【インタビュー】KOZZY IWAKAWA、次の世代に伝えたいルーツ・ミュージック『THE ROOTS 2』

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── THE MACKSHOWのアルバムも同じスタジオでレコーディングされていますが、空気感だけじゃなくて、電圧の違いなどで出てくる音の違いって如実に感じることはあるんですか?

KOZZY:やっぱり違いますよ。メインの楽器は日本から持って行ったものを使ったんですけど、もちろん生の楽器を弾いたときも全然違うし、(エレキギターでも)アメリカと日本で電圧は違うし。音の鮮度が違うというか、耳に聴こえる音が近いような。実際、自分たちがレコードで聴いているような音がするから良いんでしょうね。たぶん、ちょっと前に話題になった色の話(※例のドレスの色が「白と金」に見えるか「青と黒」に見えるか、という話)でもそうだけど、人間というのは脳の中で色とか音とかを作っちゃっているから。音もやっぱり人それぞれ違うと思うんですよね。僕は日本の中でレコーディング歴も長くて、自分のギターの音が自分で聴こえているように上手く録れないというような悩みもあったからこのスタジオを作ったようなところもあるんですけど、いまだに試行錯誤しながらやっていますね、ギターの音は。その時々で、“あ、良いテイクが録れた”とか、今日録れるベストの音というのをいつも求めるいるんですけど、アメリカだとそれが割といとも簡単に出せるというのはありますね。そこはかなりの部分思い込みがあるんだと思いますけど。“やっぱり良い音がするなアメリカは!”みたいな(笑)。

── KOZZYさんにとって最高に感じる音が出せるんですね。

KOZZY:リチャードというエンジニアがその空気感を録るのが上手いんですよ。だからプレイバックも聴かずにお任せでどんどんやって録って行って。それで帰りにテープをもらって“OK”みたいな感じでしたね。

── ジョン・リー・フッカーやマディ・ウォーターズのようなブルース・ナンバーが入っている一方で、キンクスやハイナンバーズの曲も入っているのが印象的です。特にキンクスの「SUNNY AFTERNOON」をやっているのがハイライト的に感じました。久しぶりに聴いたら良い曲だなって。

KOZZY:そう? 「SUNNY AFTERNOON」良い曲だと思っている人あんまりいないんじゃない? “なんだこの暗い曲は”って(笑)。本当はイギリスでやってみるのも面白いかなとも思ったんだけど、ドラムのドンさんとかもキンクスを聴いて育った世代だから一緒にやってみるのも面白いかなと思って。

トミー:笑ってたもんね。“キンクスかよ~!”って(笑)。

KOZZY:“久々に聴いたな”って言ってた、確かに。

── ビートルズやストーンズ、キンクスがカバーしているような曲をやるのが『THE ROOTS』シリーズのコンセプトなのかなと思っていたので、キンクスのオリジナルをやるとは思いませんでした。KOZZYさんの中でキンクスやザ・フーというバンドへの思い入れってどうなんですか?

KOZZY:ビートルズに比べるとやっぱりだいぶ下がっちゃいますけど、ルーツという意味ではやっぱり好きかな。キンクスで言うと、初期のナンバーよりも「SUNNY AFTERNOON」あたりを最初に聴いたんで。“なんだろうこの暗い曲は!?”って(笑)。僕には歳が7つ8つくらい離れた兄がいるんですけど、ロックファンで、叔父さんもGS世代でバンドをやっていたりして。だから僕は生まれたときから楽器があったり音楽を聴いていたんです。その叔父さんはすごく頑固な音楽ファンで、ステレオのボリュームに釘が打ってあって“これより下げるな”って言うんですよ。“デカい音じゃなきゃ聴いちゃいけない”って。めちゃくちゃ音がデカいんですよ(笑)。その叔父さんはキンクスとかアニマルズとかが好きで、僕が歌謡曲とかをかけると“そんなものステレオが腐るからかけるな”って怒られましたから(笑)。

── じゃあその頃に聴いた印象があるんですね。ビートルズに比べるとそこまで熱心に聴いていたというよりは自然に耳に入ってきたというか。

KOZZY:そうですね。いつもキンクスやアニマルズは聴いてましたね。「BOOM BOOM」なんて(オリジナルのジョン・リー・フッカーではなく)アニマルズでしかもちろん聴いたことがないし。

── キンクスの数ある有名曲の中でも「SUNNY AFTERNOON」を選んだのはなぜですか?

KOZZY:そこにこだわるね(笑)。もちろん他にも好きな曲はたくさんあるんですけど、初期の“ギターの音破れてるんじゃないの!?”っていうのも好きだし。THE MACKSHOWの一番最初のCDを出すときに、初期キンクスの音は一番参考にしたかな。でも初期キンクスの曲は後から聴いたんですよ。最初に聴いた原体験としては「SUNNY AFTERNOON」あたりのキンクスですね。いかにもイギリスだなあ、みたいな。今はYouTubeで映像も見れるから、確認してみようと思って見たら“うわ、雪の中で歌ってるよ、暗いなあ”っていう(笑)。(※雪の中で「SUNNY AFTERNOON」を演奏するモノクロ映像がある)そういうところがキンクスの良さですよね。

── 今回のカバーでKOZZYさんはかなり熱く歌っていますよね。ミキオさんのピアノも目立ちますし。

KOZZY:どうせならデフォルメしようと思ったからね。それと「ZOOT SUIT」はTHE WHOの曲はできないからハイナンバーズの曲にしたんだけど。WHOはドラムがちょっと、何やってるかわからないし(笑)。

── アメリカの曲、イギリスの曲というのは選曲する上で意識したんでしょうか?

KOZZY:ちょっとイギリスも入れたいなとは思いました。でもハイナンバーズの「ZOOT SUIT」も思いっきりアメリカの音楽を聴いて作っているわけじゃないですか? そういう意味でのルーツということもあるし。「SUNNY AFTERNOON」は違うけどね(笑)。でもやってみたら良かったんで。メンバーもすごく気に入ってる感じだったんで。

── そうした曲の良さを再発見することってよくありますか?

KOZZY:もうそれの連続、『1』のときから。普段はそんなところまでは掘り下げないから。このシリーズに関しては原曲をじっくり聴くよりも自分たちでやってみて再発見するというか。

── 選曲自体はどのように? KOZZYさんが全部選んだんでしょうか?

KOZZY:自分がだいたいバーッと出して、あとはスタッフとか友達のDJに“どんな曲が聴きたい?”って訊いたりして。中にはこんな曲知らないよっていうとんでもないものもあるけど(笑)。

── 確かにこれは誰の曲なんだろう? というものはありますね。

KOZZY:そうですよね? 埋もれているものを紹介したいという気持ちもあるし、自分のフィルターを通してやったらどうなるのかということもあって。特に『2』は聴いたときにインパクトがあったものが多いかもしれない。ストレイ・キャッツが1stアルバムでカバーしている「MY ONE DESIRE」とかは、ストレイ・キャッツをテレビで初めて観たときにインパクトがあったから。イレズミ入れている人なんか銭湯でしか見たことなかったし“なんだこれ!? ヤクザなのかな?”と思ったからね(笑)。
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