【インタビュー】TSUTCHIE、TVアニメ『GANGSTA.』のOST『SIGNS』で表現した色、匂い、体温と音楽の関わり
TVアニメ『GANGSTA.』のオリジナルサウンドトラック『SIGNS』が10月7日にリリースされる。本作を手掛けたのは、ジャパニーズHIP HOP黎明期にデビューしたSHAKKAZOMBIEのトラックメーカーであり、プロデューサーとして主宰レーベル「Sync Twice」から多くのアーティストを送り出しているTSUTCHIE。犯罪都市「Ergastulum」を舞台にマフィア・売春婦・便利屋等の人間模様を描いたアニメの世界観をCD2枚組で余すところなく表現している同作品について話を訊いた。
◆TSUTCHIE~画像~
■同じシーンでバージョン違いを作ったりもしているので
■そういう多くの中から厳選したものを収録しました
──TSUTCHIEさんが今作の劇伴を担当することになったきっかけを教えてもらえますか?
TSUTCHIE:アニメ監督の村瀬修功さんと以前からお付き合いがありまして。村瀬さんが『GANGSTA.』を監督されるということで、その音楽周りをお声掛けいただいたんです。
──TSUTCHIEさんは以前もアニメ『サムライチャンプルー』の劇伴を担当していますが、アニメは割と親しみやすいジャンルだったのでしょうか。
TSUTCHIE:ガンダム世代なので。アニメが大好きな人からすれば観た数はそうでもないんですが、子供の頃からですし、今でもちょっと気になるものを観たりはしています。
──今は深夜にテレビをつけるとアニメを放送していることも多いですよね。
TSUTCHIE:僕らの世代は夕方によく観ていましたよね。夜中にアニメを放送するというのはいつ頃からなんでしょうね? 今は地上波以外にもケーブルTVでも観れるから、本当に沢山ありますよね。
──こうしたアニメの劇伴というのは、どの辺りから制作がスタートするのでしょうか?
TSUTCHIE:『GANGSTA.』は原作のコミックがあって、僕がお話をいただいたときには5巻まで出ていたのでそれを読ませていただいて、「これがアニメになります」ということでお話をさせていただきました。そもそもは放送時期がもう少し早かったんで、動き出していた時期は2013年の後半くらいからだったんです。2014年の5月には6曲くらいイメージというか、「こういう感じのものがあれば」というリクエストをいただいて作った曲を出させていただいて。その後はもうちょっと細かい1クール分のストーリーの中で、こういうシーンでこういう音楽を使いたいという資料をいただいて、それに当てはめて行く感じでした。なので、コミックを読みながら漠然としたまま作ったものと、もうちょっとみなさんと打ち合わせの中で「こういうのも入れておこうかな」というものと半々ですね。同じシーンでバージョン違いを作ったりもしているので、そういう多くの中から厳選したものを収録しました。
──『GANGSTA.』は犯罪都市を舞台にしたマフィア・売春婦・便利屋等の人間模様が描かれた作品ですが、『GANGSTA.』というタイトルはHIP HOPと親和性のあるタイトルでもありますよね。
TSUTCHIE:そうですね。僕の周りで“GANGSTA”というとHIP HOPと連動するので、そういう系かなって思う方もいると思うんですけど。
──HIP HOPの要素というのは、劇伴を担当する上で意識はしていたのでしょうか?
TSUTCHIE:自分がそもそもがHIP HOP畑の人間なので、ボトムとかの作り方に関してはそういう作り方になります。最初は自分が作る物と作品とのすり合わせというか、これが果たして作品にハマるのかというのを模索しながら色々やっていました。ベーシックなところは変わらないんですけど、アプローチはこの作品に合せたというか。まあ合ってるかはわからないですけど(笑)、そういうやり方で作りました。
──めちゃくちゃ合っていると思います。最初に原作を読んだ印象はどうでしたか?
TSUTCHIE:面白いなと思いました。すげえ熱い作品だなと思いましたし、サントラを作る上で色々タイトルを決めたり曲を並べたりという部分で、最近原作を全巻読み直して、アニメも今までオンエアされている分を見直したりしたんですけど、改めて熱い作品だなと思いました。
──トラックでも熱い曲と静かなピアノ中心の曲がありますが、全体のバランスというのはどのように考えて制作されたのでしょうか?
TSUTCHIE:まず最初はアニメのオンエアを観た方が絵を通して音を聴くと思うので、自分の中で原作を読みながら、この街はどういう街なのかとかこのキャラクターはどういう人物なのかというのを考えました。
──曲のタイトルがストレートで、ストーリーとリンクしているのがすぐにわかりますね。
TSUTCHIE:そこは連動させたくて、そうしました。シーンで流れた音の印象とリンクさせたいなということもあって。あえてタイトルはすべて作品の中からピックアップしたんです。
──「Sword and Bullet」等、タイトルから直接的に場面が浮かんできます。そういった意味では劇中でアレックス・ベネデットが楽曲「with You」を歌ったシーンがある第8話「EVENING DRESS」の放送後はネット上で視聴者から絶賛の声が挙がっていました。
TSUTCHIE:ああ、本当ですか。ありがたいです。この曲の歌詞はボーカルの方に第1案を出してもらって、譜割りに対して修正をしたりしたんですけど。曲は胃が痛くなる思いで作りました(笑)。このシーンは原作の中では違う曲を歌っているんですけど、アレックスがスタンダードな曲を歌う場面で、というリクエストをいただいて書いた曲です。
──これはアレックス役の声優、能登麻美子さんが歌っていらっしゃるんですか?
TSUTCHIE:いえ、これは僕がお手伝いさせていただいているシンガー・ソングライターの柳田久美子さんなんです。じつは、1話から柳田さんの鼻歌が登場したりしているんですよ。『サムライチャンプルー』のときも挿入歌(「YOU featuring kazami」)をkazamiに歌ってもらったんですけど、あのときもラップっぽいニュアンスでリクエストをいただいてたんですけど、自分もひねくれてたんで(笑)歌ものを出させてもらってそれを使ってもらったんですけど、今回はガチ指定でお話をいただいたので。原作では洋楽のスタンダード・ナンバーを歌っていたから、それに代わる曲を書くのは大変でした(笑)。
──結果、「with You」はすごく良い曲に仕上がりましたね。
TSUTCHIE:ありがとうございます。もう、スタジオで夜中にずっと1人でキーボード弾いて鼻歌で歌いながら「大丈夫かな~合ってるのかな~」って(笑)。
──出来上がった曲を周囲の方に聴かせたときは良い反応があったんじゃないですか?
TSUTCHIE:そうですね。知り合いにアメリカでアニメのフェスを企画している人がいるんですけど、その人が聴いて「良い曲だね」って言ってくれたんで。「ああ良かった、アメリカ人にも通用した」って(笑)。難産だったので、頑張った甲斐がありました。思いつきで作るというよりは悩むところから始まっているので。
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