【インタビュー】唯一無比の存在Superflyが、ニューアルバム『WHITE』で“誰かに染まる”理由。
自らを真っ白なキャンバスになぞらえ、彼女はそこに何を描いたのか? 約3年振りとなるSuperflyの5thアルバム『WHITE』は、初顔合わせを含む多くのアーティストの楽曲提供を受けた、過去最高にカラフルなロック・アルバム。であると同時に、ヴォーカリスト・越智志帆の新たな扉が次々と開かれて行く、最高にスリリングなアルバムになった。前作『Force』を作り終えた時、“ここが限界だ”と思った彼女は、いかにしてピンチをチャンスに変えていったのか? 注目のロングインタビューだ。
◆Superfly ミュージックビデオ映像
取材・文◎宮本英夫
◆ ◆ ◆
■自分以外の人になりたいという気持ちもあったし、
■自分じゃなくても全然いいや、と思ってました。
越智志帆(以下、志帆):みずみずしい! いただきます(笑)。初めて言われました。
── 再出発とか、原点とか、そういう言葉が似合うアルバムだと思ったんですよね。最初に聴いた時に。それがとてもみずみずしく感じられて。
志帆:ああ~。でも、そうですね。再出発というか……。
── 別に、何かが終わったということでもないんでしょうけど。
志帆:いや、でも、終わった感じがしたんですよ、『Force』の時に。終わったというか、自分で自分のことを見つめて、掘り下げて、絞り出すように作るやり方は、ここが限界だなと。『Force』を作り終えた時に、完璧じゃないけど、全力を出し切ったと思えたんですよね。これ以上は、突破したくても突破できないと思ったし、次はやり方を変えなきゃとは思ってました。体制を変えて、いろいろ試していかなきゃいけない時期に来てるのかな?という感じではありました。
── 今度のアルバムは、歌い手に徹してる感じがありますよね。
志帆:そうですね。一番、そういうアルバムかもしれない。
── そこが、再出発とか原点という印象になったんだと思います。とにかく歌いたい!という衝動がダイレクトに伝わって来たので。
志帆:表現欲がすごく高まってたんですよね、ライブをいっぱいしたから。“私、こんな声出るんだ”とか、どんどん体に歌が沁み込んで行く体験を、ツアー中にいっぱいしたんですよ。“今ならいろんな声が使えるかも“と思って、それを使いたかったというのはあります。表現欲も高まってたし、自分以外の人になりたいという気持ちもあったし、一回出し切ってカラッポになったんで、自分じゃなくても全然いいや、とか思ってました。
── それは、どちらかといえばネガティブな感情なんですか。
志帆:カラッポになった時に、悲しい気持ちにはなったんです。歌詞も書けなくなっちゃって。たぶん自信がなくなったんですよ、いろんなことに。モチベーションが湧かなくなっていて、無理矢理奮い立たせるようにしてやって来たんですけど、そういうエネルギーもなくなってしまって。でも何かを作りたい自分もいるし、どうするんだ?という時に、ピンチをチャンスに変えるしかないと思って、自分から出せないんだったら誰かに書いてもらおう、それを楽しもうということで、テーマが“受け入れる”ということになって。私が誰かに染まるという、その姿勢を象徴するキーワードが『WHITE』だったんですね。それが最初に決まりました、去年の年明けに。
── まさに今回のアーティスト写真や、CDジャケットのビジュアルのように。私に色を塗ってください、と。
── 今回のアルバムは、参加アーティストがとても多いので、どんどんお話を聞いていきますが。個人的にすごくハマッてるなと思ったのは、Heavenstampのふたりです。Tomoya.SさんとSally#Cinnamonさん。5曲の曲作りに参加していて、大活躍じゃないですか。
志帆:ふたりとは年が近いということもあって、一番感覚が近いのかもしれない。私はもともとTomoyaさんの曲が好きだったし、Sallyちゃんの歌詞の世界観が好きだったし。ふたりもSuperflyのライブをよく観に来てくれていて、この制作が始まるまではそんなに深く話したことはなかったんですけど、もう仲間です(笑)。特にSallyちゃんとは、時代背景とか、二人とも田舎育ちとか、青春時代のモヤモヤした思いの記憶が似てるところがあって、“あ、わかるわかる”みたいな感じで、一番共感し合える……と思ってるのは私だけかな。一方的だったらどうしよう(笑)。でも、「極彩色ハートビート」を書いてもらった時も、締め切りギリギリだったので会う時間がなくて、イメージだけ伝えたのに、すごくハイクオリティの歌詞を上げてくれて。「脱獄の季節」も、曲を聴いて“10代の気持ちが書きたい”というイメージが湧いたので、それを伝えたら、想像以上のものが返って来て、うれしかったですね。
── 「脱獄の季節」は、作曲は元JETのクリス・セスター。クリスはもう1曲「A・HA・HA」も書いてます。
── クリスの2曲は、異彩を放ってますね。エレクトロっぽい感じもあって、現在進行形のロック・チューンという感じ。
志帆:彼はもともとオールド・ミュージックが大好きなんですけど、今の音楽にもすごくアンテナを張っていて、ちょうどいいバランスになりましたね。今の音楽だけど、音色にレトロさが残っているのがいい感じだなと思いました。このレコーディングは面白かったですよ。事件ばっかり起きて、全然レコーディングが進まない(笑)。クリスは思いついたフレーズをずっと録音し続けて、ほっとくといつまでもやってるので、“まだBメロのベースやってんの!”みたいな(笑)。でも、そこまでは長いんだけど、いざ本番となると速いから。思いついたフレーズを全部録って、ミックスの時に本当にミックスする。全貌が見えてないから、どんどん変わって行く。面白いですよ。無駄があるから。
── いい言葉です。ロックに無駄や隙は絶対必要だと思います。
志帆:たぶんあと1か月締め切りが先だったら、ますます変わって行くんだろうなって思いました。隙間がちゃんとあって、そこにすごく興味をそそられて、刺激されましたね。
── 特に「A・HA・HA」は、アルバムの中でも一番チャレンジングな曲だと思いますし。
志帆:そうですね。まさかデビューした頃に、こんな歌を歌うとは思ってなかった(笑)。でもこういうのも、えへへって笑いながらやっちゃえる心境だったから。この曲がアルバムの振り幅の一番端っこにあるというか、一番変態的な曲というか(笑)。“ここまで行ける”というのが決まってたから、その間はいろいろ遊べると思ったし、この曲があったからいろいろ出来るアルバムになったなと思います。
◆インタビュー(2)へ
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