【インタビュー】Full Of Harmony「日本人のためのR&Bをこれからも磨き続け高らかに鳴らしていく」
フル・オブ・ハーモニー。言うまでもなく彼等は日本でR&B/ヒップホップが一大勢力となった2000年代以降、「日本のR&B」のひとつの定型をつくったR&B界のパイオニアである。そんな彼等がメジャー・デビュー15周年を期に、新曲「DREAMER」を含むCD+DVDからなるベスト・アルバムをリリースした。ここに至るまでの歩みと、これから向かう先を日本のR&Bを切り口に大いに語ってもらった。
◆Full Of Harmony~画像~
胸を熱くさせるロマンと全身をせり上がる美しき昂ぶり。Full Of Harmony(以下F.O.H)の新曲「DREAMER」は、そんな情感を抱かせる渾身の一曲だ。作詞はYUTAKAが担当。シーンに衝撃を与えたデビュー曲「BE ALRIGHT」の一節を盛り込む粋な遊び心を見せつつ、デビューから15年を経て、なおも新たな世界へ突き進んでいこうとする野心が力強く歌われている。
この曲は、彼らの15年間の軌跡をCDとDVDで集大成するキャリア初のアンソロジー作品『Last Best To The Future』のために制作されたもの。当初は「新曲はどんな曲が相応しいのか、俺らの中でも迷いがあった」(ARATA)そうだが、「だったら、今のタイミングで僕らが好きなことをやったほうがいいんじゃないか」(ARATA)と決意。R&Bの王道といえる、実にオーセンティックな三連のスロウナンバーを作りあげた。どっしりとした風格を備え、タイムレスな輝きを放つ曲調からは、彼らの気骨と矜持がひしひしと伝わってくる。
「『DREAMER』のデモを最初に聴いたとき、震えたんです。そこに正直にいたかっただけ。あと、見えたんですよね、3人で歌ってる姿が。今の世の中で聞こえてくる音楽には、正直、あまり大差を感じないから飽きてる。そんな中だからこそ自分たちの個性が見えてきた。自分たちが結成した頃に聴いて興奮していた曲。それは何かと言えば、心が震える、魂が叫ぶソウルミュージックだった。そこに立ち返るのがいいんじゃないかと思ったんです」(HIRO)
「ファンの意見を聞いていると、F.O.HにはコテコテのR&Bをもう一度やって欲しいっていう声が多かったし、俺も濃いものが作りたくなってきて。今回でベストは最後。ここが区切り。ここからはすべて粒揃いの曲を作っていこうと。だったらもう、自分たちが思うかっこいいを追求していくべきじゃないかと思ったんです」(YUTAKA)
F.O.Hが産声をあげた1997年当時、すでにメジャーデビューしていたソウルグループは、ゴスペラーズとSKOOP(現Skoop On Somebody)くらい。前者はドゥワップをルーツに持ち、後者は自作自演型のバンド形態。F.O.Hのようなヒップホップ的な感性と感覚を持つグループは皆無だった。そんな彼らが手本にしていたのは、90年代にR&Bの新しい扉を開けたヴォーカルグループ、ジョデシィ。優等生的なボーイズIIメンとは対象的に、野生味あふれるパフォーマンスで魅せる彼らに夢中になった。
スーツじゃなくてジーンズ。髭と帽子とサングラス。美麗なコーラスを響かせながら、醸し出す雰囲気はワイルド。ラッパーのような身なりでダンスを繰り出したりもするが歌も抜群に上手い。ラッパーとのコラボレーションは朝飯前。ラップのフロウのような歌い方もこなす……そうしたスタイル/スタンスを持つR&Bアクトは現在の日本のシーンで珍しくないが、その先鞭をつけたのは間違いなくF.O.H。日本でR&B/ヒップホップが一大勢力となった2000年代以降、「日本のR&B」のひとつの定型をつくったのが彼らだと言っても過言ではない。それが、彼らが日本のR&B界のパイオニアといわれるゆえんだ。
しかし、そんな彼らにも自分たちの音楽性を見直す転機が訪れる。2006年から2007年にかけて、彼らは自分たちのルーツを再確認するため、本場アメリカのアーティストたちと楽曲作りを行う「R&B探求の旅」に出掛けた。ニューヨークではNe-Yoと「BRAND NEW DAY」を作り、ロサンゼルスではジェイZなどを手掛けるジミ・ケンドリクスらと「SWEET NOVEMBER」を制作。最後はアトランタで、彼らが最も敬愛するテディ・ライリーと「G.O.O.D TIMES feat. Teddy Riley」をつくりあげた。このときの経験をYUTAKAはこう振り返る。
「ボコボコにやられたっていう感じしかないんです。やっぱり世界はすげえと。でも、逆に言うと、日本人でできるR&Bをより一層考えないといけないなと思ったんです。バックグラウンドが全然違うから、追いつくとか追い越すとか、そういう問題じゃない。自分たちが持ってる声で、持ってる技術で、自分たちができるR&Bをやっていかないとなって思いましたね」(YUTAKA)
彼らの道程のもうひとつのターニングポイントは、HIROがMIHIROとして2009年からソロ活動を始めたこと。MIHIROはFull Of Harmonyを「実家」、ソロ活動を「ひとり暮らし」と例え、「僕の足元にはFull Of Harmonyの一員としてのHIROがいることを忘れないように」活動してきたそうだが、MIHIROの活動が精力的になればなるほど、グループの活動はペースダウン。そんな中、解散の話も出たのだという。それを思いとどめたのはスタッフの中にF.O.Hに対する熱い思いをぶつけてきた人間がいたからだった。
「『なんで解散する意味があるんですか?』って言われたんです。『解散して何か得なことがあるんですか?』と。僕らはデビュー当時からF.O.Hを見てきて、F.O.Hが大好きなんだと。MIHIROさんはMIHIROさん、でも僕らはF.O.Hが見たいんだって。Sugar Shackの後輩メンバーからも『僕らはF.O.Hに憧れて音楽を始めたんですよ』と聞いて、わりと求められてんだな、みたいな。やっと自分たちのやってきたことに気付いた」(ARATA)
「パイオニアって言われることが、今まではちょっと重たかったんです。日本にR&Bヴォーカルグループが少なかった頃から活動をしていたけれど、同時期にみんなで切磋琢磨してやってきたから。でも、そのなかの1組と数えてもいいんじゃないかなっていう自負は生まれてきた。逆に今、その意識を持ってなきゃいけないかなって。自分たちが見てきたものを後輩だったり、Sugar Shackの若いヤツらにちゃんと伝えていければいいなと思う」(YUTAKA)
そんな彼らが考えるFull Of Harmonyらしさ、とは何なのか。
「ストリート感とかヒップホップとのコラボレーション。そういう匂いのするグループっていうのがF.O.Hなんじゃないかな。自分たちでもヒップホップを採り入れたし、それまでのR&Bのルールっていうのを崩してきたと思うから」(ARATA)
「向こうのR&Bを追いすぎず、追わなさすぎずっていうところかなと。F.O.Hには、F.O.Hにしか出せない音があると思うんです。それはそういう姿勢から生まれてるんじゃないかと思う」(YUTAKA)
「ブラックミュージックがとことん大好きな日本人ってことだと思いますね。日本人ということで、僕は“R&B”って言わないんです。“日本語R&B”と言う。そこにはこだわってるんです。日本人だからトライできること、しなきゃいけないこと。それを考えさせられた15年だと思う」(HIRO)
つまりそれは、日本人の、日本人による、日本人のためのR&Bということ。それをこれからも磨き続け、高らかに鳴らしていく。そんな思いが今回のベストアルバムのタイトルにある“To The Future”という言葉に込められている。
「あとはもう未来しか見てないよっていう気持ちの表れです。アルバムのタイトルを発表したとき、Lastとついてるから、『解散っていうことですか?』みたいなファンはいたんです。でも、そこで俺はしっかり返しときましたから。『安心してください。履いて……いや、歌い続けますよ』って(笑)」(YUTAKA)「各自がいろいろソロ活動をやってるけど、“実家”は守っていきたいなと強く思ってます。みんなが帰省できる場所があるように」(ARATA)
「音楽が音を楽しむ場に最近さらになってきてるんです。正直、昔より楽しい。だから、この楽しさのゴールがどこにあるのか見たいんです。音を楽しむことで自分が、何かが本当にハッピーになれるのか。それをこの3人でどんどん追求していきたいですね」(HIRO)
TEXT●猪又孝
『Last Best To The Future』
CD+DVD
VIZL-889 3,700円(+税)
-CD-
Full Of Harmony Soundings 2015 (DREAMER) to 2000 ⇒ 2008
1. DREAMER (new recording)
2. handle / DOUBLE feat. F.O.H
3. Magic
4. JOY
5. Do dance
6. It makes the world go around
7. 音色
8. Through the GATE
9. Sweet home featuring マボロシ
10. another world
11. SUPERSTAR
12. KABUKI道
13. AROMA
14. はなびら
15. 光
-DVD-
Full Of Harmony Music Videos 2015 ⇒ 1999
1. DREAMER (new recording)
2. 君のうた
3. Over again”
4. G.O.O.D TIMES featuring Teddy Riley
5. SWEET NOVEMBER
6. BRAND NEW DAY
7. YOU & I
8.PARTY TIME
9. UTAKATA
10. 涙の数だけ
11. Rhythm
12. Exclusive
13. Summer Gorgeous
14. I Believe
15. Life Story
16. SEXY WORLD
17. さよならが言えなくて
18. JUICY
19.Wishing A Special Christmas To You featuring Miwa Yoshida
20. Typhoon
21. TAKE IT SLOW
22. BE ALRIGHT
23. END ROLL
【配信情報】
曲目を一部変更したCDサイドはレコチョク、iTunes、他主要サイトでも絶賛配信中
iTunes:https://itunes.apple.com/jp/artist/id113874310?app=itunes&ls=1
レコチョク:http://recochoku.jp/artist/2000009459/mora:http://mora.jp/artist/16319/all
新曲「DREAMER」ハイレゾ商品はコチラ
HD-Music.:http://hd-music.info/album.cgi/7312
e-onkyo:http://www.e-onkyo.com/music/album/ve5hd20108/
mora(ハイレゾ):http://mora.jp/package/43000005/VE5HD-20108_F/
ライブ・イベント情報
【日程】12月25日(金)
【会場】日本橋三井ホール (東京都)
【出演】Full Of Harmony/LL BROTHERS/JAY'ED/LEO/HI-D/CIMBA/Lugz&Jera /MIHIRO~マイロ~ and more!!!
【チケット】全席指定:\4,500
※ドリンク代別
※未就学児童入場不可
<アーティスト先行受付専用URL>
http://eplus.jp/sugarshack-as/
(~11/15(日)23:59まで受付)
【問い合わせ】
キョードー東京
0570-550-799
(平日11:00~18:00)
(土・日・祝日10:00~18:00)
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