【インタビュー】<FREEDOM>フェスが伝える“自由と絆”

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MINMIが発起人となって2008年にスタートし、東北・淡路・九州それぞれの大自然に囲まれた最高のロケーションとピースフルな空気が漂う空間に、65,000人の仲間と最高のアーティストたちが集結する音楽フェスティバル<FREEDOM aozora 2015>。このイベントの実行委員長である若旦那(from 湘南乃風)に話を聞いた。<FREEDOM>がオーディエンスに伝えたいことは何なのか。このフェスのコンセプト、そしてそのこだわり、開催にかける思いが溢れだしてきた。

■“絆”から生まれた<FREEDOM>

――そもそも<FREEDOM>が始まったいきさつは、どのようなものだったんですか?

若旦那:誰かに呼ばれてフェスに参加するのではなく、同じ思いを持った仲間たちが集まって、自分たちで発信していきたいという<FREEDOM>の原点にある思いは、ずいぶん昔からありました。

でも最初から大きな取り組みなんてできないから、最初は10年以上前に、湘南乃風とMINMIで西麻布のクラブ「YELLOW」で<西麻布伝説>というイベントをはじめて、その頃から「いつかはこのイベントをもっと大きくしていくんだ」という思いを持ち続けていたんです。背伸びをせず、自分たちの身の丈にあった形で<西麻布伝説>をやっていきながら、「アーティスト自身がアーティストの目線でイベントを運営するとはどういうことか」というノウハウを、誰から教えられるのではなく自分たち自身で勉強していきましたね。

クラブを飛び出して野外フェスを開催したのは、大分県で2007年に行われた<JUPITER音楽祭>で運営やキャスティングを任せてもらえたのが最初でした。そこに当時<西麻布伝説>でやってきた枠組みやノウハウをぶち込んでみて、『西麻布外伝』として開催してみて、とても強い手ごたえを感じました。

ちょうどその頃(2007年11月)にMINMIが第1子を出産して、その直後にコンサートツアーをしなければならないという課題に直面していたんです。なにせ出産直後なので2時間以上に及ぶステージに身体がついていけるのかという不安があった。そこで、仲間たちが話し合って、みんなで30分ずつでもステージに上がればMINMIの負担を軽くできるのではないかということで、フェスのような形式でやってみようということになって、全国のZeppをフェス形式で巡っていく<FREEDOM>というツアーが生まれたんです。

「フェスをやろう!」と集まったわけではなく、仲間たちが集まって、<西麻布伝説>から始まったイベント運営のノウハウを注ぎ込んで、これまでの「MINMIをみんなで支えよう」という絆から生まれたのが、このフェスの原型だったんですね。そして、ツアーを無事に終えてみんなでフェスを作っていくということに強い手ごたえを感じて、参加したみんなから「こうしたら次はもっと良くなるのでは」という意見がたくさん挙がって、その翌年に淡路島で開催された野外フェス<FREEDOM>に繋がったんです。Zeppと比べて規模も桁違いに大きくなって、それこそ最初は“大勝負”だったんですが、周りも後押ししてくれてここまでフェスを成長させることができました。


■アーティストがフェスを運営することの意味

――仲間たちの強い絆から生まれたフェスが<FREEDOM>なのですね。運営会社ではなくアーティスト自身がイベントを企画・運営することの醍醐味は何でしょうか?運営会社主体のイベントとの違いとは?

若旦那:一番は、お客さんたちとの距離が近いということじゃないかな。ライブでは運営者には絶対にわからないお客さんたちとアーティストとの1対1の関係というのが生まれていて、アーティストはお客さんたちの温度感をダイレクトに感じて、その温度感にダイレクトに答えを返そうとしています。アーティストはお客さんたちが何を望んでいるのか、どんな熱量を欲しているのか、アーティストはそういったニーズをダイレクトに感じながら、お客さんの要求に応えるパフォーマンスができるか否かが勝負になるんですよ。

イベントの運営者はどうしてもイベントを安全に、滞りなく開催することにばかり意識がいってしまうのですが、お客さんたちの温度感をダイレクトに感じているアーティスト自身が運営主体になることで、“お客さん目線”でイベントを企画することができる。どの立場に立ってイベントを考えるかという点で、運営本部からイベントの運営を考える場合とは大きく違うし、お客さんたちの視点から会場を見渡して考えていけることが、アーティストが運営することの醍醐味じゃないかと思いますね。

最近のフェスの中には、「とにかくたくさんのアーティストを集めればいい」というものも少なくないのかなと思うのです。フェスは枠組みでしかなくて、その枠組みに何組ものアーティストが来て、何曲か歌って帰っていくだけ。そういうフェスでは「このイベント全体を通じて何を作っていきたいのか」というメッセージが誰も見ていないんです。

フェスを開催するからには、フェス全体を通じて何かしらのメッセージを感じてくれなければ意味がない。集まったアーティストとお客さんたちでタスキを渡し合いながら、ひとつのメッセージを感じてもらえるようなフェス。フェスを終えてお客さんが何を感じてくれたか、アーティストとお客さんたちの間やアーティスト同士でどれだけ絆が深まったか、そしてこの1日が最高の体験になったかどうかが、とても大切なのではないかと思います。

■自然の中で感じる“自由”が、都会の悪循環をリセットする

――「フェスを通じてどんなメッセージを伝えるか」という熱意が必要だということですね。<FREEDOM>では、どんな体験を生み出したいと考えているのでしょうか。

若旦那:イベントタイトルにある通り「FREEDOM(自由)」を感じてもらいたい、特に、都市の中で自由を感じるのではなく、多くの自然に囲まれた中で自由を感じてもらいたいという点を大切に考えています。

今年の<FREEDOM>は東北、淡路、宮崎という自然災害に見舞われた3か所で開催しますが、自由を感じることができる自然というのは、厳しくもあり、残酷でもあり、しかし不思議で生命力を感じられる場所でもあり、人工的に作りあげられたものには絶対にないものがある場所であると思うのです。そういった空間に音楽が流れることで、音楽が自然という強い生命力を持つ空間を流れる血液となり、集まった人たちがその生命力を感じることができるのではないか。そしてそんな空間に同じ趣味を持つ仲間たちが何万人も集まって、大音響の音楽が流れてグルーヴが生まれたら、ひとりひとりの中で何かが変わるんじゃないか。そんな思いを持っています。

都市の中に生きていると、代わり映えのない春夏秋冬、代わり映えのない毎日のなかで、「自分は何のために生きているんだろう」「自分は誰のために生きているんだろう」という思いが見えなくなってくる。そうすると、生きていくモチベーションが失われてネガティブになっていき、それが波及して社会全体の元気がなくなっていってしまう。<FREEDOM>は、年に1度そういったネガティブな悪循環をリセットするきっかけになるようなフェスにできればと思っています。

加えて、日本にある夏祭りや収穫祭の文化にあるように、自分たちが自然によって生かされているということを感謝できるようなフェスにしたいとも思っていますね。
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