【インタビュー】SCREW、ミニアルバム『昏睡』で描く“完全に立ち止まってた”バンドの心情――そして覚醒へ
◆岡野さんの色に染められちゃうことを
望んでたようなところがあって
――ミニアルバムを2枚、というリリース形態にしたのは?
和己:まずは 4人になってからの新しい音源が早く欲しいな、というのがあって。だけどアルバムだと制作期間が結構かかってしまうし、その間、バンドが止まってるように見えてしまうじゃないですか。とにかく活動を止めたくない、活動を止めずに行きたいっていうのが僕らにはあったんで。で、ミニアルバムというちょうどいいところに落ち着いた感じなんです。シングルだと曲数が足りないし、フルアルバムだと時間が足りない。
――なるほど。急ぎたいけど慌てたくない、みたいな状況だったわけですね。そこでミニアルバムはサイズ的にもちょうどいいし、2枚出すことで色分けもできる。そして今回は、SCREWの作品ではお馴染みの告井孝通さんに加え、岡野ハジメさんを初めてプロデューサーとして起用されているわけですけど、これはどういった経緯で?
鋲:前々からお話はしてたんですよ。実際、バンドと告井さんとの相性も良かったし、そのままでも全然問題はなかったんですけど、やっぱ4人になってからの一発目でもあるし、何かしら新しい風も欲しかったというか。そういう新しい面も見せていきたかったんで、ここはちょっとお願いしようかな、と。
ジン:プロデューサーが変わるとやり方も違ってくるというのはわかってたんですけど、僕の場合、“あの岡野さん”ということで構えてたところがあったんですよね。すごく有名な方だし。だけど実際には、曲作りもわりと好きなようにできたし、どっちかと言うとアレンジの段階で細かい指示をいただいて、その指示というのが僕らが普段気付かない部分だったりもして。それで結果、引き出しも増えたし、勉強になったという感覚が強いですね。
――“あの岡野さん”という言葉が出ましたけど、皆さんとしては“どの岡野さん”なんでしょう? やはりL'Arc~en~Cielでの仕事とか?
ジン:そうですね、僕の場合は。
和己:何しろ初めてだったんで、当初はお互い手探りだったとは思うんですけど、やっぱり僕も、当初は構え過ぎてた部分があったと思うんですね。それこそ先輩だったり友達だったりも、岡野さんにやってもらってたりするんで。そこで意識し過ぎてた部分もあったと思うんですけど、実際には結構サクサクと行けて。
鋲:僕はむしろ、岡野さんの色に染められちゃうことを望んでたようなところがあって。どうせやってもらうんだったら、それくらいのほうがいいというか。自分たちに寄り過ぎてもらっても、「なんで起用したの?」ってことになってしまうから。そこまで考えたうえで、僕はお願いしました。やっぱ何かしら変わりたいっていう願望が強かったんだと思う。どう変わるかは結果で良くて、とにかく何らかの変化が欲しかったわけなんで。それでさらにもう一段階上のクオリティに行ければそれでいいと思ったし。
和己:結果、収穫も大きかったですからね。僕、ギター・ソロは、家でラインで録ったものを持っていったんですけど、エンジニアも比留間(整)さんだったんで、何かやってもらえてるのかなと思ってたら、結果、僕が持っていったオーディオ・データのままだったんです。普段、自分がデモとか作ってる時のギター・ソロの音そのまんまのサウンド、ということなんですけど……なんかちょっと、認めてもらえたのかな、という気持ちになれましたね(笑)。
◆今回に限っては、『昏睡』のコンセプトは
歌詞に集約されてるんです
――先生にハンコをもらえた、みたいな?
和己:そうですね(笑)。なんかちょっと自信が持てたというか。これまで信じてきたことが間違ってなかったんだな、と思えたし。そこはちょっと収穫というか、今後、自分の音作りに影響してきそうだなって思えましたね。
マナブ:岡野さんは、レコーディングに入る前とかにもいろいろとお話をしてくださって。ロックとはこういうもので、今の世の中はこうだけど昔はこうだった、みたいな話とか。そういうロックの精神論みたいなところでの話を、自分よりもだいぶ年上の方がしてくれるっていう経験がこれまでなかったんで、なんかそういう部分でもすごく勉強になったかなって。自分が世代的に通ってこなかった歴史的な部分とか……なんかやっぱ、そういうのって大事だなと思わされたし。
▲Mini Album『昏睡』 初回限定盤B
――なるほど。具体的なサウンドそのものだけじゃなく、そういった精神面での作用も大きかったわけですね。そして、肝心の作品について。『昏睡』というタイトルからすると暗くてドロドロした曲ばかりなのかと思いきや、決してそんなこともないですよね。これは……どういうことなんでしょう?
ジン:僕が思ったのは……今までのSCREW ってわりと、“こういうコンセプトだから”というのがあると、楽曲も歌詞も全部がっつりそこに寄った感じになることが多かったってことで。でも今回に限っては、『昏睡』のコンセプトは歌詞に集約されてるんです。そういう意味で言うと、楽曲自体は『昏睡』には縛られてはいないのかなって思うんです。
――あくまでコンセプトは歌詞世界に反映されていて、曲作りはそれを取っ払ったところで行なわれた、と?
ジン:完全に、というわけじゃないですけど。それだけにとらわれず自由に作ったところはありますね。だからこそ、こうなったんだと思います。
和己:どっちかっていうとライヴに向けての意識のほうが強かったと思うんです、特に楽器隊的には。これを出してからツアーを回ったりするのも決まってるんで、やっぱりその場で使える曲じゃないと。
――そして歌詞については、曲調を問わず“昏睡”がコンセプトになっているというか、死生観みたいなものが軸になっているわけですよね?
鋲:そうですね。僕はなんか、自分が抱えてるものを心のなかだけでは消化できない性格なんで。作品として形として残しちゃったほうがスッキリするというか。だからこれを作り終わった今は、すごい清々しい気分なんです。なんか、ケジメがつけられたというか、リセットできたというか。だから今は多分、“覚醒”に向けてすごくいい状態にあるんだと思う。
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