【インタビュー】Nozomu Wakai's DESTINIA、女性シンガーを起用して真っ向勝負のヘヴィ・メタルをぶつける新作『Anecdote of the Queens』

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自身のプロジェクト、Nozomu Wakai's DESTINIAとしてリリースしたデビュー・アルバム『Requiem for a Scream』で、ヘヴィ・メタル・シーンを席巻した若井望。誰もが羨む豪華な参加メンバーも話題となったが、新作『Anecdote of the Queens』は、前作でコーラスを担当していたLIGHT BRINGERのFukiと、声優としても活躍する榊原ゆいをメイン・ヴォーカルとしてフィーチュア。女性シンガーを起用して放たれたメロディックかつドラマティックな楽曲が、“新たな世界”を堂々と提示している。

◆Nozomu Wakai's DESTINIA~画像~

■真っ向勝負のヘヴィ・メタルを聴きたいと思っている人が世の中にはいっぱいいることがわかった
■こういった正統派なヘヴィ・メタルは許容されないのではなくそれをやる人が単純に少ないだけ


――2014年11月にリリースされたデビュー作『Requiem for a Scream』は、特にヘヴィ・メタル好きのリスナーの間で衝撃的に受け止められて大きな話題となりましたが、今、どんなアルバムだったと振り返ります?

若井望(以下、若井):改めて考えると、自分が思う以上にターニング・ポイントになった作品なのは間違いないですね。好きなことを思いっきりやろうと制作に臨んでいたわけですが、自分がリスナーとして聴きたいものを作ったんです。そんな作品をリリースしてみたら、同じように真っ向勝負のヘヴィ・メタルを聴きたいと思っている人が、世の中にはいっぱいいることがわかったんです。それがいちファンとしても感激したんですよ。近年はこういった正統派なヘヴィ・メタルはあまり聴く機会が少なくなっていますけど、許容されないからないのではなく、渇望はあるんだけど、それをやる人が単純に少ないだけだったわけですよね。それに、やはり妥協せずに努力したものが認められたこと自体、素直に嬉しかったです。


▲写真左より:榊原ゆい、Fuki

――前作でコーラスを担当していた榊原ゆいさんとFukiさんが、今回の『Anecdote of the Queens』にはメイン・ヴォーカルとして参加していますが、この作品に関する構想はいつ頃から出てきたものだったんですか? 少なくともファースト・アルバムを出す段階では、そういう話はありませんでしたよね。

若井:そうですね。『Requiem for a Scream』の制作が終わった後も曲をいくつも書いていたんですけど、むしろ、セカンド・アルバムの構想のほうが先にあったぐらいですね。一番のキッカケとしては、私が2014年の冬ぐらいから、ライヴをしようと具体的に考え始めて……元を辿れば、以前からライヴをやる計画はあって、時期的には2015年の春ぐらいにということだったのですが、諸事情により頓挫しまして、この8月に変更になったんですよ。ただ、2014年の11月にアルバムをリリースしていて、2015年の8月にリリース記念のライヴというのも、時間が開きすぎていて形としても非常に不自然ですよね。しかも、当初の予定でいけば、2~3バンドでのライヴを考えてたんです。何しろその時点では、ファースト・アルバムに収録された10曲しかないですからね。そのうちに、8月の開催であれば、ワンマンもしくは2マンにしてはどうかという考えも出てきたんです。でも、いずれにしてもまだ曲が足りない。そこでキングレコードの担当諸氏とも相談していたんですが、レコード会社のほうにも私のほうにも、前回、コーラス参加した二人に対する反響がいろいろと届いてたんですよ。その中には彼女たちが歌うDESTINIAの曲を聴いてみたいといった声も多くて、じゃあ、やってみようじゃないかと話が現実的に動き始めたんです。正直、ストックの曲もあるし、スムーズに制作も進むだろうなんてことをその時点では思っていたんですが、結局、改めて二人のCDとかを聴いたりしている中で、前回のアルバムでやり残したことをやろうと思ったんです。『Requiem for a Scream』は人の性(さが)という部分を歌っているアルバムですけど、人の狂気に近いところを歌うことが多かったんです。男女間のこととか、女性側から男性側に対して思うこととか、そういう前作で足りなかった部分が、今回の二人を据えることによって形にできる。そんなふうに気持ちも新たに盛り上がってきて、作品として構想していくに至ったというところですね。

――ゆいさんは以前から望さんとはライヴや音源制作でコラボレーションを続けてきていましたよね。

若井:もともとはあるゲーム音楽で、結構メタルっぽい案件があって、そこのアレンジャーさんに私がギタリストとして呼ばれたのがキッカケなんですよ。

榊原ゆい(以下、榊原):7年ぐらい前だよね。

若井:そう。その後に彼女のバック・バンドのメンバーとして声をかけてもらって、ハードなサウンドの音源をいくつか一緒に作ったりして。そんな中で意外と歌える……意外となんて言うと怒られちゃうけど(笑)。

榊原:「声優なのに?」ということだよね(笑)。まずは声優さんとの歌の仕事という感覚だと思うので、そうなるのは当然だと思います。

若井:そこで彼女の歌の魅力に気づいたわけですよ。特にライヴをやると、またパンチの効いた歌が披露されるんですよ。Fukiさんについては、LIGHT BRINGERで活動しているときに何度かライヴを観たんですよ。


――そのとき同席していましたが、終演後、「LIGHT BRINGERをプロデュースしてみたいです」と話していましたよね。Fukiさんの歌についても、「彼女の持っている、もっといい面、違う面を出せると思う」とも言っていて。

Fuki:そういうことがあったんですね。嬉しいです。

若井:そう、いろんな女性ヴォーカルを観てきたけど、まずは彼女の秘めたるポテンシャルの高さですよね。見た目以上の声量、声の出し方も含めて、いわゆるフィジカル的な部分が圧倒的に優れている。女性ロック・ヴォーカリストとして最終的に持つようなものをすごく感じたんです。そういった二人の毛色の違うコーラスを前作では入れてもらったんですけど、今回は二人と改めて話をしたりする中で、結局、ストックは使わずに、すべて新たに書き下ろすことにしたんです。なので、実質、準備が始まってからは、短い期間なんですよね。1枚目は無期限でしたから(笑)。そういう意味でも、作り方も含めて、『Requiem for a Scream』とは全然違う部分はありましたね。

――若井望というギタリスト/コンポーザーについては、どのようなイメージがあるんですか?

榊原:何はなくともストイック過ぎて、若干ついていけないところがありますね(笑)。「それって人の耳に伝わる?」っていうところまで、自分が納得いかないと、ホントにギリギリまで突き詰めるんですよね。でも、制作中は「そこまでやらなくてもいいんじゃない?」って、周りのみんなも多分思ってるところはあるんですけど(笑)、いざ形になると、熱いねって納得できるんですよ。そこが凄いなと思いますね。みんな大人なので、たいていはその一歩手前で、ここまでかなって線引があると思うんですけど、(若井は)ある意味大人じゃない(笑)。

若井:酷いことを言うね(笑)。

榊原:そこがすごく音に出ていて、響いてグッと来る、熱く聴けるものになってるんじゃないかなと思うんですね。長年一緒にやってるからこそわかる感覚だと思うんですけど、だから、逆にこれからもそのストイックさのままでいて欲しいですね(笑)。自分が納得いくところまで、ホントに追究するパワーとか熱って、ここまで持てる人ってなかなかいないと思うんですよ。

若井:まぁ、それはそういった先輩たちの背中を見てきたのもあるしね。そこは今でも常に研いでる感じはある。刀は磨いておかなきゃって。

榊原:もちろん、誰しも自分のこだわりはあると思うんですけど、そのストイックさの鋭さが違いますからね。

Fuki:そんなにこだわるのは、このDESTINIAだけだと思ってました。だから今、へぇって思いましたね。私は前回のレコーディングのときに、若井さんと初めてお会いしたんですけど、スタジオに行ったら、(ステージに立つときと変わらない)この風貌ですよ(笑)。

榊原:驚くよね(笑)。

Fuki:そう(笑)。初日はお互いにちょっと猫をかぶってたところはありましたよね? でも、あれからもう1年近く経つのか。今はホント、変な人だなぁって思ったりもするんだけど(笑)、音楽に対して妥協しないところは、今、ゆいさんが言ったのとほとんど同じことを感じてて。こだわるからこそ、私が歌っているときに、自分ではわからない歌の良し悪しとかニュアンスを、正確にブースの外で判断して、もっとこうしたほうがいい、ああしたほうがいいって言ってくれるんですね。そういうディレクションをしてくれる人って、歌いやすいんですよ。あまりに些細な違いで、自分で気づかないぐらいのものでも、「さっきよりいい!」みたいなことがあるんですよ。実際、CDになった完成形を聴くと、確かにそのちょっとした違いは音に出てるんですよね。そういう判断ができるところはさすがだなと思います。だから信頼して、ディレクションはお任せしましたね。

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