【インタビュー】ジェシカ・ウルフ、大地に根を張ってすくっと立ち上がる力強さに満ちた『GROUNDED』

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■自分像を型にはめて知らず知らずのうちにプレッシャーを受けながら生きている人が多いと思う
■でも自分を解放しなきゃいけないポイントもある。それを感じてほしいのが「GROUNDED」


――楽曲は共作をされていますが、どういう風に作り上げているんですか?

ジェシカ:いつも共作というスタイルで作ることが多いんですが、メロディを作るのが得意な人を見つけて、その人にメロディや詞の一部分を作ってもらうことが多いですね。フィンランド、スウェーデン、ニューヨークと、いろんな場所、いろんな人と一緒に仕事をしているけど、どの国のミュージシャンとも制作をうまく行うことが出来ています。例えばタイトル曲の「GROUNDED」「ARROW」「SAVING SOMEONE ELSE」は、ニューヨークのクリエイター達と一緒に作ったんです。たまたま友人の結婚式に出席するためにニューヨークに行くことになったから、だったら何か仕事をしたいなと思って、あらかじめソングライティングのセッションを一緒にやる人を決めて行ったんです。でも、その前日にセッション自体がキャンセルになってしまって。それでも諦められなかったから、紹介の紹介の紹介という感じで、ミュージシャンを集めて。初めて会うミュージシャンたちだったのに、すごく生産性の高いセッションになったんです。


――すごいですね。特に「GROUNDED」はアルバムの中でも芯になるべき大切な曲だと思うんですが、初対面のミュージシャンたちとのセッションで、よくぞジェシカさんのイメージ通りの世界観を表現しましたね。初対面同士ということで、逆に新鮮な刺激が作用したんでしょうか?

ジェシカ:「GROUNDED」という曲自体は2013年の<SUMMER SONIC>以来、歌詞が完成していて、作品はずっと自分の中にあったんだけど、ニューヨークのミュージシャン達に会った瞬間、彼らのスタイルがすごく気に入って「この人たちとなら、あの曲を作れるかも!?」と思って、「GROUNDED」の歌詞を出してみたの。まず、自分の頭に浮かんでいた映像、詞を書いた時の背景や感情をストーリーや色で伝えて。才能豊かな人たちなので、彼らの自由裁量で仕事をしてもらえる部分も残したいと思っていたから、そこから彼らに任せて。だから、アイデアは半分半分。私のイメージを聞いたら、彼らは「じゃあ、こんな感じかな?」と、演奏してくれて出来たのが最初のデモ。原稿でいえば第一稿的な感じかな? その後、フィンランドに戻って、プロデューサーのヨナス・オルソンと一緒にファイナルヴァージョンを作ったんだけど、ニューヨークで制作したものとファイナルヴァージョンはほとんど変わっていないんです。


――ミュージシャンにしろプロデューサーにしろ、イメージを伝えただけで、音楽を共通言語として同じヴィジョンを表現出来るというのは素晴らしいことですね。「GROUNDED」は英語がわからなくても、大地に根を張って、すくっと立ち上がるような力強さが感じられるサウンドだと思います。

ジェシカ:そう! まさにそれが私の伝えたかったヴィジョン! ミュージシャンやプロデューサーとミーティングをする中で必ず出ていたのは、「世界観が3Dになって立ち上がってくるようなサウンドを作りたい」っていうことだったんです。言葉が通じない人にもイメージが伝わって、極端なことをいえば、リードヴォーカルを取り除いた状態でもヴィジョンが伝わるような歌にしたかったので、その感想はすごく嬉しい。

――歌詞を読み込んでも共感する人がたくさんいそうなメッセージですしね。

ジェシカ:現代を生きているみんなに共通することなのかもしれないけど、いつも良い自分でなければならない、こうならねばならない、Facebookでもかっこよく……って、自分像を型にはめて知らず知らずのうちにプレッシャーを受けながら生きている人が多いと思うの。でも、どこかしらで型にはまった自分を解放しなきゃいけないポイントもあると思う。そういう共通の思いを感じてもらえると嬉しいです。

――曲順はこの「GROUNDED」を真ん中にして流れが練られているような印象を受けますね。

ジェシカ:曲順は全体的に物語性を持たせながら配置していきました。「RECKLESS」は先ほど話したように、ドジな私の自己紹介(笑)。「ジャジャーン!」と現れたようなイメージのイントロ的な歌。調子のいい大人の女という感じで登場しつつ、2曲目の「CHASE ME DOWN」でうっかり恋に落ちたら、ちょっと不安になっちゃったり。「WAR」は、たまたまフロリダで喧嘩に巻き込まれたことがあったので、その時の実体験を元に書きました。そこからまた、アルバムは後半に入っていきます。全体的な流れが赤い糸のように繋がっていて、サウンド的にも聞いていて心地良い順番というのは考えましたね。

――前作からもストーリーは繋がっているような気がしますね。

ジェシカ:そう。実際に繋がっています。『RENEGADE』は「反逆」っていう意味があって、『GROUNDED』は「外出禁止!」って言う時にも使うんだけど、反逆したから「もういい加減にしなさい!外出禁止!」って言われてるのかも(笑)。

――ストーリーは次回作にも続いて行くのでしょうか?

ジェシカ:その答えは未来の自分しか知らないことかな。今、経験していることからまた何かが生まれて行くかもしれないし、それは次回作が完成するまでのお楽しみ!

取材・文●大橋美貴子

『GROUNDED』

KICP-1745 ¥2,600+税
1.RECKLESS レックレス
2.CHASE ME DOWN チェイス・ミー・タウン
3.PLAYING FOR KEEPS  プレイング・フォー・キープス
4.WAR  ウォー
5.UNDER YOUR SPELL アンダー・ユア・スペル
6.GROUNDED グラウンデッド
7.ARROW  アロウ
8.SAVING SOMEONE ELSE  セイヴィング・サムワン・エルス
9.ROOTS ルーツ
10.MAGIC CASTLE マジック・キャッスル
11.LOVE ME LIKE YOU NEVER DID BEFOREラヴ・ミー・ライク・ユー・ネヴァー・ディド・ビフォー


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