【ライブレポート】HAPPY、サイケポップ・バンドとしての成長「踊り狂って、俺らの音楽の一部になってくれたら」

ポスト

そしてライブも後半に向かう頃には、2013年あたりだろうか、HAPPYが京都や神戸など地元関西のライブハウスシーンから名前をあっと言う間に全国区へ広めた時期のことを思い出していた。みんな、我先にと、宝物を見つけたように「HAPPY最高」とTwitterで呟いていたのだ。メンバーにとってまったくリアルタイムではない時代の海外のロックミュージックを、持ち前のセンスとポジティブなテンションで楽曲にまとめ上げる若い才能の登場だ、誰だって否応なく舞い上がってしまう。この日のライブも、「I Fought The Law」「Stand By Me」をカバーし自分達のフェイバリットを表現していた。

そういうセンスやテンションにさらに磨きをかけながら、ミュージシャンとして自己表現することの自覚が芽生えているのがHAPPYの現在地だろう。やはり「R.A.D.I.O.」がその意味で象徴的で、ダンスビートも、oh~oh~というサッカーW杯のテーマソングのように大陸的なコーラスもライブのアンセムとして機能性抜群、加えて何よりそのメッセージ性だ。「もっと満たして!」「もっと新しいのを!」と、無邪気に訴える。だがそれとともに、彼らはそんなフレッシュな欲求を自分達に向けているようで、HAPPYというバンドをもっと高めようという向上心が現れているように聴こえた。



結成から2年程度で、世界的なショウケース・イヴェント<SXSW>に出演するなど、1stアルバム(『HELLO』/2014年8月リリース)を発表する前から大きな期待を受けてきた彼ら。だけど、その<SXSW>を含めた初のUSツアーでも現地でナチュラルに和気あいあいとコミュニケーションを交わしながらギグした彼ら。今回のツアーファイナルも、凄くいい意味で余計な重みを持たせず、一度限りしか訪れないこの夜を純粋に楽しんでいたことが、とても印象深い。そんなふうに毎日を新しいものとして過ごせたら最高だということまで、HAPPYに教えられている気がした。

それにこんなことも思った。無駄を嫌ってスピードが速くて、間違えるとすぐにツッコまれてシリアスで、そんなムードがまだ続きそうな世の中で、本編最後に演奏した「To the Next」には心の底から癒され励まされた。大きな大きな幻覚を描くスロウテンポとそこから沸き上がってくる芯のあるビート、夢のようにキレイなメロディ── その豊かな音楽性に、やっぱりHAPPYは、日常を生きるために必要なサイケデリックミュージックだと感じることができた。だからこそ、これから真価が問われるHAPPYというバンドの音楽の未来が、ますます本当に楽しみになった。



Text by:RYOKO SAKAI
Photo by:Kazumichi Kokei

  ◆  ◆  ◆



<HAPPY Tour 2015 To The Next> [SET LIST]2015.06.26(Fri) @恵比寿リキッドルーム

1. The world began with a number
2. Cation
3. Cycle Of Life
4. Lucy
5. Time Will Go On
6. Swinging Singer Star
7. Lovely Life
8. Government Center
9. Lift This Weight
10. E
11. Magic
12. Run Run Run
13. Teens Communication
14. I Fought the Law
15. R.A.D.I.O.
16. Pity Xmas
17. Wake Up
18. To the Next

EN1. Stand By Me
EN2. Win Key Gun

  ◆  ◆  ◆

80KIDZ E.P.『80KIDZ X HAPPY(仮)』

2015年09月16日発売
DDCB-12079 ¥1,500+tax
※完全初回限定生産
※全5曲収録予定

この記事をポスト

この記事の関連情報