【インタビュー】K、10周年だからこそ振り切って“生”の部分にこだわった新作『Ear Food』

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■今作はピッチが合ってなかったりリップノイズが入ってるところもたくさんある
■それは一発録りで録った意味でもあるので生かしています。僕にとってはチャレンジです


――「Brand New Day」とか「Only Human」はコーラスワークも素晴らしいですよね。これも16チャンネルの機材で録ったんですか?

K:これだけはあの機材では録れないんです。だからあとから1トラック、1トラック、地道にProToolsに移して。その後、また16チャンネルの機材に戻したんです。だからエンジニアさんがすごい大変で。でも、最終的に16チャンネルの機材に戻しただけで音がすごく変わるので、大変でもその作業をやりました。

――これは、Kさんだけではなく、真藤敬利さんの声ですよね。すごく良く似た声質だから、一瞬、Kさんだけなのかと思ったけど、1人の声だと、ここまでの広がりは出ない。

K:そうです。真藤さんと二人でブースに入って録ったんです。長く一緒に音楽をやっていると、ブレスの感じとか声まで似てくるんです。特にコーラスになると、メインではないので個性を消さなければいけないこともあります。その個性を消した声がそっくりで。だから、1人でハモるよりもふくよかなんです。

――アルバム用に新たに書き下ろした楽曲の中には、「偶然の雨」のような昭和歌謡の匂いがするユニークな楽曲もあって。

K:はい(笑)。こういう曲をずっと書いてみたかったんです。ただし、普通に男性目線の歌詞で歌うと昔っぽくなってしまうから、女言葉で歌いたいと思っていました。なおかつ、お酒をテーマにしてキュンとするような。そんな時に、たまたま知り合いの結婚パーティーで古内東子さんと一緒になって。その場でさっき僕が言ったような内容で作詞のお願いをしたら、すぐに書いてくれて、「これだよ!」と。自分には描けないんですけど、そういうものに対して、やっと「もっと自由に演じたい」っていう感じになってきたんです。1人でいろんなことを想像しながら、この主人公を演じきることがものすごく楽しかったです。10年やってきて、やっとここにたどり着いたような気がします。


――最後の「Lullaby」は“おやすみなさい”で終わりますが、隣で言っていわれているような感じがして、すごくキュンとします。今回、生音にこだわったのがすごく出ているラストだなぁと思いました。

K:それは嬉しい。今回、コーラスの良さを伝えなければいけない場合以外はリバーブをほとんど使っていないんです。生の音をより近く感じさせるにはリバーブをかけない方がいいんです。音が持っている、空気が持っている良さを出すというか。僕はそれが自分の声に合っているような気がしていて、なるべくかけないようにしているんです。ただリバーブをかけない状態の演奏ってすごく難しくて。アラ探しがしやすいから(笑)。

――間違いないですね。この曲は、イントロに子守唄のギミックが入っていますよね。

K:あれはモーツァルトの曲なんですが、うちのオヤジが子供の頃歌ってくれたんですよ。自分が聴いて落ち着くものにしたいという思いもあって入れたんですよ。

――なるほど。レコード世代としては、こういうサウンドは本当に落ち着きますし、すごく良い作品が出来ましたね。

K:若い人でも生音に興味を持ち始めている人がすごく増えています。ハイレゾの音源が売れている理由って、そこだと思うんです。ガッツリ打ち込んでいるサウンドをハイレゾにしてもすごくカッコイイし面白いんですけど、よりハイレゾを楽しめるのって生音だと思うんです。この作品を作って、CDを聴いただけで、ライヴ空間にいるようにするには、さぁどれがいいのか?って考え方が変わったような気がしますね。

――なんでもデジタル化されて、生っぽさが失われつつある時代だからこそ、生を求めるのかもしれないですよね。

K:もちろんデジタルにも良さはあるんです。だから、特に生である必要があるのか?という意見もあると思うんですね。自分もそういう録り方をしてきたし。でもあえて、生じゃないといけないことをこの時代にやるべきだし、間違ったことも味になるっていうことをどんどんやったらどうなのかなって思いました。だから今作は、歌のピッチが多少合ってなかったり、リップノイズが入ってるところもたくさんあるんですけど、それは一発録りで録った意味でもあるので、生かしています。僕にとっては初の試みでありチャレンジ。このアルバムを作ったことによって、違う入り口を開いてくれたような気もします。

――その入り口はどこにつながっていきそうですか?

K:演奏するミュージシャンって、人力でやってる以上、完璧ではないんです。それを今まではなるべく完璧に聴かせるためにやってきた部分もあるんです。でも今は、完璧じゃないものをどれだけ美しく表現出来るのかということに力を入れていきたいというか。音源をどれだけライヴに近づけて作れるのかということでもありますね。もしかしたらそれは僕に合ってるのかもしれないと思いました。

――うん。似合ってると思います。

K:ここまで変化出来た一つの理由に、兵役を終えたということがすごく関係しているんです。それまでは、この時期になったら仕事をストップして兵役に就かなければいけないというリミットを抱えたままお仕事をさせていただいてたんです。だから、自由になれない部分もあって。自由になれないからこそ頑張れるというところもあったことは事実なんですけど。でも、そのリミットがなくなったことで出てくる発想もあるんです。リミットがあると失敗できないから、今回みたいにクリック無しの一発録りなんて怖くて出来ませんでした。もし失敗したとしても、失敗で終わらせるのか、味として持っていくのかというのもミュージシャンの力量だと思うんです。全曲同じミュージシャンで録るというのも面白かったし、これは今後も続けて行っても面白いかもと思いました。

取材・文●大橋美貴子

『Ear Food』

SRCL-8856/¥3,241+tax
<収録曲>
1.Ear Food
2.Music in My Life
3.偶然の雨
4.愛
5.Brand New Day
6.Only Human
7.夏の夕暮れに詠うバラッド
8.Superサラリーマン
9.Years
10.dear...
11.Lullaby

ライブ・イベント情報

<10th anniversary K~thanK you!~>
8/9(日) 東京 よみうりホール
8/14(金) 大阪 メルパルク大阪ホール
8/15(土) 福岡 イムズホール
8/17(月) 大分 Drum Be-0
8/18(火) 長崎 Drum Be-7
8/23(日) 兵庫 新神戸オリエンタル劇場
8/24(月) 愛知 ダイアモンドホール
9/2(水) 北海道 札幌市教育文化会館・小ホール
9/4(金) 青森 青森Quarter
9/5(土) 岩手 岩手県公会堂 21号室
9/18(金) 香川 高松オリーブホール
9/19(土) 愛媛 松山Vivit Hall
9/21(月・祝) 広島 BLUE LIVE HIROSHIMA
9/23(水・祝) 岡山 ルネスホール
9/25(金) 奈良 なら100年会館・中ホール
9/26(土) 滋賀 びわ湖ホール 小ホール
10/4(日) 神奈川 関内ホール 大ホール
10/9(金) 宮崎 NEW RETRO CLUB
10/10(土) 鹿児島 キャパルボホール
10/12(月・祝) 熊本 B.9 V1
10/13(火) 佐賀 佐賀GEILS
10/17(土) 群馬 ベイシア文化ホール
10/18(日)  山梨 COTTON CLUB
10/23(金) 茨城 茨城県立県民文化センター 小ホール
10/25(日) 栃木 佐野市文化会館 小ホール
10/31(土) 沖縄 桜坂劇場 ホールA
11/2(月) 山形 山形市民会館 小ホール
11/3(火・祝) 宮城 仙台イズミティ21 小ホール
11/7(土) 秋田 秋田カフェ・ブルージュ
11/8(日) 福島 創空間 富や蔵
11/13(金) 徳島 徳島市シビックセンター ホール
11/16(月) 高知 ラ・ヴィータホール
11/20(金) 島根 松江Canova
11/21(土) 鳥取 BEXX米子
11/23(月・祝) 山口 Shunan RISING HALL
11/27(金) 静岡 マリナート 小ホール

現在、渋谷宮益坂上のレストランL.LOVES R.でコラボカフェ 『Kafe EarFood』OPEN!
期間:7/28(火)~8/30(日)
※8/13~8/17は夏期休暇のためお休みです。
ディスプレイや、店内BGMがK一色に!
また、Kのリクエストにお応えしたコラボメニューも登場。


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