【インタビュー】藤木直人、ギターに出会った17歳の少年のままの自分を出せた『1989』

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■松下さんにピアノを弾いていただけるんだったら役者をやってる自分の面も出せるのかなと
■駄目もとで聞いたら藤木さんの頼みならって、即答で“やります”と言ってくれて


──もう1曲、藤木さんの作詞作曲は「utakata」。これは?

藤木:毎回自分で作詞作曲したものを、1曲は入れたいなと思っていて。そうなると、いつもファンに向けた感謝の曲になりがちだったんですよ。今回もそういうことで書こうかなと思ったんですけど、なかなか曲が浮かばなくて。シライシさんと話してる中で、昔「sofa」という曲があって、こぢんまりしたというか、等身大の自分に近い曲なんですけど、“あんな感じの曲がいいんじゃない?”と言ってくれて。そういうのもありかも、と思って書いたら、すんなり書けたんです。メロディと言葉がいっぺんに降りてきたので、すごく強いものを感じています。とらえようによってはラブソングに聴こえたり、ファンの方のために書いたと思ってもらってもいいですけど、すごく個人的な曲だと思います。

──この曲の前半、野外の公園でギターを爪弾いてるみたいな、そういう音作りになってるのが面白いなと思ったんですけど、あれは?

藤木:あれはシライシさんが勝手に、といったら何ですけど(笑)。渡して返ってきたらSEがついて、ああなっていたんですよ。僕の場合、スタジオでエンジニアさんがいらっしゃる中で歌入れする曲もあれば、シライシさんの個人スタジオで、二人だけでレコーディングすることもあって。この曲の歌入れは、シライシさんの個人スタジオだったんですけど、“仮のギターを弾いてよ”ということになったんですよ。そしたら、自分で弾いたギターだから、歌とのマッチングがよくて、“このギター、このまま入れておこう”と。“え? 仮だと思ってちゃんと弾いてないんですけど”“いや、大丈夫”みたいなことになって(笑)。なかなか最近の音源で、自分のギターを入れることは無くて。僕が弾きますと言わないのがいけないんですけどね(笑)、久しぶりに自分でギターが弾けて、それはそれでうれしかったですね。


▲「1989」

──同じ事務所のバンド、wacciの橋口洋平さんも1曲提供しています。せつなすぎるバラードの「TAXI」を。

藤木:うちの事務所には、いろんなタイプの音楽をやっている人がいますけど、wacciはある意味王道で、僕はすごく好きなんですよ。特にwacciの「東京」という曲が好きで、“こんな曲書いてほしいな”って。もしダメなら、そのまま「東京」をカバーしようかと思ってたんですけど、すごくいい曲を書いてくれました。橋口くんって、色んな意味で強烈じゃないですか。

──いい意味で、ミュージシャンぽくないですね(笑)。

藤木:作る曲も独特で、ちょっと鬱屈してるというか。歌詞をよく読むと、そこまで思わなくてもいいんじゃない?と思う部分もありながら、でも自分が歌うと、また聴こえ方が違うなと思ったし、昔歌っていた曲に似ている部分もあるなと感じました。

──「ミチタリタセカイ」のメロディを書いたHALIFANIEは、前回のツアーにも参加したドラマー・張替智広さんのユニットです。

藤木:ツアーのメンバーは、スケジュールが合うと時々集まったりしているんですよ。みんなでただお酒を飲むだけなんですけど。それで2015年の新年会の時に、ハリーくんが“藤木さんに曲を書いたんです”って言ってくれて、すごくうれしくて。みんな当然いい人だけど、でも本当の所って人間どう思ってるか他人にはわかんないじゃないですか?

──というと?

藤木:役者をやってる俺が音楽をやることに対して、どんな思いで参加してくれてるのかな?って。そこはやっぱり怖くて聞けないし。ハリーくんは特に、一番最後に参加してくれた人で、自分でバンドもやっていたわけだから。そういうハリーくんが、僕のために曲を書いたと言ってくれて、すごくうれしかったんですよ。これは絶対アルバムに入れたいと思って、彼の書いた曲に、僕が歌詞をつけました。

──いい話です。

藤木:ファンに対する感謝ということを、自分の作詞作曲した曲で言えなかったので、逆にこっちを、今まで一緒に歩いてきた人に対する曲にしたいなと思ったんですよ。そういうコンセプトは明確にありました。

──そしてもう一人、大切なゲストは松下奈緒さん。川村結花さんの作った「愛してる」で、素晴らしいピアノを弾いています。彼女との共演は、どんなふうに実現したんですか。

藤木:今回、役者デビュー20周年のお祝いというわけじゃないですけど、何かそういうことをしようと思ったんですよ。いろいろ考えてる中で、そういえば松下さんはピアノを弾いて音楽活動もやってらっしゃるし、2011年に『CONTROL~犯罪心理捜査~』というドラマをやった時に、二人の“バディもの”をやらせていただいたんですよ。だからもしも、松下さんにピアノを弾いていただけるんだったら、役者をやってる自分の面も出せるのかな?と。でも、自分でコンサートをやっているような人が、俺のバックで弾いてくれないだろうなと思って、駄目もとで聞いたら、藤木さんの頼みならって、即答で“やります”と言ってくれて。

──それはうれしいですね。

藤木:すごくうれしかった。それで、松下さんは自分でピアノの曲も書きますけど、歌ものもやっていて、川村結花さんが何曲か書いているんですよ。あ、こんなところでつながったんだって、すごく思いました。で、せっかく参加してくれるんだったら、松下さんのピアノをフィーチャーした場面を作りたいとシライシさんに言ったら、“ピアノ・バージョンを作っちゃおう”ということで、2バージョンできたんですよ。

──ピアノの録音には、立ち会ったんですか。

藤木:立ち会いたかったんですけど、仕事があって、遅れて駆けつけた時にはすでに終わっていて。入れたものを一緒に聴きました。実はついさっき、松下さんのラジオにゲストで出てきたんですけど、“弾いてる姿は絶対に見せたくないから、藤木さんが来る前に録り終わろうと思って頑張りました”って(笑)。

──あはは。何ですかね、その心理は。

藤木:やっぱり照れくさかったみたいです。あんなに素晴らしいピアノを弾くのに、どこかで“自分は役者だから”という意識があって、音楽の現場に行くと気後れする、みたいなことを言っていて。俺なんて、そう思うことは腐るほどあるわけで(笑)。“そうか、松下さんですらそう思うんだ”って、そこは似てるのかなと思いましたね。しかも向こうからしたら、曲の伴奏だから、もうちょっと楽なものを想像してただろうけど、松下さんが弾いてくれるならと、どんどんふくらんで、音数は多いし、サビのバッキングは16分(音譜)でずっと続くし、大変だっただろうなと思います(笑)。よく弾いてくれたなと思います。

──いろんな人との縁がつないだアルバム。節目になる作品ですね。

藤木:ミニアルバムですけど、今までの、そして今現在の自分が詰まったものになったんじゃないかと思います。

──そして久々のツアーを、8月にやりますね。今のところ、何かイメージはありますか。

藤木:イメージしかないです(笑)。まだ具体的なことはまったくないので。いつもは、リハーサルをやってそのままツアーに行くんですけど、今回は変則的で、リハーサルをやってから、『海辺のカフカ』のニューヨーク公演に行って、帰って来て、すぐツアーが始まっちゃうんで。それに対しての不安はあるんですけど、それはしょうがない、頑張るしかないです。

──新作からは全部やります?

藤木:歌ものは全部やります。それを軸にしつつ、3年振りのツアーなので、あんまり前回のことは気にしないで、今やりたい曲、みんなに聴いてもらいたい曲、みんなが喜んでくれるかな?という曲を、演出も含めて、出し惜しみせずにやるつもりではいます。まあ、予定ですけどね。実際見に来て、言ってたことと違うじゃないかと言われても、しょうがないです(笑)。

──“1989 17 Till I Die Tour”。ロック好きにはピンとくるタイトルが、いい感じです。

藤木:それを面白いなと思ってくれればいいんですけど(笑)。これを思いついた時に、超イケてるなと思ったんですよ。『海辺のカフカ』は15歳の少年で、僕はギターに出会った17歳の少年のままでという、めっちゃいいタイトルだなと自分では思ってます(笑)。

取材・文●宮本英夫

MINI ALBUM「1989」

2015年7月15日(水)発売
定価¥2,500(本体)+税/PCCA-04244
1:Go for it!(TOKYO FM「TOYOTA Athlete Beat」番組テーマソング)
2:TAXI
3:Let it Rock
4:Summer Remix仮
5:愛してる ~Piano Ver.~
6:ミチタリタセカイ
7:Sky
8:utakata
【封入特典】 ※初回生産分のみ
藤木直人「1989」発売記念 スペシャル応募キャンペーン応募ハガキ

ライブ・イベント情報

ライブツアー情報 <Naohito Fujiki Live Tour ver11.0~1989 17 Till I Die Tour~>
8/6(木)よこすか芸術劇場(神奈川)
8/13(木)中野サンプラザ(東京)
8/14(金)中野サンプラザ(東京)
8/16(日)愛知県芸術劇場 大ホール(愛知)
8/29(土)オリックス劇場(大阪)
■一般発売日:7/12(日)
■お問い合せ
神奈川:045-671-9911(キョードー横浜)
東京:050-5533-0888(ディスクガレージ)
愛知:052-320-9100(サンデーフォークプロモーション名古屋)
大阪:0570-200-888(キョードーインフォメーション)

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