【インタビュー】シェーン・ガラス、B'zサポートドラムのインスト作品に「素晴らしい世界への広がり」
■Takが弾いてくれるフレーズだったら
■素晴らしいものになる確信があった
──アルバムの仕上がりは、自分のイメージ通りですか?
シェーン・ガラス:うん。その通りに仕上がったと思います。
──制作にあたり、いわゆるコンセプトやイメージはあったんですか?
シェーン・ガラス:ありました。ひとつのパッケージの中にいろんな要素を組み込みたいという思いはありました。プログレッシヴであり、ジャズであり、ファンクであり、ロックであり、ヘヴィであり、フュージョンであり、それでラテンも入っててスウィングも入っているみたいなね。様々な要素がひとつのアルバムの中に入っているイメージを持っていました。
──『Bitter Suites from the Red Room』というタイトルはどういう意味ですか?
シェーン・ガラス:ちょっと甘く切ない思い出のようなものを英語で“ビタースイート”っていうんです。ちょっと悲しい、別れてしまった寂しい感じとか、そんなビタースイートがアルバムの中にあって、アルバムの中でビターを表現するものはヘヴィな曲だったり、重い曲だったりですね。スイートなのは「Silverstrand Sedation」や「Song for Dale」とか、ちょっとメロディックなものが自分の中でのスイート・サイドです。もちろん、甘い=“スイート”のスペルはSweetなんですけど、“Suites”には楽曲という意味もありますので、その言葉遊びもあって“Bitter Sweet”を“Bitter Suites”にしたんです。
──“Red Room”は?
シェーン・ガラス:レッドルームっていうのは自分のスタジオの壁が赤いから。その自分のスタジオの中から生まれたビターな曲とか甘い曲とかがぎゅっと詰まったアルバムっていう感じ。ジャケットのデザインも、赤い箱の中に閉じ込められていて、でも底から見える穴の外には青い空が広がっている。自分はボックスの中に閉じ込められてしまっているけれど、それを抜けるとさまざまな世界が広がってて、その広い世界を自分の曲が表現しているんだ。「これを抜ければいろんな世界が広がっているよ」というイメージを伝えたかった。
──外の世界に、この曲達が飛び出していくんですね。
シェーン・ガラス:そう。ビターって英語では“辛い”といった意味もあるんですね。その箱の中がビターな今の状況だったりして、植物も育ってはいるけれど、ちょっと萎えているというか元気に育っているわけでもない。そんなビターな環境にいる自分だけど、そこを抜けると素晴らしい世界が広がってるという陰と陽のコントラストを表現したかった。それって常に共存していたりもするんですよね。それがアルバムに対してのイメージ、コンセプトですね。
──シェーンの周りにはスーパープレイヤーがたくさんいるけれど、その人たちもこの作品にはびっくりするだろうな。
シェーン・ガラス:そうだといいんだけど(笑)。気に入ってもらえると嬉しいんだけど…。今この時代で、インストゥルメンタルってなかなか興味を持ってもらえないかもしれないけど、インストはちょっと…ってくくりとかカテゴリーはなしにして音楽として聴いてもらって、楽しんでもらえたらいいなって思ってます。
──若い子たちには絶対聴いてほしいんだけど、でもこの凄さをわかってくれるかな…という不安もある。自分も中学の時にはレッド・ツェッペリンもピンク・フロイドもその良さが全く分からなかったから(笑)。
シェーン・ガラス:そうしたら、もうちょっと大きくなったらもう1回ぜひ聴いてほしいな(笑)。
──「Grind 2.0 (The Salacious Elixir)」に松本孝弘が参加したのは、どんないきさつだったんですか?
シェーン・ガラス:曲ができた時に松本さんに「Tak、これを弾いてみてくれない? どう?」って言ったら、「いいよ」ってやってくれたんですよ。
──プレイはお任せで?
シェーン・ガラス:トラックを送って「ここからここまでがギターソロなので、自由にやってください」っていう形でお願いしました。Takが弾いてくれるフレーズだったら素晴らしいものになる確信があったから、もう何も言うことはなかった。出来上がりもそうなっているしね。僕はメロディのあるギターソロが大好きだけど、Takはいつもそういうソロを弾いているから、今回もそういう風に弾いてもらえて良かった。
──楽曲に影響を受けてか、普段よりもアグレッシヴなプレイをしていますよね。
シェーン・ガラス:自分は作り手だから、この世界にハマって気付かなったけれど、もしかしたらそうかもしれないね。すごくカッコいいソロを弾いてくれたよ。
──特に聞くべきポイントやおすすめのプレイなどはありますか?
シェーン・ガラス:すごくいろんな要素が詰まっているから、選ぶのは難しいな。1曲目の「El Niño Overture」は今まで構築してきたドラムをすべて詰め込めたと思うので、自分の中でも今までよりいいドラミングというか、ドラマーとしていいプレイができた曲に仕上がったかな。世界にはすごい人もテクニカルな人もいるし、自分より素晴らしい人はもっといるから、びっくりするほどじゃないけど、今の自分というものが表現できたのは良かった。最後の曲「Song for Dale」では、メロディとあいまったジャズの要素を出せたのもすごく良かったと思っているよ。やっぱり1曲目から9曲目の全体の流れとして、自分が今持ってるミュージシャンとしての素材というか要素を、いろんなところに散りばめながら流れを作れたので、そういうところですごく満足していますよ。
──聴き応えのある本当に素晴らしいアルバムだと思っています。
シェーン・ガラス:テクノロジーも進んだ今は、たくさんの素晴らしいミュージシャンのプレイを見たり聴いたりもできるし、コンピューターを使えばいろんなことができる。ドラマーに限らず、いろんなミュージシャンの要素を吸収できる場所があるっていうのは素晴らしいことだと思います。
──『Bitter Suites from the Red Room』からもいろんなことが吸収できそうですね。
シェーン・ガラス:アリガトウ。楽しんで聴いてもらえると嬉しいな。インストだからって敬遠しないでね。
取材・文◎BARKS編集長 烏丸哲也
■アルバム『Bitter Suites from the Red Room』
¥1,528 + tax ZACG-9003
1.El Niño Overture
2.Silverstrand Sedation
3.Tales from a Fantastic Lumbar
4.Grind 2.0 (The Salacious Elixir)
5.Wherever Giorgio Dare Roam
6.Sik Pa-Jam-As
7.Gaunchpull vs.The Atomic Wedgie
8.Ototoxic Gaalbladderass
9.Song for Dale
◆シェーン・ガラス オフィシャルサイト
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