【インタビュー】PENICILLIN、最新シングルで「殺伐とした世界から希望を」

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■うねるグルーヴのゴリゴリした曲を作りたいなと
■速いテンポで押し切るというよりは間合いを楽しむような──千聖

──では、まず「Stranger」について教えてください。イントロからしてソリッドで、キレがあってウエットさもある曲に仕上がっていますが。

HAKUEI:決してテンポが速かったり、激しかったりする派手な楽曲ではないんですが、だからこそ奥深さがあって、曲、歌詞、アレンジがしっかり伝わる曲になっていると思います。

千聖:楽曲自体は映画にインスパイアされたわけではなく、Crack6(千聖のソロプロジェクト)で「Catastrophe 666」を作ったときにヘヴィなグルーヴを出す楽しさをすごく感じたので、PENICILLINでもうねるグルーヴのゴリゴリした曲を作りたいなと思って。速いテンポで押し切るというよりは間合いを楽しむような音にしたかったんです。

──なるほど。ギターリフはヘヴィでメタリックですが、ドッシリとしていますね。

千聖:ギターは裏拍を感じながら間合いをとっていて。ドラムもベースもヴォーカルも同じなんですけど、こういう曲ってライヴでもノリやすいんじゃないかと。イントロの“ダッダッ”っていう部分のギターも、20歳ぐらいの自分なら“ギュイーン”って、ブレイクしてる間に弾いちゃうだろうけど(笑)。そういう意味では『マッドマックス』に通じる泥くささとかスケール感がある曲ですね。

──攻撃的なだけではなく、イントロでポリリズムのピアノが入っていたり、その後もピアノやストリングスが随所に入ってきたりしますが、昭和の歌謡曲をカバーした影響はアレンジにありますか?

O-JIRO:今回はバンド以外の音は本当にほしい箇所にだけ入れているんです。入っているのはピアノとストリングスだけ。少ない分、存在感があるのかもしれないですね。時間がない中で、ミックスダウンのときには「バックトラックをもっとこうしたい」って話し合ったので、聴こえてほしいと思う音は大きくなっています。それと今回、収録されている曲は3曲ともカラーが違うんですが、『マッドマックス』って監督(ジョージ・ミラー)は同じなのに1作ごとに色が異なる気がするんですね。でも、同じ人が作っているから統一感があるし、PENICILLINのあり方もそれに近いのかなって。

千聖:ピアノに関してはJIROさんとプロデューサーの重盛さんが後から入れたんですが、鍵盤が入ることによってHAKUEIさんの歌声の色気が引き立ちましたね。

O-JIRO:「Stranger」はムードが大事な曲なんです。それを補足する役割としてピアノを入れたんですね。

千聖:ムード歌謡をカバーした後だけにね(ミニアルバム『Memories』を20153月リリース)。でも、やっぱりこの曲のテンポ感はやってみて面白かったよね。

O-JIRO:ライヴで初お披露目したときから気持ちよかったです。自分たちが自由に泳げるテンポというか。

──なるほど。歌詞には“100年後の君に 会いに行くから”というフレーズが出てきますが、今を凍結しているという捉え方もできますね。

HAKUEI:そうですね。今に絶望しているというか、自分たちが今、住んでいる世界もモノが溢れているようで、実際にはあるんだかないんだかわからないところがある。映画の荒涼とした世界を今に置き換えて、そんな中で何が信じられるのか、どういうところに希望を持つのか歌詞では表現したつもりです。“愛が見えない世界”、“夢が壊れた世界”っていうのはリアルにそうだと思うんですよね。そういうものが見えづらいというか、目くらましが多すぎる。“100年後”というのは例えで、自分が生きている世界なのか来世なのかわからないけれど、大事なものを想い続けていたら、いつか届くのかなという意味ですね。それをさ迷いながら探しているのがミュージックビデオの映像で、衣装はさ迷う人のイメージです。

──ミュージックビデオでは砂漠をさ迷っていますが、撮影は大変でした?

HAKUEI:大変でしたね。砂浜で撮ったんですが、1年の中で一番暑かったんじゃないかと思うぐらい。

O-JIRO:日陰にいても暑かったですからね。HAKUEIさんとクルーが戻ってきたときに「暑かったでしょ?」なんて軽々しく言ったら怒られそうな(笑)。

HAKUEI:ホントにストレンジャーでしたよ(笑)。立ちくらみしてしゃがみそうになるのをガマンしながら根性でやってた。

──あの迫真の演技はリアルに苦しかったんですね。

HAKUEI:だから、入りこみやすかったです。

千聖:あれは辛そうだよね。

HAKUEI:キャップかぶってる人が、そのまま日焼けの跡になっちゃったぐらいの陽射しで。

千聖:カメラマンの人はメガネの淵部分だけ白くなっちゃって、メガネはずしてもかけてるみたいな(笑)。

HAKUEI:でも、爆笑できないんだよね(笑)。

──ラストシーンは衝撃ですよ。

O-JIRO:キレイですよね。

HAKUEI:いきなり海が目の前に現れて、海に向かって叫ぶっていう。

千聖:いいよね。編集作業のときに見て、“こうなったんだ”っていう驚きがあった。

HAKUEI:僕の中では映画『猿の惑星』の最後のシーンみたいなイメージ。「ここは地球じゃないか!?」っていう。

O-JIRO:それ、わかりやすいね。

──2人も演技してますよね。これまで見たことがないシリアスな表情で。

千聖:(笑)。そうでもないです。HAKUEIくんがひとりで外に出ていくシーンですよね?

HAKUEI:みんなの前を通り過ぎて別れを告げるっていう。

O-JIRO:何かを探しに行くんだなっていう。

千聖:僕たち2人は無言で見送る設定ですね。

O-JIRO:監督には「演技させたって、僕らミュージシャンなんだし、大根中の大根だから」って言ったんですけどね(笑)。

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