【インタビュー】瀧田イサム、超絶のベーステクニックが恐ろしいほどに詰め込まれたソロ『RISING MOON』

■ボトムのベースの他にタッピングでオブリをチョロチョロ入れて
■さらにハモリも入れてメインのメロディーも要所要所にハモリを入れて…

――それぞれのギタリストの個性を味わえて楽しめます。続いて、ゲスト・ベーシストの話をしましょう。

瀧田：MASAKI君とIKUO君に関しては、PSYCHO DAZE BASSレーベルの先輩なので、2人には絶対に参加してもらいたいなと思って。あとは、レーベル主催の全世界、プロアマ問わず、男女問わず…みたいな感じのベーシスト・オーディションがあったのですが、最優秀賞が僕のアルバムのレコーディング参加権で、それで優勝したのが中学生の吉中美夕君。彼は、神童ですよ（笑）。彼のレコーディングに立ち会うことにしてキングのスタジオに来てもらったんですけど、まぁ堂々としていましたね。本格的なレコーディング・スタジオに呼ばれて、広いブースの真ん中にイスが置いてある状態というのは緊張すると思うんですよ。でも、美夕君は、全く物怖じしていなかった。今どきの子はそうなのかもしれないけど、ビックリしました。

――美夕君、すごいですね。ゲスト陣をフィーチュアした圧巻のベースソロ・バトルは、「GRAND CIRCLE」と「EXPLORER」で聴けます。

瀧田：「GRAND CIRCLE」は、MASAKI君とIKUO君、美夕君、それに僕というメンバーです。彼らは、“ロック・速弾き・テクニカル系”なので、そういうところを全面に押し出せそうな曲が良いなと思って、速いシャッフルの曲を作りました。この曲は'80年代感を出したくて、スネアにゲート・リバーブを掛けたんですよ。今どき誰も使ってないだろうっていう（笑）。そういう遊び心も入れました。バトル・パートは「SOMETHING NEW」のアウトロと同じように、最初に僕が自分のパートを弾いて。そのうえで弾く順番と小節数を伝えて、後はそれぞれに自由に弾いてもらいました。プレイもすごいし、資料とかを見なくても誰だか分かるというのもすごいですよね。


――同感です。

瀧田：もう1曲の「EXPLORER」は毛色が違っていて、アメリカン・ロックとフュージョンをミックした感じの曲。こっちはHibiki君とかBOH君、フュージョンのつわものの方とかが参加してくれていて。それに、この曲のバトルには、僕は参加していない。なので、バトル・パートに関しては、丸投げです。8小節や4小節といったギュッとした中で自己表現するのが得意な方々なので、どんなことをやってくるのかなと楽しみにしていたら、本当にすごかったですね。それぞれがキャラクターをしっかりと出していて。Hibiki君は前からタッピングが上手い子だなと思っていたら、もう全面タッピングという（笑）。良いですよね。かと思えば、コモブチキイチロウさんはラテン・ジャズのフレイバーがあるシブさバリバリのソロを弾いていて。うしろから前川さんは、変態ベースを弾くんですよ（笑）。彼は7弦ベースを使ったり、チェロとデュオをやったりという風に、いろんなことをやっていて。今回も、ぶっ飛んだソロを弾いてくれました。

――「GRAND CIRCLE」とはテイストの異なるバトル・ソロというのが良いですね。それに、この曲のアウトロでは瀧田さんがホットなソロを弾かれています。

瀧田：シメは、自分がやりたい放題やらせてもらおうと思って。音を歪ませて、アドリブで弾きまくりました（笑）。“泣きのギター”というのはあるけど、“泣きのベース”というのはないじゃないですか。ちょっと、そこを目指した部分はありましたね。それで、わりとチョーキングを多用していて、1音半チョーキングとかもしています。

――ベースで1音半チョーキングというのは、すごいですね（笑）。それに、今作はベースのダビングを多用していることもポイントです。

瀧田：ダビングは、もう普通にやりました。たとえば「FAIRY TOUCH」とかは、ギターはパワーコードを白玉で鳴らしているくらいで、あとは全部ベースです。ボトムのベースの他にタッピングでオブリをチョロチョロ入れて、さらにハモリも入れて。メインのメロディーも要所要所にハモリを入れて…みたいな形になってる。「EXPLORER」と「GRAND CIRCLE」は、ギターがメロディーをハモッていて、ベースもそのオクターブ下で2声のハモリになっていたりとか。そういうアプローチを採れるのは6弦ベースならではですよね。一般的な4弦ベースだと、僕がやりたいことは半分もできない。このアルバムを作っている時に、やっている音楽は’70年代～'80年代をモチーフにしたものだけど、新しい音楽として捉えてもらえるんじゃないかなという気がしたんです。それは、ベースでいろいろなことをやっていることが大きいんじゃないかなと思いますね。

――ベースで表現できることの幅広さを改めて感じました。ベースでもっと面白いことが出来ないかなと思っている人は、ぜひ『RISING MOON』を聴いて欲しいです。

瀧田：聴いてみて欲しいですね。ベースというパートは、4弦／5弦ベースでカバーできるじゃないですか。でも『RISING MOON』は6弦をじゃないと出来ないことをやっていて。こういう音楽もあるんだよということを提示したかったんです。6弦ベースというのは登場してもう20年以上経っているけど、あまり活用されてないですよね。それは必要性がないからだと思うけど、僕にとっては必要だった。それを、今回一つの具体的な作品として示せたことが、すごく嬉しいです。

――『RISING MOON』を聴いて、4弦ベースと6弦ベースの2人がいるバンドとかも“あり”なんじゃないかなと思ったんですよね。

瀧田：そういうのも面白いんじゃないかな。要は、“ハイC”が使える6弦ベースを活かした良い例が、今までなかったんですよ。今回の『RISING MOON』が参考になると良いなと思っています。このアルバムを聴いて6弦ベースに興味を持った人には積極的に使って欲しいですね。最初は“ハイC”にとまどうかもしれないけど、慣れてしまえばすごく便利なことが分かると思います。

――要チェックですね。注目といえば、『RISING MOON』のリリースに伴って、2016年2月に全国ツアーが行なわれることも見逃せません。

瀧田：ライブに関しては、まず僕が『RISING MOON』に入っている曲が弾けるように思い出さないといけない（笑）。今回は曲を作りながら録音して、これで良いなと思ったら次に行くという作業を繰り返したんですよ。何回も何回も弾いて…ということはしていないから、覚えていない場所が多いんですよ。なので、まずは思い出す作業をして、ツアーに備えます（笑）。ライブは、ベースのことがあまり分からない人にも楽しんでもらえるものにしたいですね。実は『RISING MOON』は、ライブも想定しながら作ったんですよ。GRANRODEOのライブに来てくれているお客さんとか、昔からArk Stormとかが好きで来てくれているお客さんとかが楽しんでもらえるようにハードロックを軸にしたので、違和感はないと思います。それに、こんな曲もやっちゃうんだ…というような曲もやろうと思っているし、テクニックの観どころも沢山あるし。インストに慣れていない人も観飽きないライブにしようと思っているので、楽しみにしていてください。

取材・文●村上孝之




◆インタビュー（１）へ戻る