【ライブレポート】大合唱の感動と歌の力を伝えるニュータイプの超大所帯グループ、Be Choir。
ソプラノのSAK.とアルトのKayoが、本格的なゴスペル・スタイルで聴かせる「Oh happy day」は、映画『天使にラブソングを2』で使われていたので、知っている人も多いはず。コーラスのボリュームを上げたり下げたり、オーディエンスを巻き込んで歌わせて、歌い終わると会場の温度が少し上がったようにさえ感じる。そしてMCタイム。実は相当に苦労したというアルバムの制作秘話をひとしきり語ったあと、その中でも特に強い思いをこめた1曲「ムジクス」を長谷川のソロで。彼の声は芯の強い伸びやかなテナーで、ソウルフルなコブシを軽く効かせながら響かせる、心地よいものだ。
ここでクワイアが一旦ステージを降り、再びHiro-a-keyがリードをとって、メロウなR&Bチューンの「You Move Me」を。そして美しいハイトーンが光るTomをフィーチャーした「When I See Your Grace」と、ゴスペルとR&Bとを融合させたエモーショナルなタイプの曲を2曲続けて。ブラック・ミュージックへの深い愛情を感じるパートを経て、次の「LIFE」はこの日のハイライトと言ってもいい、圧巻の歌唱だった。照明を落とし、真っ暗な中で長谷川がアカペラで歌いだす。徐々にステージに戻ってくるクワイア。一気にライトがつき、壮大なコーラスが盛り上がってゆく。曲はゴスペルというよりは三拍子のフォークソングと言っていいような、愛らしいメロディの曲で、母親への感謝を綴った歌詞が素直に胸に響く。このままひと息にエンディングか、と思いきや、陽気なレゲエのリズムに乗せた「Give Your Love」でもうひと騒ぎ。演奏を止め、オーディエンスとコール&レスポンスを繰り返す、長谷川も楽しそうだがオーディエンスはもっと楽しそうだ。
「『Lift』には二つの意味があります。一つは、暗いところから明るいところへ上昇していく曲のイメージで、もう一つは、デビューからいろんな人に持ち上げてもらってここまで来られた、ということです」
感極まり、涙を隠すために後ろを向いてしまった長谷川の代わりに、次の曲のリードを歌うChihiroが曲の説明をする。本編ラスト曲「To Our Children」は、この世界で生きて行くのがつらい子供たちのために、ごめんなさい、ありがとう、そして私たちも頑張るよという歌です── アルバム『Lift』の中でも特にメッセージ性の強い曲を、エモーションいっぱいに歌うクワイア。言葉はいらない、感動的なシーンだ。
アンコール。笑顔を取り戻した長谷川が、自分の体験談を交えて語った“動けば風が起きるんだよ”というテーマを、そのまま歌詞に織り込んだ「風にまかせて」は、アコースティック・ギターと長谷川の歌だけという、フォークソング風のシンプルな曲。これもまた、Be Choirの大切なアナザー・サイドなのだろう。そして本当に最後の最後、バンドメンバーとクワイア、ゲスト・ボーカリストを全員呼び込み、「Oh happy day」と同じくゴスペルのスタンダード「Joyful,Joyful」を盛大に歌いだす。リードをとるのは、素晴らしく伸びるテナー・ボイスの持ち主、吉岡悠歩。躍動感あふれる曲調が、徐々にサンバのリズムへとテンポアップし、オーディエンスの盛り上がりに応えて長谷川が客席に飛び降りてハイタッチを繰り返す、熱いフィナーレのあと、ステージの上も下も問わず、会場全体から沸きあがった大きな拍手は、この日のライブを象徴するものだった。
「ありがとうございました!Be Choirでした!」
メンバーが去ったあと、ステージ背後のスクリーンに映された、年末開催予定の<もしもゴスペル・クワイアのBe Choirと○○がコラボレーションライブをしたら>第三弾のお相手は、なんとV系ボーカリストのKAMIJOだった。KAMIJOとクアイアの合体という、予想の斜め上を行く大胆な発想力には、「すごい」と言うしかないだろう。日本でも有数の本格派ゴスペル・クワイアにして、異種格闘技にも積極的に挑み、聴き手を笑顔にするプランを日々練っている、オーディエンス参加型の音楽集団。その名はBe Choir。覚えてほしい。
取材・文=宮本英夫
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2015年7月18日(土)発売
BYOM0006 ¥2,500(税込)
発売:BYO-MUSIC
販売:DISK UNION
[収録曲]
1. Lift
2. 雑食Animal
3. 彼岸
4. 種
5. Give Your Love
6. When I See Your Grace
7. Keep On Tryin’
8. Last Be
9. You Move Me
10. LIFE
11. ムジクス
12. Our Eyes
13. To Our Children
14. 風にまかせて
◆Be Choir オフィシャルサイト