【インタビュー】柴田淳、15周年記念 アーティストとしての軌跡を辿る 前編
最近は「日本一暗い歌手」としてバラエティーに出演し、その人柄にも注目が集まる柴田淳。そんな中、新たに彼女を知った人にぜひとも聞いていただきたいベストアルバム『All Time Request Best』が11月25日にリリースされる。たまたまテレビで彼女を知った人も、この作品を聴けば、柴田淳というシンガーソングライターの音楽に対する熱量、歌い手としての凄まじいまでの表現力に圧倒されるだろう。BARKSでは、このベスト盤のリリースを期に、デビューから15周年の今だからこそ、改めて彼女のアーティストとしての軌跡を辿るインタビューを2回に渡ってお送りする。第1回目の今回は、柴田淳が作り手としてこだわってきたものや、音楽制作の原点を振り返る。
◆柴田淳~画像&映像~
■曲を書いた時に苦悩していないと頑張っていないっていう感覚になっちゃうんです
■サラッと作った簡単なメロディのものは手を抜いてる感覚になって却下しちゃう
――最近はバラエティー番組にも出演されましたね。
柴田淳(以下、柴田):はい。2015年は音楽活動を一切していないのに、テレビに出演して違う世界が現れて、休むはずだったのにいつもよりも忙しい1年だったんです。その結果、新たに柴田淳を知ってくれた人もいて。そういう方が、Twitterのフォロワーだけでも15000人いるんです。
――すごい!
柴田:実はこれまで、私やスタッフ、ファンの人も含めて、柴田淳の音楽を届けたいけど、「届けたい!」と思うところまでなかなか届かないということでずっと悔しい思いをしてきたんです。だから、ファンの人も私も、きっかけはどうであれ、まずは柴田淳を知ってもらいたいと思っていたんですね。きっかけさえもらえるなら、出られるところには出たほうがいいって。そういうこともあって音楽番組ではなかったけど、テレビに出たんです。
――なるほど。
柴田:私の音楽を知ってもらった上で受け入れられないのであれば、それは仕方のないことです。でも、柴田淳を「知らない」という理由で受け入れられず評価もされないというのは、すごく悔しい。まだ土俵にも上がっていないのに評価されたくないですしね。バラエティーに出演させていただいた時は、「日本一暗い歌手、柴田淳」って紹介されているんですけど、「日本一暗い歌手? どんな歌を唄っているの?」ってまずは曲を聴いてもらえばどういう世界なのかがわかるから、知ってもらう良い機会だったと思います。
――そんなタイミングで『All Time Request Best~しばづくし~』がリリースされますね。リスナーからリクエストを募って、そこから柴田さんが選曲した楽曲で構成したそうですが。
柴田:今作は新たに私を知ってくれた方にも聴いてもらいたいと思ったんです。「どんな人なんだろう?」って私に興味を持って手にとってくださった方々にとって、マニアックな内容だけだったらそれで終わってしまうんじゃないかと思って。だから、リクエストも募った上で、ファンの皆さんの意見も参考にさせてもらって、私の中でのメジャー級の楽曲を加えて一つの作品にしました。ファンの皆さんがリクエストしてくれたものを集計したら、すごく面白かったんですよ。ライヴでもやったことがないような、ラジオでも流したことがないんじゃないかっていう楽曲が上位に入っていたりして。そういうのは見逃せないし、すごく面白いんですけど、そういう曲ばかりだと、相当マニアックなベストアルバムになってしまうなぁと。
――確かに。そういう楽曲を挙げてくる方は、相当ディープに長年、柴田淳の音楽を聴きこんでいる方ですもんね。
柴田:そうなんです。そういう曲を選ぶにあたっては、長い時間がかかってますよね。そういう楽曲もありつつ、大衆的であり、ファンの皆さんも「異議なし!」っていう楽曲もセレクトしたんです。
――「日本一暗い歌手、柴田淳」が楽曲制作をする際にモチベーションとしているものはなんですか?
柴田:私自身、何事も筋の通らないことが嫌いなんです。でも、私の育った環境では、筋が通らないことも多くて。だからこそ、曲を作るとどんどん精神世界に入って行けたんです。ハッピーな気持ちだったとしても、一人になると、気持ちってメジャーかマイナーかって言えば、マイナーモードになりません? 気持ちがおとなしくなるっていうか。
――その時にもよりますけど、一人になるとウジウジすることはありますね。
柴田:そうですよね。昔のことを思い出しちゃったりして。一人の世界に入っていくと、気持ちが落ちていく傾向にみんなあるんじゃないかなと思って。私はその状態で曲を書きます。そういう状態じゃない、「今、超楽しい!」っていうときに曲を作ったとしても、手を抜いているように感じちゃうんです。これは全曲に言えるんですけど。曲を書いた時に苦悩していないと頑張っていないっていう感覚になっちゃうんですよ。サラッと作った簡単なメロディのものほど、大衆ウケしてヒットするのに、「これ、どこにでもあるなぁ。簡単に作れちゃったし」って、手を抜いてる感覚になって却下しちゃったり。それで、歌詞の世界もそうなんだけど、上っ面な言葉だけだったらダメだから、そこでフックになるような、何かドキッとするような言葉を入れなきゃっていうポリシーでいつも書いています。精神世界に入らない状態で作った曲たちは上っ面な曲に思えてしまう。
――へぇ~。
柴田:そういう曲って、思い入れもあまりないんですよ。「これってただの鼻歌じゃん。こんなのを曲にしたらファンを冒涜してるし、ナメてるよ」とか思っちゃうんです。なんでもかんでも、自分の手応えというのは苦しまないと感じられない。
――「苦しむ」というところが制作において重要なんですね。
柴田:そう。一人になってディープになった時に、今までの自分の人生の中で抱えてきたもの……本来は隠しているものなんですけど……それをさらけ出すことで、勇気を出しますよね。「これを聴いたらみんな引くかな? 怖いって思うかな?」って考えるんですよ。きっと、女優さんがヌードになる瞬間もこうなのかなって。大胆に露出した時の感覚は、ある種の手応えなんですよね。さらけ出したからって凄いっていうことではないんだけど、でも、心から裸になるという勇気は大きいから。
――「手応え=脱いだ」っていう感覚なんですね。
柴田:そうです。あとは、フィクションを書ける人って本当の才能がある人だと思うんです。それが本当のプロだと思う。でも、私自身が創作するとしたら、嘘をついてるって感じちゃう。そうやって挑戦しフィクションを書いてみても、本当のプロと言えるものが書けていると思えなかったから。
――「リアル」というところにも手応えを感じている?
柴田:その通りです。人の歌を書くことはできるんですけど、そこにもやはり「リアル」を入れるんです。フィクションを歌うなら私じゃなくてもいいし、私が歌う意味がないから書かなかったりもするし、書けない。いつも思うことは、どんな形でもいいから私の曲を聴いた時にハッとさせたい、ドキッとさせたい、スピーカーを振り向かせたい。何か人の心に触れるような刺激のあるものにしたいって思ったら、私はフィクションで刺激物を作る才能はないんです。だったら、私はヘアヌードを出すことで、「オォ~~ッ!」って注目させることしかできないのかもしれない。そう考えたら、“私は才能がないただの露出狂なんじゃないか?”とも思うんです。
◆インタビュー(2)へ
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