【インタビュー】前代未聞・非常識極まる“快速づくし”の快速東京ってナニモノ?

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ほとんどの楽曲が1分前後という圧倒的なスピード感を活かした音楽性や、激しくいきあげるライブが人気を呼んでいる快速東京。そんな彼らが、レッドブル・スタジオ東京を使用して5日間で約アルバム1枚分のレコーディングを行ない、5日目にフリー・ライブを開催し、その直後から音源のフリー・ダウンロードも開始するという、まさに“快速づくし”の企画に挑戦する。彼らが今回の“快速レコーディング”に込めた想いや意気込みなどについて、メンバー4人に語ってもらった。

◆快速東京画像

――BARKSでインタビューをさせて頂くのは初めてですので、まずはバンド・プロフィールをお願いします。

福田哲丸:僕たちは全員、多摩美(多摩美術大学)の出身で、在学当時は軽音サークルみたいなものに入っていたんです。多摩美では毎年<納涼祭>というイベントがあって、各サークルの1年生はそこで出し物をやらないといけなくて。僕が<納涼祭>でバンドをやらなきゃと思って組んだのが、快速東京です(笑)。僕とドラムの(柳田)将司と、ベースの(藤原)一真は同学年だけど、ギターの一ノ瀬さんは2学年上なんですよ。一ノ瀬さんは別のバンドをやっていて、速い曲で、ギターをワァーッと弾いていたので、最初に一ノ瀬さんに声をかけることにして。一緒にバンドをやってくれませんかとお願いしたら、「ああ、良いよ」と、すごく軽いノリでOKしてくれました(笑)。ギターが決まって、じゃあドラムは将司が速いのを叩けるからあいつを呼んで、みんながいない部室で一真がこそこそギターを弾いていたから、あいつをベースにしようということになったんです(笑)。

一ノ瀬雄太:一真にベースお願いしたら、「良いの?」ってすごく嬉しそうな顔をしていました(笑)。

哲丸:そう(笑)。それで、ベースは弾けるのかと聞いたら、弾いたことはないけど、多分友達のベースをパクッてこれると言ってて(笑)。それで、この4人でスタジオに入って“バーン!”と音を出したら、1日で5~6曲できたんです。

――相性が良かったんですね。音楽性は、メンバーを探している段階で決まっていたのでしょうか?

哲丸:決まっていました。もともと僕と一ノ瀬さんは、曲が速くて短いバンドをやりたいと思っていたし、<納涼祭>は出し物なので。みんなが宴会をしているところで、「俺達の音楽は、こうなんだ!」というものを見せるよりも、“ガシャーン!”とやって、“ドシャーン!”となって“ピッ!”と終わるものが良いだろうと。要は、バンドというよりも一発ギャグみたいなものをイメージしていたんです(笑)。

一ノ瀬:そもそも持ち時間が6分とかだから(笑)。それに、剣道部はスイカを投げて木刀で割ったりするわけですよ。そういう中で2曲くらいやるのは普通だし、5~6分の壮大な曲とかをやったら盛り下がるじゃないですか。“木刀スイカ割り”に対抗できることを楽器を使ってやらないといけないということで、短くて勢いがある曲をいっぱいやろうということになったんです。

哲丸:6分あるなら、6曲やろうみたいな(笑)。

――いいですね(笑)。そういう形で始めた音楽性をそのまま引き継いだ結果、多くのリスナーに支持されたんですね。

一ノ瀬:引き継いだというか、それしか考えなかった。<納涼祭>の時に、すごく盛り上がったんですよ、わずか6分なのに。それが、すごく良い印象として残ったし、僕らは音楽に対してあまり欲がないというか。快速東京というバンドでやるならこういう音楽だろうというところで4人の意見が一致しているんです。メンバーそれぞれが好きなものは、実は意外とバラバラだったりするんですよ。

――バンド重視のスタンスと言えますね。では、それぞれの音楽的なバックボーンなども教えていただけますか。

哲丸:僕は、宇宙で一番好きなのは、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンです。でも、快速東京を結成するタイミングでは、less than TVというレーベルのバンドがすごく好きでした。高校生の頃にそのレーベルのバンドを観て、すごく衝撃を受けて、足しげくライブに通っていたんです。その影響もあって快速東京を結成した時は、速くて、メチャクチャなものをやりたいなという気持ちがありました。

柳田将司:僕は、高校1年くらいからドラムを叩くようになって…。

一ノ瀬:それまでは、『ドラムマニア』にハマっていたんだよな?(笑)

柳田:そう(笑)。中学校の頃に『ダンス・ダンス・レボリューション』とか『ドラムマニア』といった“音ゲー”が流行ってて。もとを辿れば、そこです(笑)。ロックに目覚めてからはずっとHi-STANDARDとかメロコアの速いヤツとかを聴いていて、最近はメタルも聴くようになりました。メタリカとかスレイヤーが好きです。

藤原一真:さっき話が出たように、俺はもともとギターを弾いていて。ギタリストだった頃は、快速東京に近い感じの音楽をやっていました。リスナーとしては何でも聴くけど、強いてあげればジョニー・サンダースとか、ニューヨーク・ドールズとかが好きです。

哲丸:4人の中では、一真が一番洋楽に詳しいかもね。もう、なんでも聴くから。

一同:そうだね。

一ノ瀬:僕は10代の頃からギターが大好きで、メタルからブルースから、とにかくギタリストが前に出るジャンルであれば、ありとあらゆるものを聴いていました。特に、エリック・クラプトンが好きでしたね。あとは、ジミ・ヘンドリックスとかジミー・ペイジとか。1960年代末のイギリスのロックは大好きです。でも、1970年代のAC/DCとかも好きだし、ヴァン・ヘイレン以降のヘヴィメタルやスラッシュ・メタルとかも一応、順番に通っているし、'80Sアメリカン・ハードコアみたいなところも好きです。快速東京を組んだ時は、'80Sアメリカン・ハードコアをイメージしていたかな。サークル・ジャークスとか、ブラック・フラッグとか。サークル・ジャークスみたいな音楽をやるものだと思って始めたけど、メンバーみんな好きなものがバラバラで、うまくいかなかったのが快速東京の音楽だと思ってます。

――それが、良い方向に出ましたね。快速東京はパンクバンドと認識されているようですが、音を聴いてパンク感のあるロックという印象を受けました。

一ノ瀬:そう言ってもらえると嬉しいです。僕らはパンクをやっている気はないというか、自分達をパンクと言うのはおこがましい。周りにはもっと本気のパンクやハードコアの人達がいましたので、僕らはパンクですと言えるようなほどポリシーも何もなかったんです。

哲丸:最初の2年間は、そういうこともあって学校内でしか活動していなかったんです。ライブハウスは、そういう本気でやっている人達の大切な場所だから、そこに土足で上がるようなことをするのはマズいだろうということで(笑)。

一同:そうそう(笑)。

一ノ瀬:僕とか哲丸は高校生の頃に、それぞれ高円寺の20000VOLTとか、改装前の新宿ANTIKNOCKとかに通っていて。そういう本物のハードコアの人達が集まっている場所に行って、そこで滑稽な大学生が“俺達パンク!”みたいなことをやっているのを見てダセェと思っていた。だから、自分達が美大でのうのうと、ちょっとうるさいことをやってて、別に何のポリシーもないのに、ハードコアですとか言えるわけがない…みたいな感覚があるんです。だから、雑誌の取材とかでパンクとかハードコアとか言われると、「ちょっと待ってください。その言い方は、やめてください」と言ってしまう。快速東京はハードロックでもないし、もう分類するのはメンド臭いから“ロック”で良いかな~と。



――本物のハードコアを目指すのではなく、快速東京であり続けたのは正解だったと思います。では、続いて今回行なわれるレッドブル・スタジオでの“快速レコーディング”の話をしましょう。5日間でレコーディングとミックス・ダウンをして、さらにライブとフリー・ダウンロードを実現させるという企画を聞いた時は、どんなことを感じましたか?

一ノ瀬:今回の企画は、話が来たんじゃなくて、僕らが提案したんです。

――えっ、そうなんですか?

哲丸:はい(笑)。なにか面白いことをしたいなと思って。

一ノ瀬:渋谷にレッドブル・スタジオ東京ができたという噂を聞きつけて、Twitterに「超良いスタジオ。使いたいな」と呟いたら、直接スタジオの担当者から返事が来て。それで、とりあえず打ち合わせに行くことにしたんですけど、普通にレコーディングするだけじゃつまらないなと思って。レッドブル・スタジオ東京は、なかなか設備が良いんですよ。そういう環境で、高級感あります…みたいな音源を作っても面白くないなと。それで、“快速レコーディング”というのはどうでしょうという話をしたら、是非やってくださいということになりました。

哲丸:今になって、言っちゃたなぁ…と思うところもありますけど(笑)。でも、僕らはなにをやる時も大喜利なんですよ。今回は、“レッドブルのスタジオで、なにかやりましょう”という、お題を出されて。それで、なにをやろうかなと考えて、僕らは“快速”という名前だから、快速でレコーディングして、快速でアップロードできるようにして、ライブもすぐにやっちゃうというダジャレの快速パッケージはどう?…みたいな(笑)。

――自分達発信の企画だとは知らなかったので、驚きました。

藤原:僕と将司も知らないところで、そういうことになっていました(笑)。

柳田:一ノ瀬さんがレッドブルさんとそういう話をしている頃、僕らは普通に仕事をしていました(笑)。

哲丸:だから、2人は、いまだによく分かってないという(笑)。

柳田:うん、分かってない(笑)。

藤原:でも、なんとかなるよ、きっと(笑)。

――な、なるほど(笑)。今回のレコーディングでは、何曲くらい録る予定でしょう?

哲丸:10曲です。新曲が12曲くらいあるけど、その中から選んで10曲くらいになると思う。

一ノ瀬:5日といっても初日はたぶんセッティングで終わるし、5日目はミックス・ダウンをするから、実質録れるのは3日だけですね。

――ということは、スタジオ・ライブに近い感じのレコーディングでしょうか?

一ノ瀬:いや、普段のレコーディングと同じように、まずドラムとベースを録って、ギターを入れて、歌を入れて…という形でやろうと思っています。1日目に全曲のベーシックを録って、2日目にギターを重ねて、3日目に歌という流れでいこうかなと。短時間で仕上げるレコーディングだからといって、スタジオ・ライブの一発録りというのは面白くないじゃないですか。時間がない中でちゃんと手をかけたものを作ることに意味があると思うし、音源を作るからには繰り返し聴いてもらえるものにしたいから。そういえば、ブラックサバスの1stアルバムは、2日で作ったらしいんですよ。それを考えたら、5日もあるというのは贅沢です(笑)。

――時間をかけなくても、集中することで良いものは作れると?

一ノ瀬:そう。本当に短い時間で音源を作っているインディーズ・バンドはいっぱいいるし。それに、僕らはこの間スタジオ・ライブでレコーディングしたんですけど、20何曲録って、2時間くらいで終わったんです(笑)。

一同:終わった(笑)。

哲丸:だから、スタジオ・ライブを録るなら5日もいらないんですよ。とか言いつつ、今回も最後の2~3曲だけ、“せーの!”になってるかもしれないけど(笑)。

藤原:その時は、その時でしょう(笑)。今回のレコーディングは時間がないので、俺は将司のふくらはぎが攣らないことを願っています(笑)。

柳田:運動会だからな(笑)。でも、大丈夫だと思う。今回のレコーディングは久しぶりにプロデューサーがいなくて、セルフ・プロデュースなんですよ。プロデューサーがいるのがツラいということではないけど、よりリラックスして臨めるんじゃないかなというのがあって。良いテンションで、一気にいけるような気がしています。

藤原:俺は、どうだろう…時間がないから、間違えないようにする(笑)。良い音を出して、間違えない。それだけです(笑)。

一ノ瀬:最近はプロデューサーがいないし、前のアルバムとかはベテランのエンジニアさんを呼んだけど、ここ最近は同世代の友達にエンジニアをやってもらっているんです。だから、わりと僕が一番忙しいんですよね。他の楽器を録ってる時も全部見てて、ギターは3本くらい重ねるし、ミックス・ダウンにも付きっきりになるから。5日間、体力が持つかなと思って、それがちょっと心配です。

哲丸:大丈夫だよ、レッドブルいっぱいあるから(笑)。

一同:おおっ、そうだ!(笑)

一ノ瀬:…そうだね(笑)。全体の進行は心配していないです。時間がないからといって、とりあえず録って、ヤバいところは修正して…みたいなことはしない。それは、ポリシーとしてあるから。ドラムが暴れていたりすると修正する人が多いじゃないですか。でも、ドラムが暴れているほうがグルーヴ出ることもあるんですよ。あとは、録った後にエフェクト掛けるから、それぞれのパートのタイム感やサステインの長さがズレるというのもあって。録る時にそこまで作りながらやるのが一番イイですね。良いグルーヴが生まれるわけがないんですよね。修正したり、後でコンプを掛けたりすることが音を洗練させる作業だと思っている人が多いけど、僕はそうも限らないと思ってます。エンジニアの鈴木くんとはプライベートでも友達なので、音作りの相談に関してもお気楽気分で良い感じでいけると思います。

哲丸:僕は、風邪をひかないようにすることくらいかな。でも、声が嗄れたら嗄れたで、それを活かせば良い気がするし。

一ノ瀬:将司が歌うという手もあるしな(笑)。

柳田:えっ、なに?(笑)

哲丸:アハハ(笑)。まぁ、適当…というと語弊があるけど、楽しくやりたいなと思っています。

一ノ瀬:そうだね。僕らは仕事をしながらバンドをやっているから、ノルマを課せられることもないし、なにかに縛られたりすることもない。今回の企画も別にお金をもらうわけじゃないし。本当に好きでやっていることだから、楽しくなかったらやる意味がないんですよ。それに、僕らはレコーディングが好きなバンドなので、今回も楽しくやれるんじゃないかなと思っています。

――さすがです。今回録る楽曲の方向性は、どんなものになりますか?

一ノ瀬:やりたかったことが前のアルバムでできたから、もう良いか…みたいなところがあって。今回はどっちかというと、初期の頃に近いかもしれない。

哲丸:今回は、本当に考えてないからね。1stの曲とかは、みんなわけが分からない状態で、ライブのことだけ考えて作って、2ndは、わりと“よっしゃ、曲作ろう!”といって作ったんですよ。で、3rdは2ndを踏まえて違うことをしようというアルバムだった。そこまででやりたいことを全部やったから、「もうやりたいことはないし、言いたいこともそんなにないし、どうする?」ということになって。それで、じゃあ考えるのはやめて、自然と出てきたものを形にしようということになったんです。だから、今回は快速東京の中でも速い曲が多くなると思います。

――完成が楽しみです。7月6日に渋谷のレッドブル・スタジオ東京で行なうライブは、どんなものになりますか?

哲丸:まだ、なにも決まっていません(笑)。

一ノ瀬:ライブに関しては、スタジオ側からの提案だったんです。僕らのほうから快速レコーディングと、快速リリースという話をしたら、「じゃあ、最終日に快速ライブとか!」と言われて(笑)。

哲丸:それで、じゃあライブやるかっていう(笑)。将司と一真は、最後にライブをやることは知っていた?

柳田:知ってたけど、本当にやるのかなって思ってた(笑)。半信半疑(笑)。

哲丸:今は、まだライブのことを考えられるところまでいっていないんですよ。ただ、今回録る曲だけを聴かせるんじゃなくて、昔の曲もやります。そうじゃないと、7分とかで終わってしまうから(笑)。でも、新しく作った曲は、ライブでできるのかな?

一ノ瀬:だから、6日は朝から練習だよ(笑)。フリー・ライブだし、ぜひ観に来て欲しいですね。来るとレッドブルたくさん飲めるし(笑)。ただ、スタジオでやるライブなので、人数制限があるんですよ。応募方法は、快速東京のSNSをチェックしてください。で、ライブ後に始まるフリー・ダウンロードに関しては、レッドブル・スタジオ東京のホームページに詳細が載っています。

藤原:ライブは、どうだろう?……間違えないようにします(笑)。

一同:さっきと同じじゃねぇか(笑)。

哲丸:でも、まだ曲を録る前だし、歌詞も1曲も書いてないから。今は、それくらいしか言えないよね。僕は、ライブも気楽に、楽しくやります。バンドが楽しそうにしていないと、観ている側も楽しめないだろうから。新曲だとか、場所がスタジオだとかいったことでナーバスにならずに、楽しくやろうと思っています。

柳田:僕は、めっちゃ狭いライブハウスとかが好きなんですよ。狭い箱はいろんなことがダイレクトに伝わるし、お客さんとの距離が近いのも良いなと思っていて。レッドブル・スタジオ東京も狭いライブハウスみたいな状態になるだろうから、きっと熱いライブを見せられると思います。

取材・文:村上孝之


<快速東京ライブ at Red Bull Studios Tokyo>

7月6日
@Red Bull Studios Tokyo
※OPEN 19:30/START 20:00
※レコーディングした新曲もお披露目予定
※入場:無料
※要予約、定員に達し次第受付終了
※予約受付→info@aryjpn.com
※ライブ終了後4枚目となるアルバムを快速配信

<4枚目のアルバムリリース記念ワンマンライブ>

7月17日
@新代田FEVER
※OPEN:19:30/START20:00
※入場:無料(2ドリンク代として1000円)
※予約受付:kaisoku_ticket@fever-popo.com
※当日券:ASK
※フロアライブ
※18:30-物販スペースにてARAYAJAPANサマーセール♯1開催

◆レッドブル・スタジオ東京オフィシャルサイト
◆快速東京オフィシャルサイト
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