【インタビュー】ポール・ギルバート「ニューアルバムに詰め込んだソウルとギターテクを全部話すよ」
■「Love Me Had」の曲の歌詞はMR.BIGで過ごした時代のことを綴っている
■二度とリピートできない時のことを思い出しながら歌った曲なんだ
――特に、今回のアルバムに収録されている「One Woman Too Many」や「Make It(If We Try)」といったエモーショナルなナンバーを聴くと、それがよく分かります。
ポール:その2曲に限らずレコーディング・セッション全体を通してそうだったけど、今回はフィーリングをすごく大事にしたんだ。これまで何十枚とアルバムを作ってきて、いろんな形のレコーディングをしてきたけど、そういうことは初めてだった。僕の過去のアルバムに親しんでいる人は、きっと驚くんじゃないかな。特に昔の僕はエモーショナルよりもパワーを重視していたからね。今回のアルバムでは、今までの自分にはなかった新しい扉を開けられたことを感じている。
――それは、強く感じました。アコースティック・ソングの「Love Me Had」は、最初からこういう形にしようと思って作ったのでしょうか?
ポール:うん。今回はトニー・スピナーとフレディ・ネルソンという素晴らしいシンガーが参加していて、それをフィーチャーするにはアコースティック・ナンバーが最高だと思ったから。元々は今回のアルバムでエリック・マーティンにも何曲か歌ってもらいたいと思っていて、「Love Me Had」はそのために書いた曲なんだ。だから、この曲の歌詞はMR.BIGで過ごした時代のことを綴っている。MR.BIGがビッグバンドになって、4人でいろんなことを経験して、本当に楽しい時間をシェアすることができた素晴らしい思い出を歌っているんだ。残念ながらエリックは本当に忙しくて世界中を飛び回っているから実現しなかったけど、二度とリピートできないMR.BIG時代のことを思い出しながら歌った曲だから、特別な感情が込められた曲といえるね。
――そういう経緯があったんですね。「Love Me Had」は、曲中のパートによってテンポが変わるアレンジも印象的です。
ポール:それは、始めからそういうイメージだった。今の時代の音楽は打ち込みが主体だよね。でも、コンピュータで、こういう風に1曲の中でテンポ・チェンジするような曲をプログラムするのは難しい。だけど、人間が生で演奏すれば、ごく簡単にできることだから。そういう生身の人間ならではのフィーリングを活かしていて、ある意味、“ざまあみろ、機械!”みたいな曲だね(笑)。
――良いですね(笑)。「I Am Not the One(Who Wants To Be With You)」はハード・チューンから最後にスロー・ブルースに移行する構成が最高にカッコ良いです。
ポール:あの流れは直観的に思いついたんだ。スロー・ブルースのベーシックなパターンは本当にシンプルだけど、ギタリストにとってすごく満足感があるんだよね。僕はもう40年もギターを弾いていて、その間にスタイルも随分変わったけど、若い頃は何年間もブルースやR&Rのベーシック・パターンを弾いて楽しんでいた。ああいうプレイは、シャッフルの練習にもなるしね。最近の若い人達はそういうものを長時間練習しなくなっているけど、僕らの世代はそういうところから入っているというのがあって。ギタリストとしてシンプルだけど満足感のあるものを弾きたくなることがあって、そうすると大体スロー・ブルースを弾いているよ。
――ハードなパートもブルース・パートも魅力的です。ストレートなR&Rチューンの「Gonna Make You Love Me」もアルバムの良いフックになっています。
ポール:最初にバンドのメンバーにアルバムの構想を話した時に、ボーカル・ハーモニーやギター・ハーモニーをフィーチュアしたアルバムを作りたいという話をしたんだ。でも、それと同時にストレートなものもやりたいから、もしアイディアがあったらどんどん出して欲しいと言ったんだよね。そうしたら、フレディ・ネルソンが持ってきたのが「Gonna Make You Love Me」だった。すごく良かったから、すぐに採用させてもらうことにしたよ。アッパーな良い曲だし、1番はフレディが歌って2番は僕が歌うというコントラストを出せたという意味でも気に入っている。
――心地好く気持ちを引き上げてくれる曲で、ストレートなロックの魅力を改めて感じました。ちょっと大げさな話かもしれませんが、こういう曲は暗いニュースが多い世の中に一つ明かりを灯すようなことを感じます。
ポール:ありがとう。たしかに、音楽はそういう力を持っているよね。僕は昨日日本のテレビの収録で、ももいろクローバーZと共演したんだけど、彼女たちの音楽もハッピーだよね。彼女達も世界平和に貢献しているんじゃないかなと思うよ(笑)。
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