【インタビュー】flumpool、『FOUR ROOMS』に「1本の大きな木を植えて新しい根を」

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flumpoolが約1年ぶりとなるCD『FOUR ROOMS』をコンセプトディスクと銘打って5月13日にリリースした。路上ライヴから始まった原点を踏まえつつ、今の4人だからできるアコースティックスタイルを追求した曲たちは6年目の新たなチャレンジであり出発点。flumpoolの故郷や、この夏に行なわれる地元大阪での初の野外単独ライヴをイメージして書かれた新曲は想像の中の風景がどこまでも広がっていくような心地よさとスケール感で鳴らされている。

◆「とある始まりの情景 ~Bookstore on the hill~」ミュージックビデオ

どんな心境の中、彼らはflumpoolと今一度向き合い、色あせない等身大の曲たちを紡ぎ出したのだろう。メンバー4人にじっくりと話を訊いた。

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■話し合った中で出てきた共通のキーワードが
■“アコースティック”“シンプル”“コーラスワーク”

──約1年ぶりのリリースとなるコンセプトディスク『FOUR ROOMS』はflumpoolのエヴァーグリーンなメロディとアコースティックなサウンドに焦点を当てた作品になりましたが、なぜ、こういう方向性で楽曲を作ろうと思ったんでしょうか?

山村:flumpoolはロックであったり、ポップであったり、ダンスミュージックであったり、いろんな音楽を取り入れてきたんですね。自分たちでは楽しんでやってきたんですが、“器用にやりすぎたかな”という想いと今の音楽シーンの中で勝ち残れていないというか……このままだったら消えてしまうんじゃないかという不安がありました。今回のCDはコンセプトディスクというタイトルも含めて、今のflumpoolがどういうことを伝えたいのかという意思表明ですね。自分たちはどういう音楽が好きで何を軸にしてやっているのか、流されることなく、ちゃんと根づかせていかないといけないと思ったんです。

──ということは作品を作る前に今まで以上にいろいろなことを話し合ったんですか?

山村:そうですね。話をしましたね。

阪井:これまで様々なスタイルでやってきた分、確固とした自分たちというものがなかったので、どういう音楽をやりたいのか、改めて話し合ったんです。その中で出てきた共通のキーワードが“アコースティック”だったり、“シンプル”だったり“コーラスワーク”だったり。もともと僕らの根本は路上ライヴなので、みんな似たようなことを思っていたんだなって。そういう話をしてから曲作りに入っていったので、今までのようにいろいろな音を重ねて厚みを出すのではなく、本当に必要なものだけを残して引き算していった。結果、『FOUR ROOMS』の1曲目の「とある始まりの情景 ~Bookstore on the hill~」には4人の音しか入っていないんです。コーラスワークもこれまでにない形だし。

──ある意味、flumpoolの原点を見つめ直した?

山村:ただ、今の自分たちは階段の踊り場で上にあがれないような状態というか、次に進めない状況だと思っていたので、そこを打破するためには、ただの原点回帰じゃイヤだなって。ルーツを大切にしつつ、もっと深く濃く伝えていけたら、きっと自分たちがいちばん好きなflumpoolにしか鳴らせない音楽ができるし、flumpoolというジャンルで括れるような個性を示せるんじゃないかなって。

──なるほど。flumpoolは2014年にデビュー5周年を記念して初のベストアルバム『The Best 2008-2014「MONUMENT」』をリリースしましたが、節目の時期であったことや、みなさんが30代という年齢になったこと、山村さんと阪井さんが亀田誠治さんと一緒にユニット“THE TURTLES JAPAN”を結成して活動していることなども影響しているのかなと。

尼川:いろいろなことが影響していると思います。今、隆太が言った立ち位置的なところもそうだし、この先を考えた結果でもあるだろうし、現時点で自分たちを見つめ直す機会があって、こうなった感じですね。

小倉:自分たちが居る位置については、今もよくわからないですが、今回のコンセプトディスクが再スタートという気持ちもあるので、ここからflumpoolがどうなっていくのか見えてくると思ってますね。

──収録された4曲は“これからの音楽の心臓部/エンジンとなる楽曲”ということですが、車に例えたら、今回のCDがエンジンになって走り出していくということでもありますか?

山村:車でいうとエンジンだし、自然に例えたら木の根っこの部分だと思っているんです。僕らは「花になれ」(2008年発表)という曲でデビューしたんですが、最初の根っこがメンバーの曲ではなく提供曲だったこともあって、そこから枝が伸びて葉っぱが生えて実がなっていろんな曲ができていったけど、これ以上は何も生み出せないかもしれないという不安も感じていたんですね。今回そこから踏み出した『FOUR ROOMS』に収録されているのは優しくて穏やかな曲であり、自分たちにとってはすごく熱のこもった作品でもある。これから時代の中で強い風に吹かれたり、雨に打たれることもあるかもしれないけれど、1本の大きな木を植えて新しい根を張りたかったんです。だから、歯をくいしばってやっていくぞっていう覚悟の曲たちでもありますし、きっと誰かにとってはリアリティがあるし、届く人には絶対に届くだろうと思える自信作ですね。

──コンセプトディスクと名付けた理由は?

尼川:シングルでもなく、アルバムでもないっていうところ。今の自分たちの指針を示す曲を収録したかったんですけれど、シングルというと押し曲とカップリングというポジションになるし、かといって両A面という感じでもない。普通にシングルだと伝わらないんじゃないかと思って。

山村:だいぶ考えたね。

尼川:みんなでいろいろな案を出した結果、コンセプトディスクがいちばんしっくりくるなということで。

──それだけ4曲の立ち位置が重要だということですね。聴かせていただいて新曲「とある始まりの情景 ~Bookstore on the hill~」と「歓喜のフィドル」はアコースティックなのにスケール感があって、コーラスワークもビートルズに通じるテイストがある。素晴らしいなと思いました。

山村:ありがとうございます。

──曲作りの方法論は今までと変わったんですか?

山村:いや、そこは変わらず。コンセプトを掲げて作ったことはなかったけど、具体的な手順は一緒だよね?

阪井:一緒。明確なイメージが見えていたので、アレンジも自分の頭の中にあるものを完全に作りあげたというか。

──コーラスも含めてデモの段階から細かく練ったんですか?

阪井:はい。ザックリというより、しっかり作り込んで。

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