【インタビュー】リリィ、さよなら。、悲しみや痛みの歌詞とポップで人懐こいメロディが一体となった2ndミニアルバム『ハッピーエンドで会いましょう』
今作のアレンジは前作に続き池窪浩一。前作以上にヒロキ感情の起伏をアレンジで表現し、サウンドのダイナミズムは増している。J-POPリスナーだけでなくロックリスナーでも楽しめる、シンガーソングライターらしい幅広いサウンドになった。琴線に触れる切ないメロディと、それを歌いこなすヒロキの歌唱力も光る。
「前作は楽曲のさわりや僕のパッと見のキャラクターに合うような、綺麗にまとまったサウンドになっていたんですけど……こいつはそんなやつじゃないと池窪さんもお気づきになったんでしょうね(笑)。やっぱり前作は名刺代わりだったので、ちゃんと世界を作り上げるような作品だったんですけど、今回はガンガン攻めました。メロディは“こういう取り方をしたら気持ちいいな”と感覚的に書いていって。歌に関しては表現力もヴォーカリストとして成長できて。いろんな聴き方ができる、ヴァリエーションに富んだアルバムだと思います」
彼が生々しい実体験を歌うことで聴く人も同じような経験を思い出すことも少なくないが、そのなかでも「君がいなくなっても」はより多くの人に当てはまるであろう描写が特徴的な曲。大切な人がいなくなっても案外生活はできるものだけど、でも心がからっぽになっている、そんな心情が切々と綴られている。今作で最も共感性が高そうだ。
「これは電車の名前が出てきたりとか、あんまり具体的な描写がないから。現代人の生活を漠然と歌っているので、そう言っていただけるとうれしいです。Twitterでも「これ聴いてるだけで病む」ってつぶやきを見つけました(笑)。ほとんど詞を朗読しているような曲なので、歌詞を聴いてもらってなんぼだと思ったので余計なサウンドは要らねえ! と思って弾き語りを入れました。感情の起伏だったり、ライヴで聴いたらいちばん鬼気迫ってる曲なんじゃないかな。この曲はぜひライヴで聴いてほしいですね」
今作は「君がいなくなっても」や「フラッシュバック」のようにライヴでおなじみの曲も多く、ファンの方々には待望の音源化の楽曲も多い。ピアノの入った壮大なバンドサウンドが印象的なM3「未送信のラブソング」も同様だ。
「もともとYouTubeに公開していた【未送信~】はピアノ弾き語りでもっとずっとバラード調だったんですけど、最初からずっとサビで歪んだギターを入れたりしたいというイメージがあって、それが今回ようやく形になりました。このCDに入っているヴァージョンを最初に聴いた人にもかっこいいと思えるサウンドになっていると思うし、昔から聴いていただいている人には“あ、こうしたかったんだね”“こんな感じになるんだ”と楽しんでいただけるものになったと思います」
『ハッピーエンドで会いましょう』はiTunes Storeにおいて予約注文(プレオーダー)も行った。その特典として収録されたボーナストラック「流星群の降る丘で」はリアリティのある描写ではあるが、リリィ、さよなら。の楽曲のなかでも珍しくファンタジー要素の強いものである。ストリングスと和メロがノスタルジックだ。この楽曲の舞台は自身の故郷である熊本だという。
「地元の熊本は帰るたびにお店が入れ替わっていたり、全然建物が変わっていたり……目まぐるしいんですよね。切なくなっちゃいますよね。自分を育ててくれた景色がどんどん変わっていく、どんどん知らない街になっていくんです。歌詞の通り、花火をして怒られた公園が駐車場になってて……すごくお気に入りの公園だったから、すごくショックでした。上京して初めて帰省したときに書いた曲で、初帰省してすごく変わっていく街の様を見てセンチメンタルになっちゃって。その感傷を書いていきました」
プレオーダー特典なので、現在この楽曲を入手することはできない。今後レア音源になりそうだ。
「これが予約特典なんてもったいない、と思ってもらえたらいいなとちょっと思っていました。ファンの子たちも“これが予約特典? 買ってよかった!”と言ってくれて、うれしかったです」
前作今作とこれまで作ってきた楽曲を中心に作品を構成してきたリリィ、さよなら。現在の楽曲のストックは? と訊くと少々浮かない表情。なんとデビューをしてからめっきり曲を書かなくなってしまったようだ。
「“音楽は仕事だ”と思ったら、ちょっと音楽が嫌になっちゃって……。普段はギターにも布をかぶせてたりして(苦笑)。ライヴの本数が少ないとたくさん曲を書けるんです。でもそれは僕が気付かないうちにライヴで音楽的な要素をものすごくアウトプットしてるんじゃないかなと思うんです。デビュー以降、表に立つ機会が増えて“シンガー”として活動する機会が増えたので、昔みたいに曲を書かなくなっちゃった。でも思っていることは相変わらずたくさんあるので、次回作の話も出ているので、そろそろ書き出します」
そしてこのたび彼の楽曲「フラッシュバック」が“首都圏ラジオ7局スーパープッシュ”に選出された。音楽と親和性の高い民放ラジオ局であるTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送、ラジオ日本、FM YOKOHAMA、NACK5、bayfmの7局が連携してヒット曲を生み出し、音楽業界を活性化するために2013年に立ち上がったプロジェクト。これを機に“セカンド思春期”のリリィワールドがさらに幅広い人々へと波及するだろう。加えて11月12日(木)にはワンマンライブを渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて行うことが決定している。初ワンマン時もかなりナーバスだったようだが、それは今回も同じようだ。だが、成長した部分もある。
「ライヴ前になるとお客さんが来るかな、ちゃんとライヴできるかな……とかいろいろ考えちゃってすごくナーバスになるんですけど、最近ようやく腹をくくれてきたんです。やっぱりツイッターとか公式LINEとかでいろんなメッセージをいただける機会も増えてきて。仕事や学校を休んでわざわざ遠方からライヴに来てくれる子もいて。僕がどんなに疲れていても、歌いたくなくても、悲しくてもボロボロでも、僕のライヴを楽しみに来てくれる子たちがいるんだなということにようやく気付いたんです。僕が調子が悪くても、そのライヴしか来れない子はいるじゃないですか。だからできる限り安定したライヴ・パフォーマンスを毎回毎回……必死にお客様のために歌っていけたらいいな、という気持ちでいます」
状況の変化から心境の変化が生まれ、人のために歌えるようになったリリィ、さよなら。。ファンに向けた楽曲を作る日も近いかもしれない。
「そこまで成長できたら、またアーティストとしてひと皮剥けるんじゃないかなと思いますね。実はこの前僕の母について歌った曲を書いたんですけど、それは今までは作れなかったものなので、少しずつ成長してきたんじゃないかなと思います。僕の成長とともに生まれる曲も成長していくというのは、等身大で詞を書いている僕だからこそだとも思うし。今後も変化を楽しんでいただけるアーティストでいたいですね」
取材・文●沖 さやこ
2ndミニアルバム『ハッピーエンドで会いましょう』
VMAN-004 定価\1,500(税別)
1.フラッシュバック
2.美女も野獣
3.未送信のラブソング
4.時間よとまれ
5.君がいなくなっても
6.恋愛進化論
<iTunes Store>
10/21より、ミニアルバム「ハッピーエンドで会いましょう」配信および、予約注文ダウンロード開始。
<アンドロイドスマホ/PC>
10/21より、ミニアルバム「ハッピーエンドで会いましょう」配信開始。
ライブ・イベント情報
11月12日(木)OPEN18:30 / START19:00
SHIBUYA duo MUSIC EXCHANGE
プレイガイド:チケットぴあ tel.0570-02-9999 http://t.pia.jp/ローソンチケット:http://l-tike.com/
イープラス:http://eplus.jp/
問合せ:HOT STUFF PROMOTION tel.03-5720-9999
◆インタビュー(1)へ戻る