【インタビュー】Salley、傷を持っているのにそれを乗り越えたり受け入れたりしながら輝いている『エメラルド』
■夏が行ってから、冬が来たほうがいいんじゃないか?とか
■冬が来てから夏が行くと1年が短すぎないかとか(笑)、曲順も迷ったんです
──肉感的な言葉が多いんですよね。指をからめる、とか、体に触れる、とか。
うらら:女性にもっと共感してもらえるほうがいいよなと思ったんです。女の人にしかわからない気持ちはたくさんあるよな、と思ったし、何だったら、彼氏のところにこの『エメラルド』を持って行って、“こういうことなんだよ!”って言ってもいいぐらいの(笑)。それぐらい、書いちゃってもいいかなと思いました。
──どうしましょう、上口さん。うららさん、どんどん進化していきますよ。
上口:行くところまで行っていただければ(笑)。
──相変わらず、歌詞についてはお任せですか。
上口:そうですね。1曲だけ“ここにこの言葉を入れてほしい”って、珍しく注文したことはあったんですけど。
うらら:「夏はゆく」ですね。
上口:でもそれは、ディレクターを筆頭に、却下されました(笑)。
うらら:上口くんの希望通り一回書いたんですよ。でもディレクターに“全部消していいから”と言われて(笑)。結果、いい歌になりました(笑)。
──すごい気になる(笑)。どこの部分ですか。
上口:“ゆらゆら”が、“ハローハロー”だったんですよ。AOAO、という響きがずっと頭の中で鳴ってたので、それとメロディがリンクしたら印象に残りやすいかな?って、余計なことを思ってしまいました(笑)。
──それにしても、この「夏はゆく」。先にシングルで出た「冬が来る」とセットになってるみたいで、面白いですよね。
うらら:そうなんですよ。詞の内容からして、タイトルが「夏はゆく」しかないと思ったんですけど、「冬が来る」「夏はゆく」を作っちゃうと、次は「春は散る」とか、作らなきゃいけなくなるんじゃないかな? と思って、迷ったんですけど(笑)。でもこのアルバムを通して、「キスしてbaby」みたいに夏の恋の歌があって、「夏はゆく」みたいにせつない夏の情景もあって。いろんな表情の夏が見られるので、「夏はゆく」というタイトルの曲があっても面白いかなと。
──面白いです。アンサーソングって、つい聴きたくなるし。
うらら:でも、どっちもただのせつない曲なんですよ。冬が来ようが、夏が行こうが、どっちもせつないという(笑)。
──中身はあんまり変わらない(笑)。季節が違うだけ。
上口:曲順も、一瞬迷ったんですよ。“夏が行ってから、冬が来たほうがいいんじゃないか?”とか(笑)。冬が来てから夏が行くと、1年が短すぎないかとか(笑)。
──それ面白いです(笑)。でも曲調的にこの順番ですよね。8曲目に「冬が来る」で、11曲目に「夏がゆく」。
うらら:「冬が来る」には、シングルの持つ強い力があるので。7曲目の「グッバイ」で落としてからの、ドーンと派手に盛り上がる位置に置きたかったので。
──個人的に、うららさんの歌のエモさで言うと、「グッバイ」が最高です。
うらら:これは作詞家のjamさんに歌詞を書いてもらいました。曲自体は昔からあって、上口君とディレクターで、細かいところまでメロディを詰めて、歌詞の言葉数も細かく決めていたので。だったらプロの人にお願いして、私は歌うことに専念したほうがいいと思って、そう言ったんです。
──このせつなさはただごとじゃないです。歌手に専念したからこそ、この説得力が出たのかなと思ってます。
うらら:自分でも、ほかの曲とは歌のテンションが違うなと思います。
──あと、歌がすごくいいなぁと思うのは「Key」ですね。大好きです。
うらら:「Key」の評判が、すごくいいですね。
上口:ね。
うらら:いろんな人が“良い”と言ってくれます。
上口:(スタッフに)ビデオ、作ってくれませんか?(笑)
──サウンドも、歌詞も、歌い方も。このアルバムでいろいろ、扉を開けましたね。
うらら:前と同じことをやるのは違うと思ったので。でも「夏はゆく」はSalleyっぽい曲だし、芯の部分は変わっていないと思うんです。自分たちがいいと思うものしか出したくない、という思いはずっとあるので、芯の部分は変わらずに、その上で違うことをちゃんとできたのかなと思います。
上口:たとえば「流星ラヴァー」のトラックは田中隼人さんで、ほかの曲に比べるとキラキラしてると思うんですけど。自分には思いつかないアレンジをしてくれて、でも曲は自分の曲なので、中身は変わらないけど違う洋服を着せてもらったみたいな。この曲はどっちかというと、自分たちよりも若い人に対してアプローチしてるのかなと思います。1曲目にこれを持って来たのは、若い人たちに好きになってほしいという意味でもあって、ここで間口を広げておいて、2曲目の「キスしてbaby」から徐々に自分たちの色を出して行って、本来のSalleyとしてはたぶん「籠の中」とかになってくると思うんですけど。入りやすい入口を意識したので、今までSalleyを聴いたことないという人に対して、好きだと言ってもらいたいなと。
──なるほど。
上口:1曲ごとに聴きどころは散りばめられているので、あとはリスナーがそれを聴いて、この歌詞が好きとか、このギター、このドラムがカッコいいとか、掘り下げて行けるぐらいに器の大きい楽曲ばかりだと思っています。
うらら:全体的に、文句なしの1枚になりました。ジャケットのデザインも、打ち合わせから参加させてもらって、けっこういろいろ口出しさせてもらったし。この白い服も、最初はロング・スカートだったんですよ。すごく雰囲気あるし、可愛かったんですけど、“やっぱりちょっと違う気がする……”って。短パンの、もっと元気な印象にしたいから“こっちにしてください”って。
──それ、『フューシャ』の時も聞いた気がする。それまでの衣装でロングドレスのイメージがあるけど、あの時はミニスカートで、“こっちのほうが本来の私っぽい”って。
うらら:そうなんですよ。可愛い言い方をすると“小悪魔感”で、おてんば娘みたいな、そのほうが私っぽいと思うので。ただ、そこまで口をはさむと言うことは、自分のすることに責任を持たなきゃいけないということで、ただ好き嫌いを言うだけじゃなくて、自分たちの納得のいくものにしたかったんですよ。このジャケット(通常盤)も、私と上口くんだけが賛成したんですよ。“これにしたい”って。
上口:……そうだったっけ。
うらら:ええ~!?
上口:あ、思い出した(笑)。うちら二人だけだった。
うらら:そう。初回限定盤のほうは全員一致だったんですけど、通常盤のほうは、何パターンか候補がある中で、これを選んだのが二人だけだったんです。でもこれは二人のものだし、二人が責任を持ってやらなきゃいけないことだから。それは楽曲制作においても何でもそうなんですけど、今回は全部自分たちでちゃんとやりたいという思いがすごくありましたね。
──それがこのアルバムのポイントですかね。とにかく“自分たちでいいと思うものにする”。
うらら:言い訳したくなかったんです。誰かのせいにするのは本当に嫌いで、そのぶん自分たちで責任を持たなきゃいけない。そういう意味でも、“大人になった1枚”です。
──そしてタイトルが『エメラルド』。何か秘められた意味がありそうです。
うらら:エメラルド鉱石という石はすごく硬度が高くて、ほかの石より硬いはずなのに、必ず内部に傷があって、一定方向からの力に弱いんですよ。ほかのところから叩いても割れないのに、ある角度から叩くと必ず割れる。“それは人の心と一緒だな”と思ったので。どれだけいじられても平気だけど“これにだけは触れないで”とか、すごく強そうに見えるけど“この話だけは泣いちゃう”とか。人って、どこかに絶対傷があると思うので。
──はい。思い当たりますね。
うらら:子供は傷がなくて輝いてると思うんですけど、大人で輝いている人は、絶対に傷を持っていて、それを乗り越えたり、受け入れたりしながら、輝いているんだと思うので。Salleyの曲のテーマとしても、それはすごく大きいところを占めているし、単純にエメラルドという色が好きなこともあるし。いいテーマになったと思います。
取材・文●宮本英夫
リリース情報
2015.07.08発売
【初回限定盤】
CD+DVD / VIZL-848 \3,500+税
【通常盤】
CD / VICL-64373 \3,000+税
(CD)
01.流星ラヴァー
02.キスしてbaby
03.籠の中
04.#581
05.Life
06.眩暈
07.グッバイ
08.冬が来る(Album Mix)
09.Key
10.Boys & Girls(Album Mix)
11.夏はゆく
12.Love Song
<DVD収録曲>
[Salley Live Tour 2014 Spring“fuchsia”]
Live at LIQUIDROOM on April 26,2014
1.その先の景色を
2.Agreed Greed
3.カラフル
4.Call
5.リセットの呪文
6.各駅停車
7.きみのヒーロー
8.fuchsia
9.あたしをみつけて
10.愛の言葉
11.赤い靴
12.プレゼント
13.青い鳥
14.green
ライブ・イベント情報
2015年7月19日(日) 東京・duo MUSIC EXCHANGE
<「エメラルド」発売記念 フリーライブ&サイン・握手会>
■名古屋会場
日時:2015年7月10日(金)18:30集合 / 19:00スタート
場所:タワーレコード名古屋近鉄パッセ店 店内イベントスペース
お問い合わせ先:タワーレコード名古屋近鉄パッセ店052-586-3155
■東京会場
日時:2015年7月18日(土)15:00スタート
場所:タワーレコード新宿店 7F イベントスペース
お問い合わせ先:タワーレコード新宿店03-5360-7811
■大阪会場
日時:2015年7月20日(月・祝)12:30 集合 / 13:00スタート
場所:タワーレコード梅田NU茶屋町店
お問い合わせ先:タワーレコード梅田NU茶屋町店06-6373-2951
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