【インタビュー後編】高橋和也、アメリカ放浪の旅とカントリー音楽への想いを語る
ザ・ローリング・ストーンズの秘蔵ライヴ映像シリーズ“From The Vault”の第4弾となる映像作品/CD『ストーンズ・ライヴ・アット・ザ・トーキョー・ドーム1990』発売を記念した高橋和也へのインタビュー、前編では高橋のストーンズとロック全般への傾倒について語ってもらったが、今回はアメリカン・ルーツの探訪、そしてカントリー・ミュージックへの魂の帰郷について、さらにディープに掘り下げてもらった。
◆高橋和也画像
インタビューは高橋和也の両親が経営するバー/ライブハウス『マローネ』で行われ、日本人唯一のストーンズ公認フォトグラファーである有賀幹夫が撮影を行った。
──1993年の男闘呼組解散後、どんな音楽活動をしてきましたか?
高橋和也:俳優としての修行をするために、アメリカに行ったんです。ロサンゼルス、ニューヨーク、カナダのトロントとかにね。ショーン・ペンやリチャード・ギア、スーザン・サランドン、ティム・ロビンス、アン・バンクロフト、メル・ブルックスなど、本場のエンタテイナーに会う機会があって、すごく勉強になりました。それに本場のライヴを毎晩のように観に行っていましたよ。トロントでは地元のミュージシャンが歌う曲が気に入って、3日間ホテルに籠もってギターで練習したんですが、実はそれがロバート・ジョンソンの「カム・イントゥ・マイ・キッチン」というブルースの名曲でした。「キッチンで待ってるよ」って日本語の歌詞も書いたんですよ。さらにエリック・クラプトンの「ワンダフル・トゥナイト」に「君は素敵さ」って日本語歌詞をつけたり…日本人は僕一人だったから、日本語に飢えていたのかも知れませんね。
──アメリカではどんな音楽に触れてきましたか?
高橋和也:あらゆる音楽に触れました。アメリカ大陸を横断したくなって、ニューヨークからロサンゼルスまでアムトラックの列車で2週間ぐらいかけて旅したんです。一人でギターを持ってオハイオ、シカゴ、ニューオリンズ、フェニックス…列車の中でギターを弾いていると、車掌さんに「そんな所で弾いてないで、こっちに来い」って食堂車に連れてこられて、そこで演奏したり、シカゴでもストリートで歌ったり、いろんな経験をしました。ニューオリンズのバーボン・ストリートでは濃いブルースをやっている店があって、メム・シャノンっていう最高にかっこいいギタリストを見たんです。彼は昼間はタクシー運転手をしていて、ピンクのキャディラックで流していて、夜になるとクラブでやるんです。あまりにかっこ良くて、毎晩クラブでかぶりつきで見てたら、「お前はどこから来た?」と話しかけてきました。ものすごく可愛がってくれて、彼がやっていた「ブルースマン」という曲を題材にして、「魂」というオリジナル曲を書いたりもしました。
──1995年、日本に帰国してからの音楽活動は、どんなものでしたか?
高橋和也:最初に結成したのがKazuya AND ROCK FOLKというバンドでした。フォーク・ロックがあるのに何でロック・フォークはないんだって、ちょっとヒネクレたバンド名ですけど、“ロックな仲間たち”という意味もあって、アメリカン・ルーツ・ミュージックを受けた自分のオリジナルな音楽をやっていました。映画『KAMIKAZE TAXI』(1995)に出たことで一気に俳優業が忙しくなったけど、自分がミュージシャンだということは忘れたことがないです。ナーバス・サーカスというバンドも10年ぐらいやったし、親父の店『マローネ』でやったり、あちこちのライブハウスでライヴを行っていますよ。
──近年ではカントリー路線を歩んでいて、日本におけるハンク・ウィリアムスの伝道師的なポジションにいますね。
高橋和也:親父の影響で、生まれたときからずっとカントリーを聴いて育ったから、身体に染みこんでいるんです。親父のカントリー・バー『マローネ』のオープンが1969年だから、僕が生まれたのと同じ年。子供の頃からハンク・ウィリアムスやマール・ハガード、ジョージ・ジョーンズ、あるいはジョージ・ストレイトを聴かされてきました。で、40歳になった頃、親父がカントリー屋でカウボーイだというのに、自分がカントリーの1曲も歌えないのも恥ずかしいと思って、親父のレコードを聴くようになりました。その中に『ハンク・ウィリアムス全集』の10枚組LPがあったんです。
──ハンク・ウィリアムスの魅力は?
高橋和也:ハンクはわずか7年のレコーディング・キャリアで、アメリカの田舎でしか聴かれていなかったカントリーを世界規模に広げたミュージシャンでした。ある意味、エルヴィス・プレスリーよりも革命的な存在といえるかも知れません。世界のどこのカントリー・バーに行っても、ハンクの曲はみんな知っているし、セッションをすることが出来ます。数多くの一流ミュージシャンが彼から多大な影響を受けています。キースもハンクの大ファンで、「ユー・ウィン・アゲイン」をカヴァーしていますね。僕は『ハンク・ウィリアムス物語』という芝居で主演・脚本を担当したり、鎌倉FMの『おやじのカントリー』という番組で、1時間ぶっ続けでハンク・ウィリアムスをかけるコーナーをやったり、みんなにその魅力を知ってもらおうとしています。
──ハンクは息子のハンク・ジュニア、孫のハンクIII世と、ミュージシャンの家系ですが、お父上の影響でハンクを歌うようになった高橋さんとしては、自分のお子様にも伝えていきたいのでは?
高橋和也:僕が家でいつも歌っているし、うちの子供もみんなハンク・ウィリアムスが好きですよ。カントリーはファミリーで楽しむ音楽なんです。カントリー歌手は世界中を家族と一緒に旅して回るし、子供たちは小さい頃から音楽に囲まれている。歌うことが当たり前という環境なんです。我が家でも子供たちはみんなちっちゃなギターを持っているし、お風呂でもトイレでも歌っていますよ。プロのカントリー歌手になるかはともかく、一緒に歌うのが最高に楽しいですね。
●高橋和也スケジュール
2016年1月~NHK次期大河ドラマ「真田丸」出演
2016年 舞台「オーファンズ」
2/10~21 東京芸術劇場シアターウエスト
2/27~28 新神戸オリエンタル劇場
◆高橋和也オフィシャルサイト
◆ローリング・ストーンズ - ライヴ・アット・ザ・トーキョー・ドーム 1990・サイト