【レビュー】RAZORS EDGE、最新アルバムは「めっちゃうまいカレーなんです」
大阪HARDCOREシーンを牽引し続けるRAZORS EDGEが10月7日、6thアルバム『RAW CARD』をリリースした。同作は2011年秋に会場限定販売した8曲入りシングル「FUCKED UP!」以来4年ぶり、全国流通単独音源としては5年7ヶ月ぶりとなるものだ。「デモレベルだと曲自体は50曲くらいは書いていた」とはKENJI RAZORSの発言だが、完成に至るまでに繰り返した試行錯誤や紆余曲折は膨大なものであり、そのためには歳月が必要だったことに間違いはない。結果、収録された全17曲には自身の哲学や、変わることのない本質も新たな一面も深く刻み込まれている。
◆RAZORS EDGE 画像
新たなバンドサウンドが物語るものは、“突き抜けた爽快感”だ。KENJI RAZORS曰く、「様々なタイプの各キラーチューンを並べましたよ!っていう幕の内弁当みたいな詰め込んだアルバムにもできたけど」と語るサウンドは、一点の曇りなくひた走るRAZORS EDGEならではのもの。「生まれ持った切り札」の意を持つというアルバム『RAW CARD』について、彼らを見続けてきたライターの高橋美穂氏が、KENJI RAZORSの発言を交えながら解説するロングレビューをお届けしたい。
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実に5年7ヶ月ぶりのニューアルバム『RAW CARD』。これまで、自らの音楽性であるスラッシュ・ハードコアを体現するかのように、コンスタントに新譜をリリースしてきた彼らにしては、長い時間が空いた。活動としては、彼ららしいフットワークの軽さで、東日本大震災や広島の土砂災害の復興支援のためのライヴ、さらに大阪で自主サーキットイベント<STORMY DUDES FESTA>を開催するなど、全く止まってはいなかった。
そんな中で、これだけ待たせた理由についてKENJI RAZORSは、「『これぞ!レイザーズエッジ!』という1曲目、2曲目になれるキラーチューンやミュージックビデオに使える勝負曲ができなかったから」と正直に答えている。その甲斐あって、1曲目の「A.P.T.N.」は、“アンポンタン”を略したタイトルからわかるように、レイザーズのキャッチーな恐ろしさが現れており、ミュージックビデオが制作された「FAITH」は、タフなコーラスでシンガロングに巻き込む、共闘の歌になっていく予感に満ちている。
さらに今作で注目すべきは、日本語詞が増えたこと。
「震災後の音楽シーンというか、バンドのあり方って変わりましたよね。それに対応したかったというのもあります。そこには自分で書く歌詞が凄く関わってくることなんで。スピーディに対応してたら、誰でも言いそうなメッセージになりそうで。俺、こんなバンドを長いことやってんのに歌詞を書くってことが凄く苦手だったんです。それでずーっと、歌詞というものに向き合って考えてた期間でした。伝えたいことも以前より出てきたんで、日本語じゃないと気持ちの乗った言葉にならない!となったんです」──KENJI RAZORS
その結果、躊躇なくストレートな物言いや政治的なスタンスも現れた歌詞になっている。かと言ってただの演説に留まらない、KENJI RAZORSらしい言葉のセンスも見逃せない。“オレ達の国 IT’S SO FUCKIN’SWEET!/FUCK OFF NUKES! 汚すな!”(『CREATE ONE』)、“欠陥だらけのちょけた夢芝居 分離分裂/LIKE A 政治家 嘘つき! アチョー‼”(『NINJA MOSH』)。だからこそ聴いていて、考えさせられると同時に気持ちよさもある。これは、音楽でメッセージを届けていくうえで、とても大切なことだと思う。長い時間を掛けて熟考した結果が、詰め込んだものではなく、瞬発力に訴えかけるものになったところは流石だし、ライヴを続けてきた活動の賜物だろう。
また、スラッシュ・ハードコアだけではなく、音楽に造詣が深く多岐にわたるKENJI RAZORSだけに、これまでの彼らの作品は何かしらテーマが見える、チャレンジ精神に溢れたものも多かった。それも毎回の楽しみではあったのだが、今作はそういったテーマから解き放たれたように、“とにかく痺れる!”というか、感覚に訴えかける楽曲が多いのだ。
「客観的に聴いたら今回は1stアルバムの『THRASH’EM ALL!!』みたいな雰囲気なんですよね。これは、もうめっちゃうまいカレーなんですよ。しかもカツとかトッピング無しですよ。ルーとライスのみ! 全曲同じような感じでも一口目にうまいと感じた感覚が最後まで続くっていうね(笑)。そのなかで色んなスパイスを感じれるっていうやつです。ウソみたいですけど、それ目指しましたね」──KENJI RAZORS
20周年を迎える2016年を目前として、またここからはじまるようなフレッシュな一枚を作り上げてしまった彼ら。今作を機に、彼らにしか言えないこと、鳴らせない音、表現できないことって、こんなにたくさんあるんだな!と、唯一無二の存在感に改めて気づかされた。スラッシュ・ハードコア、パンク、ストリートといったシーン関係なく、レイザーズかくあるべしと名と音を刻める、メッセージ性と音楽性を誇っているのだから。
「いまだに曲を書くことはスリリングで興奮するし、ライヴも楽しいし、志が同じなメンバーがいることもある意味で奇跡だとも思いますし、ありがたいって純粋に思いますよ。世界的にもこんなバンドなかなかいないと思うんですけど(笑)、上には上がいますからね。さすがに新人やとは思いませんが、ベテランだなんて全然思えない。まだやりたくてもできてないこともあるし。『RAW CARD』軽く越えるアルバムも作らなあかんし、永遠の中堅バンド気分ですわ(笑)」──KENJI RAZORS
これからも、ライヴでお馴染みのKENJI RAZORSの高い高いジャンプのように、間違った常識を突き抜け、気持ちを上げてくれていってくれることを、期待せずにはいられない。そんな“これから”が響いてくる、傑作の誕生だ。
取材・文◎高橋美穂
■6thフルアルバム『RAW CARD』
PZCA-76 \2,190(without tax)
01. A.P.T.N
02. RAW CARD
03. BLURRED ZEAL
04. AMERICAN DOG
05. WE UNITE
06. CRAZY CONFUSE
07. START TODAY
08. FAITH
09. CREATE ONE
10. GET THE PUNK OUT
11. KILLED BY MOSH
12. THARASH IT UP
13. YELLOW MINORITY
14. MACHINE
15. NINJAH MOSH
16. 素晴らしいPUNK
17. WE ARE RAZORS
■<RAZORS EDGE "RAW CARD TOUR 2015~2016">
※RAZORS EDGE "RAW CARD TOUR" & SUNSET BUS "ALOHA TOUR" ダブルレコ発 岡山編
11/23(月) 神戸太陽と虎
※RAZORS EDGE "RAW CARD TOUR" & SUNSET BUS "ALOHA TOUR" ダブルレコ発 神戸編
12/12(土) 横浜F.A.D
12/13(日) 柏ALIVE
<2016年>
01/09(土) 酒田hope
01/10(日) 仙台BIRDLAND
01/16(土) 千葉LOOK
※“STOMPIN’BIRD & RAZORS EDGEダブルレコ発「WILD CARD」2DAYS千葉編”
01/17(日) 前橋DYVER
※“STOMPIN’BIRD & RAZORS EDGEダブルレコ発「WILD CARD」2DAYS群馬編”
01/23(土) 博多Kieth Flack
01/24(日) 広島4.14
02/20(土) 下北沢SHELTER
02/21(日) 名古屋HUCK FINN
02/28(日) 心斎橋BIGCAT (ツアーファイナル)
◆PIZZA OF DEATH オフィシャルサイト
◆RAZORS EDGE オフィシャルサイト
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