのデザインもさすがで、このレーベルらしいヴィンテージ感や重量感が出てます。



烏丸:このTシャツにも、謎の品番が下のところにさりげなく入ってるねぇ。

編集部員(い):ジャクソン5のデビュー・アルバム『帰ってほしいの(Diana Ross Presents The Jackson 5)』の品番だ! Motownと言えば外せないアーティストですよね。あとここは、スティーヴィー・ワンダー、ダイアナ・ロス、スプリームス、マーヴィン・ゲイ。Motownって完全にこういうブラックの感じ、レーベルイメージが一番はっきりとありますよね。



烏丸:モータウンって若い子は知っているのかなぁ。音楽ジャンルにすらなっているレーベルだからこれを機に知ってほしいよね。

編集部員(い): だからTシャツと一緒に元ネタの盤をプレゼントするのもいいですよね。っていうか俺、スプリームスとかすごい聴きたくなってきました! 自分の音楽ライブラリーがとんでもないことになってきてて、もう一生聴かない曲とかも出てきちゃってるから、最近は選曲のきっかけを大事にしてるんですよ。このTシャツがまさに今そうで、街なかでもそういうことが起こるといいな。

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