【ライブレポート】玉置浩二「愛がふるさとであり、心がふるさとなんだ」
玉置浩二が、6月から9月にかけて全国ツアー<玉置浩二~故郷楽団~Concert Tour 2015>を行なった。
◆玉置浩二 ライブ画像
オフィシャルから届いた、9月6日東京・東京国際フォーラム ホールC公演のレポートを掲載する。
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2015年に入り、自身初となるフルオーケストラとの共演によるコンサートツアーや安全地帯での音楽フェス出演など、様々なスタイルで精力的にライブ活動を重ねている玉置浩二。「今は毎日でも歌っていたい」と語る彼は、交響楽団との全国ツアー終了後休む間もなく、翌週から新たな全国ツアーへ出た。
ツアータイトルは<故郷楽団>。北海道・中標津町から始まり、玉置の出身地・旭川で終了するこのツアーでは、玉置が田園風景の中で見てきた純粋で一途な郷愁がテーマとなった。
ツアー終盤の9月6日。この日で3日連続となる東京国際フォーラムC公演最終日。ステージで放たれる全てを記録すべく、WOWOWの映像収録カメラが入った。高まるばかりのツアーへの賞賛の声を胸に抱き留め、固唾を飲んで開演を待つ満場のオーディエンス。定刻を少し過ぎ、バンドメンバーが連れ立って舞台に登場した。
静かな、それでいて胸に残るインストゥルメンタルが演奏される。1993年に発表された2nd アルバムの1曲目、アルバムタイトル曲「あこがれ」だ。バンドが奏でるメロディーが、ひとりひとりの故郷を照らす。ツアーのテーマである“郷愁”が冒頭で提示される。それぞれの心の奥底にある大切な何かが浮かび上がる。
やがて、ゆっくりと玉置がステージに現れると大きな拍手が沸き上がり、その後会場がほんの一瞬、静寂に包まれる。ギターを爪弾き、バンドが音を重ねていく。彼は、そっと呟く様に歌い出す。麦わら、赤とんぼ、土手。さよなら、じいちゃん。歌われたのは、3rd アルバム『カリント工場の煙突の上に』収録曲「花咲く土手に」だった。
発表当時、玉置が思い描いた風景がそのままに伝わってくる。歌い出して1分も経たずに、ひとりひとりの心は故郷に還る。町で暮らす人々の生活や日々、そしてその喧噪の中で生まれ育った自分。観衆がそれぞれの記憶に想いを馳せていく。“生きること”への深い共感が、確実にそこに芽生えていく。
「花咲く土手に」を歌い終えギターを持ち変えて、静かに微笑みをたたえる玉置。場内には拍手が鳴り響く。続いて、キーボードのイントロが拍手に連なる。代表曲のひとつである「カリント工場の煙突の上に」だ。この2曲の流れは、アルバム収録順と同じ。今回のツアーで彼が描こうとしている情景が、より色濃く伝わってくる。そう感じた。
続いて3曲目に披露されたのは、1987年に発表されたソロデビューシングル「All I Do」。玉置が大事にしている“最初の気持ち”が改めて表明される。彼のヴォーカルと故郷楽団が奏でる音だけが会場を優しく包む。そして、ほんの僅かなMC。彼はユーモアを交えながら、オーディエンスの心を解きほぐしていった。
その後も、彼がその想いを込めた楽曲たちが丁寧に歌い紡がれる。ほぐれた心に、歌が浸みわたる。作品によっては制作時期に20年以上の隔たりがあるが、それでも込められたメッセージはひとつだった。温かみのある故郷楽団の演奏が、玉置の歌にそっと寄り添っていく。
メンバー紹介の後、玉置が客席に語りかける。「諸先輩方、こんな僕でも慕ってくれる後輩のミュージシャン、たくさんのスタッフ。みんなの力があって歌えているんだ、独りで歌っているんじゃないんだなと実感しています。何より、皆さんの素晴らしい人生の力に僕の歌がなれるなら、これからも精進を重ねます」この日、これ以上の言葉は不要だった。
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