【詳細レポ】倉木麻衣、「オーケストラに乗せて、私も音楽の一部に」

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9月12日土曜日、倉木麻衣の2015年初となるライブ<Mai Kuraki Symphonic Live -Opus 3->が、東京・墨田区のすみだトリフォニーホール 大ホールで行われた。間近に聳え立つ東京スカイツリーの威容を見上げながら会場に入ると、そこは時の流れがゆったりと感じられる別世界。直線を多用した美しくシャープなデザインの客席は、2年振りのスペシャル・ライブを待ちわびる観客ですでに満員だ。

◆倉木麻衣 画像

午後4時5分、東京フィルハーモニー交響楽団のメンバーに続き、指揮者の藤原いくろうが指揮台に上がると、短いオーバーチュアを経て、「Time after time~花舞う街で~」のイントロが静かに流れ出す。メロディに乗せてしずしずと登場した倉木麻衣は、ノーブルな黒ドレス姿。管楽器の溌剌とした響きが印象的な、バラードながらリズミックなノリを強調したサウンドに乗り、儚く強く、美しい歌声を響かせる。約9ヶ月ぶりのライブというブランクを感じさせない、のびやかな歌唱だ。「冷たい海」はイントロに秋場敬浩によるピアノの独奏をフィーチャーし、弦楽器を中心として流れるようにメロディアスに。たった2曲で“今日はいいライブになる”と確信できる、素晴らしいオープニングだ。


「皆様、お久しぶりです、倉木麻衣です。今日はシンフォニック・ライブに足を運んでいただき、本当にありがとうございます。素晴らしいオーケストラと美しい旋律に乗せて、私も音楽の一部になって歌いたいと思います」

「Like a star in the night」は、2002年にリリースされた13枚目のシングル曲。ドラマチックなスローバラードを、フル・オーケストラがさらに大きく豊かに盛り上げる。アウトロに配した「星に願いを」のメロディが、なんとも言えず可愛らしい響きだ。続く「fantasy」も同時期のアルバム『FAIRY TALE』からの1曲で、ステージ背後の壁に映される夕陽の映像に合わせ、場内の照明もオレンジ色に染まる。自然の大きさと愛しさを感じさせる、ほっこりとした明るいメロディと自然体の歌。オーケストラ演奏といえば緊張感があって格式の高いもの、というイメージを持つ人がいれば、倉木麻衣のシンフォニック・ライブはそれだけではないよと言いたい、柔らかく暖かい音色に心和む。また、これら2曲ではドレスに仕込んだ電飾が青からオレンジへと色を変えて、幻想的なムードをかもし出す場面も。


「Cinema Music Special Medley」と題した曲は、倉木麻衣がお気に入りのシネマソング2曲をメドレーにしたもの。「SMILE」はチャップリンの『モダン・タイムス』、そして「ALFIE」は同名の映画の主題歌で、どちらもスタンダード中のスタンダード。原曲よりもぐっとテンポを落としてゆったりと、気ままにメロディを口ずさむような自然な歌いぶりだ。ピアノは澤近泰輔。彼女自身もリラックスして音楽に没頭していることが、言わずとも歌声から十分に伝わってくる。

「今年はずっと制作をしていました。その中から新曲を1曲、初披露したいと思います。15周年を終えて、これからも自分を信じて歩んでいくしかないという気持ちを歌った歌です」

タイトルは「My way」。明るい広がりを感じるメロディと、“自分を信じることをやめないで”と歌う歌詞が印象的な、静かな中にも力強さを感じさせるスローナンバー。初披露とは思えない完成度の高さに、演奏が終わると大きな拍手が湧きあがり、笑顔でお辞儀をした倉木麻衣がステージを降りる。ここで第一部は終了。第二部のスタートは15分後だ。


純白のドレス、銀のベルト。衣装を可憐で清楚なお姫様スタイルにチェンジして、第二部は「SAFEST PLACE」から始まった。特別参加したハンドベルの澄んだ音色が、静かなバラードをぐっとエモーショナルに盛り上げる。「白い雪」ではピアノと鉄琴をフィーチャーし、よりドラマチックに。さらにゲスト・ヴァイオリニストの松本蘭を迎え入れて「儚さ」を歌ったシーンが、この日最高のハイライトの一つだった。白いドレスの倉木麻衣は美しく可憐に、黒いドレスの松本蘭はダイナミックで情熱的に、対照的な二人の連係が生み出すハーモニーは見事のひとこと。ちなみに松本蘭は6年前のミス日本コンテストで『ミス着物』を受賞した、才色兼備の個性的なプレイヤーだ。


後半はMCを入れず、音楽の力だけで深いところへとどんどん進んで行く。「Secret of my heart」から「Reach for the sky」へ、宙に舞い上がるようなヴァイオリンの飛翔感に合わせて、指揮者のように両手でリズムを取りながら歌う倉木麻衣。「STAND BY YOU」は、原曲の持つ優しさと力強いメッセージ性をさらに強調するように、曲の後半では小太鼓がボレロ風のダイナミックなリズムを刻み、ぐいぐい盛り上がって行く。間髪入れず、ステージ背後のパイプオルガンにスポットが当たると、そこにはゲスト・オルガニストの飯沼彩の姿があった。まずはバッハ「トッカータとフーガニ短調」の、誰もが知っているフレーズでぐっと観客の心をつかむと、オーケストラがあとを受け継ぎ、流れ出したのは「Love, Day after tomorrow」のイントロ。せつないメロディ、希望のメッセージ、そして16年間変わらない美しいウィスパー・ボイス。倉木麻衣の過去、現在、未来を結ぶ、永遠の名曲は今日もやはり名曲だった。

「みなさん今日は、本当にありがとうございました。あらためて、アレンジを手がけてくださった藤原いくろうさんに大きな拍手を」


アンコールの第一声で紹介された藤原いくろうが、拍手に応えてお辞儀をすると、向き直ってオーケストラに指示を出す。早いテンポ、躍動的なリズム、高揚感あふれるメロディ、曲は「Wake me up」だ。背後に映し出される、青空の映像がとても美しい。

「今日はとても素晴らしい時間になりました。最後はみなさんと一体になって終わりたいと思います」

再びゲスト・ヴァイオリニストの松本蘭を招き入れて、シンフォニック・ライブの最後を飾る曲は「always」。原曲はグルーヴィーなR&Bスタイルだが、こうして豊かなオーケストラ・アレンジで聴いていると、ゴスペル的なうねりと高揚感が感じられるのが面白い。客席に向かって“everybody,singing!”と呼びかける倉木麻衣も、それに応えてサビを大合唱する観客も楽しそうだ。半音ずつ上昇するドラマチックな演奏が最高点に達し、藤原いくろうの手がすべての音を締めくくると、湧き上がる拍手、歓声、そしてスタンディング・オベーション。カーテンコールに応えて何度もお辞儀をし、手を振る倉木麻衣の顔も、充実感で輝いて見える。年末から来年にかけて、次のアクションへの期待がさらに高まる、2時間20分のゴージャスな音楽の旅だった。

取材・文◎宮本英夫

■<Mai Kuraki Symphonic Live -Opus 3->
9月12日@すみだトリフォニーホール 大ホールSETLIST

【Part I】
01.Time after time ~花舞う街で~
02.冷たい海
03.Like a star in the night
04.fantasy
05.Cinema Music Special Medley
06.My way
【Part II】
07.SAFEST PLACE
08.白い雪
09.I sing a song for you
10.儚さ
11.Secret of my heart
12.Reach for the sky
13.STAND BY YOU
14.Love, Day After Tomorrow
【encore】
15.Wake me up
16.always

■LIVE DVD & Blu-ray『Mai Kuraki Symphonic Live -Opus 3-』発売決定

2016年1月27日(水)発売
【DVD 2枚組】VNBM-7028~7029 ¥7,020(tax in)
【Blu-ray】VNXM-7028 ¥8,100(tax in)
<「Mai Kuraki Symphonic Live -Opus 3-」 LIVE DVD & Blu-ray Musingオリジナル特典>
●倉木麻衣シンフォニックLIVE第3弾 「Mai Kuraki Symphonic Live -Opus 3-」 LIVE DVDもしくはBlu-rayをMusingにてご予約いただきますと、「Mai Kuraki Symphonic Live -Opus 3-」公演撮り下ろしポストカードセット(3枚組)をプレゼント
※特典は無くなり次第終了となります。お早めのご予約をおすすめいたします。
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