【インタビュー】三宅由佳莉、あきらめず進んでいけば虹は絶対に架かる『希望~Songs for Tomorrow』

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“美しすぎる海自の歌姫”として知られる海上自衛隊東京音楽隊、三宅由佳莉の2枚目のアルバム『希望~Songs For Tomorrow』が3月4日に発売される。本作のテーマは“希望”で、三宅本人が作詞に初挑戦したタイトル曲のほか、「レット・イット・ゴー ~ありのままで~(映画 『アナと雪の女王』より)」や「ユー・レイズ・ミー・アップ」といった人気曲、「椰子の実」や「この道」といった日本のスタンダードなど、誰もが知っている曲が美しく、力強く歌い上げられている。どんな想いを込めてこれらの歌を歌ったのか、そしてどんな想いで自衛隊の音楽隊として活動しているのか、三宅由佳莉3等海曹に話を訊いた。

◆三宅由佳莉~画像~&映像

■聴く人に頑張る力や勇気が湧いてくるCDにしたいと思いました
■“顔晴る(がんばる)”というのが私のモットーでもあるので


▲『希望~Songs for Tomorrow』DVD付限定盤

▲『希望~Songs for Tomorrow』通常盤

――前作の「祈り~a prayer」はすごく話題になりましたね。

三宅由佳莉(以下、三宅):とても驚きました。すごく多くの方にこの歌が浸透していくという、その状況にとても驚いていました。

――以前、“この曲と出会えて、歌う意味や音楽の意味も考えるようになった”とおっしゃっていましたが、様々な場所でこの曲を歌ってきた今、どう感じていますか?

三宅:何度歌っても、同じ「祈り~a prayer」という歌は存在しないんだと感じました。様々な方々の前で歌ってきましたが、そのたびに違う歌になるんです。先日、新潟で歌わせていただいたときには、中越地震で被災された方にはこの歌がどのように届くんだろうと、不安も感じました。聴いてくださった方が元気になれたかな、ということがいつも気になっているんです。

――歌い続けたことで、この曲に対する想いも変わってきました?

三宅:震災からあまり時間が経っていなかったころは、なかなかこの歌と上手く向き合えずつらかったこともありました。その後CDが出たり、色々な人の前で歌ったりしていくうちに、この曲は応援歌なんだ、人を励まし、勇気を与える曲なんだ、という気持ちがわき上がってきました。

――「祈り」が話題になったことで活動範囲も広がりましたよね。TVにもたくさん出演されましたし。

三宅:TVに出たことで、多くの方に海上自衛隊の音楽隊を知っていただけた。それがとにかく大きいことでした。演奏会に足を運んでいただく方もとても増えました。お客さんの年齢も幅広くなりましたし、とても遠方から来てくださる方もいてありがたいです。

――ニュージランドのヘイリーさんと共演したこともビッグニュースでした。

三宅:会うまではとても緊張して不安だったんです。でもお会いしてみたらとってもキュートであたたかい方だったので、不安もなくなりました。「祈り」を一緒に歌うことができて本当にうれしかった。ヘイリーさんが歌ってくれたことで、世界に向けてこの歌を発信できた。日本人の心をつないでくださったんだと思います。

――ヘイリーさんは三宅さんと共通するところが多いシンガーですよね。クラシックを基盤にスタンダード、ポップスも歌いこなすという。

三宅:でも技術的にはマネできることが何一つない(笑)。そう思うくらい素晴らしかったです。舞台袖からずっと見ていたんですが、あの透き通った歌声はホントに素晴らしい。人柄とか、内面から出てくるものもすごく感じることができたので、以前よりもっともっと好きになりました。ヘイリーさんみたいに歌えるようになりたいと思いました。

――そんな多忙な中で、2枚目のアルバムを制作していたんですね。

三宅:2014年の春ごろからアルバムを作ろうという話が出て。今回はタイトル曲の歌詞も私が作ることになったんですけど、歌詞は夏ごろから着手して、年が明ける頃まで作っていました。もうじっくりコトコトと(笑)。CDなら、演奏会に来ていただけない遠方の方にも新しい曲を聴いていただけるので、それがとてもありがたいです。

――どんなアルバムにしたい思って作り始めたのですか?

三宅:聴いてくれた人が笑顔で頑張る力や勇気が湧いてくる、そんなCDにしたいと思っていました。“顔晴る(がんばる)”というのが私のモットーでもあるので。

――前作と違う想いもありましたか?

三宅:前回は“祈り”という想いをこめたんですけど、そこから一歩前進したのが今回の作品。全面的に明るい未来、注ぎ込む光、そんなイメージで、エネルギーを与えられるようなものにしたいという想いがありました。

――収録曲は有名な曲ばかりですね。たとえば冒頭の「旅立ちの日に」は合唱曲で有名だし、カヴァーも多い。

三宅:そうですね。卒業式でもよく歌われる曲で、私も歌ったことがありました。前にこの曲を歌ったのは故郷の岡山にいたときだったんです。そこから東京に出る直前、本当に自分が旅立つ前に歌った曲だったので、とても懐かしくて感慨深かったし、やっぱりいい曲だなって改めて思いました。

――「レット・イット・ゴー」は2014年の大ヒットだし「ユー・レイズ・ミー・アップ」も有名なスタンダードナンバー。ホントにみんなが知ってる歌ばかり並んでいます。

三宅:曲を選んだ基準は、幅広い世代の方が聴いて楽しめるもの、そして私たちの基本である吹奏楽が活きる曲ということですね。発売が3月なので、卒業や出会い、別れというようなこの季節に合うイメージの曲も選びました。私自身がすごく好きで、ぜひ入れてくださいとお願いした曲もあります。「愛は花、君はその種子」がそうです。

――クラシックのソプラノらしい歌声を基本にしながら、曲によって少しずつ歌い方が違っていたりするのも面白いですね。

三宅:自然にそうなるんだと思います。ジャンルや曲のイメージによって自然と変わってくるんじゃないでしょうか。吹奏楽の伴奏のアレンジによって、歌も自然に盛り上がったり抑えたり、というところもあると思います。

――そんな中で、自分らしさがもっとも出ていると思う曲はどれでしょう?

三宅:「愛は花、君はその種子」ですね。この曲は都はるみさんの歌がすごく好きなんですけど、私はあんなふうには歌えない。だから自分なりに、ささやくように歌いました。歌詞の言葉一つ一つが心に刺さるように感じたので、歌詞が相手の心にまっすぐ伝わるように、近い距離で呼びかけるように歌う感じにしたくて、耳元でささやくように歌ったんです。

――「木綿のハンカチーフ」の歌声は、もっとも優しく軽やかですね。オリジナルの太田裕美さんの歌声にすごく近い雰囲気も感じられました。

三宅:私はこの曲のオリジナルを直に体験した世代ではないんですが、このシーズンに合うイメージの曲だし、好きな曲だったので選びました。色々な方のカヴァー・バージョンも聴いて、どう歌おうかと考えていたんですが、なにも飾らない素朴さというか、素のまま、力まず出た声のまま歌うのがよいと思ったのでこういう歌い方なんです。でもオリジナルのイメージも焼き付いているので、自然に近い感じになったのかもしれませんね。

――そして唯一のオリジナル曲がタイトル曲の「希望」。これは作詞にも挑戦したんですよね。

三宅:そうです。作詞はまったく初めてでした。いただいた曲を聴いてみて、映画のシーンが思い浮かぶような感じだったので、出てきたイメージを言葉にしようと思ったんですけど、その作業がとても大変で(笑)。みんなが頑張れる、みんなが笑顔になれるような、希望がわくようなCDにしたいと思っていたので、“希望”というキーワードからイメージを膨らませて書いていきました。

――その“希望”の象徴が虹のイメージなんですね。

三宅:はい。希望をテーマに書こうと思って最初に浮かんだのが虹だったんです。雨上がりに出る虹を見ると、とても晴れやかで幸せな気持ちになるので。

――前作の「祈り」があって、その次のステップとしてこの「希望」に進んできたわけですね。

三宅:そうです。「祈り」から前進してここにつながればいいなと思って。この曲だけではなく、CD全体としても前作からつながればいいなと思っています。

――この歌詞でもっとも伝えたかったことは?

三宅:私が一番大事にしたかったのは、最初の“雨にぬれた頬 晴れて 虹よ、架かれ”というところ、そしてそれが最後のほうで“雨にぬれた頬 晴れて 虹が架かる”になるところなんです。最初は願望なんですね、希望の虹が架かってほしいという。泣いた日があっても苦しいときがあっても、明日になれば太陽が出て虹が架かる。幸せなことがきっとある、そうなってほしい、という希望を歌っていて。そして最後には絶対に“架かる”から大丈夫、あきらめないで、と。実は自分に言い聞かせるようなところもあるんです。私自身も自衛官としての歌手という、どういう道を歩んでいこうか迷いもあるんですけど、あきらめず進んでいけば虹は絶対に架かる。それを自分でも証明したいという気持ちも込め、みんなにも伝えたいと思って書いたんです。

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