【インタビュー前編】サンダー、「音楽がすべてだった少年の心情を描いているんだ」
サンダーがニュー・アルバム『ワンダー・デイズ』を完成させた。
◆サンダー画像
昨年、<ラウド・パーク14>フェス出演時に披露された「ワンダー・デイズ」「ザ・シング・アイ・ウォント」からも予想されたとおり、本作では古き良き“素晴らしき日々=ワンダー・デイズ”のブリティッシュ・ハード・ロックを受け継ぐサウンドを堪能することができる。バンドのシンガー、ダニー・ボウズが、自らの少年時代の思い出を交えながら『ワンダー・デイズ』について語ってくれた。
──ベン・マシューズ(G、Key)はガンの治療で一時バンドから離脱していましたが、彼の体調はいかがですか?
ダニー・ボウズ:徐々に回復しているところだよ。薬の副作用もあったし、決して楽なプロセスではなかったけど、幸いなことにガンは無くなって、リハビリが必要なだけになった。3月に行うイギリス・ツアーにはベンも参加してもらうつもりだよ。あえて3公演のみの短いツアーにして、徐々にベストに仕上げていくつもりだ。次に日本でプレイするときは、ベンも一緒で行きたいと考えているよ。
──ニュー・アルバム『ワンダー・デイズ』ではどんな音楽性を志していますか?
ダニー・ボウズ:いつもと同じだよ。最高のロックンロールだ。私たちと比較されるのはディープ・パープルやステイタス・クオーのような、スーパー・レジェンド達なんだ。彼らが引退したら、今度は私たちがスーパー・レジェンドになれないかと思って、ずっと同じことを続けているんだよ(笑)。
──『ワンダー・デイズ』の歌詞はいずれもルーク・モーリー(G)が書いたそうですが、歌うあなたも共感できるものでしょうか?
ダニー・ボウズ:もちろん!ルークと私が出会ったのは11歳のときで、15歳のときに最初のバンドを結成したんだ。少年時代ずっと一緒だったから、「ワンダー・デイズ」の歌詞にあることは、私自身の経験でもある。十代の頃は早く大人になりたくて、クールになりたくて…さっぱりモテなかったけど、最初のアマチュア・バンドを組んだら女の子がキャーキャー言うようになった。今思うと、とてつもなくヘタクソなバンドだったけどね。それで音楽を続けることにしたんだ。ルークと最初のバンドを組んでから、2015年で40年になるよ。
──「ホェン・ザ・ミュージック・プレイド」も少年時代の思い出を歌っていますね。
ダニー・ボウズ:そう、「1971年、ただのガキだった」という一節で始まるんだ。お気に入りのレコードの発売日に学校をサボって、開店前のレコード店の前に並んだ思い出を歌っている。ディープ・パープルの『紫の炎』や『嵐の使者』、レッド・ツェッペリンの『フィジカル・グラフィティ』、ザ・フーの『四重人格』などは単なるレコードではなく、人生を変えるひとつの事件だった。音楽を聴きながらジャケットにかじりついて、歌詞カードやクレジットを隅から隅まで読んで、その中に隠された秘密のメッセージを探したんだ。あの頃、私たちにとって音楽は人生の重要な一部分を占めていた。現代では音楽は娯楽のひとつのように思える。この歌では大昔、1970年代初め、音楽がすべてだった少年の心情を描いているんだ。
──少年時代に聴いていた音楽はサンダーの音楽性にどのように反映されているでしょうか?
ダニー・ボウズ:いま挙げたレコードの数々は、私たちの血と肉になっているんだ。レッド・ツェッペリンとサンダーのレコードを並べて聴いてみれば、影響は明らかだろう。彼らの模倣をしようと考えたことはない。でも“良い音楽”の定義が彼らだから、自分たちが“良い音楽”を作ろうとしたら、彼らと似てしまうのは当然だろ?もちろんそれだけではなく、「ザ・プロフェット」はサンダーがレッド・ツェッペリンとアイアン・メイデンと正面衝突したようなサウンドだ。グッド・ロックンロールが好きな人だったら、きっと楽しめる瞬間が見つかるアルバムだよ。
──ルークがこのアルバムで少年時代を振り返る歌詞を書いたのは何故でしょうか?
ダニー・ボウズ:そのことはルークと話し合っていないけど、やはり歳を取ってきたことが大きいんじゃないかな。自分がこれから生きることが出来る年月が、これまで生きてきた年月よりも短いということに気付くと、過去を振り返ってみたくなるものだよ。
──「アイ・ラヴ・ザ・ウィークエンド」も少年時代の思い出についての歌でしょうか?
ダニー・ボウズ:この歌詞は多くの人たちに当てはまると思うよ。学校や職場で、月曜の朝はいつだって憂鬱なものだ。ロック・ミュージシャンは曜日の感覚がないけど、むしろマイノリティだ。多くの人々はみんな週末を楽しみにしているんだよ。こういう歌詞は、昔はたくさんあったんだ。最近は少なくなって、ちょっと寂しいよ。
──イージービーツの「フライデー・オン・マイ・マインド」などですか。
ダニー・ボウズ:そう、そんなタイプの曲はオールドスクールになってしまった。だからサンダーがやるにはちょうど良いと思ったんだ(笑)。私も学校は嫌いだった。とにかく成績が悪かったんだ。15歳のとき、夏の期末試験は全部赤点で、落第か退学のどちらかを選ぶ必要があった。親にバレるとすぐ就職させられるから、夏休みはたっぷり遊んで、秋になってから退学届を出した。おふくろのサインを偽造したのを覚えているよ。それからコーヒーショップで働きながらバンドを続けた。ルークが始めたナッシング・ファンシーってバンドで、そのバンドがテラプレインに発展していったんだ。サンダーの前身バンドだよ。
──「レザレクション・デイ」の“爆弾が落ちた日”というのも、実体験に基づくもの?
ダニー・ボウズ:その“爆弾を落とす”というのは、“悪いニュースを明かす”という意味の比喩で、文字通り爆弾テロを体験したとかではないんだ。「レザレクション・デイ」の歌詞は、主人公が苦難の道を経て、最後にすべてがうまく行くという内容だ。ベンの病気がインスピレーションになったんだよ。ただ、私たちの少年時代において、爆弾が身近な存在だったことも事実だ。当時はアイルランドの独立問題があって、爆弾テロが連日報じられていた。それにミュンヘン・オリンピックのテロがあったり、新聞やニュースで盛んに爆弾が扱われていたんだ。
──子供たちがメンバーに扮したジャケット・アートワークも含め、『ワンダー・デイズ』はあなた達の少年時代についてのコンセプト・アルバムだといえるでしょうか?
ダニー・ボウズ:いや、コンセプト・アルバムではないよ。いろいろな題材について描写しているし、それぞれの曲のスタイルも異なっている。ジャケットは少年時代の“ワンダー・デイズ=素晴らしき日々”をテーマにしているけどね。子供が乗っている自転車も当時のものだし、裏ジャケットの自動車も1970年代初頭のものだ。ロンドン東部のハックニーで撮影したけど、昔から街の雰囲気が変わっていないことに驚いたね。
後編ではライヴ・バンドとして知られるサンダーのステージ哲学などについて語ってもらおう。
取材・文:山崎智之
(C)Jason Joyce
『ワンダー・デイズ』
初回限定盤3枚組CD(『ワンダー・デイズ』+『ライヴ・アット・ヴァッケン2013』+『キラー』EP[未発表4曲収録]』 3,700+税
通常盤CD 2,500+税
ディスク1『ワンダー・デイズ』*通常盤CDはディスク1 のみを収録
1.ワンダー・デイズ
2.ザ・シング・アイ・ウォント
3.ザ・レイン
4.ブラック・ウォーター
5.ザ・プロフィット
6.レザレクション・デイ
7.チェイシング・シャドウズ
8.ブロークン
9.ホウェン・ザ・ミュージック・プレイド
10.サーペンタイン
11.アイ・ラヴ・ザ・ウィークエンド
12.T.B.A. (日本盤限定ボーナストラック)
ディスク2『ライヴ・アット・ヴァッケン2013』
1.ダーティ・ラヴ
2.リヴァー・オブ・ペイン
3.ハイヤー・グラウンド
4.ロウ・ライフ・イン・ハイ・プレイシズ
5.バックストリート・シンフォニー
6.ザ・デヴィル・メイド・ミー・ドゥ・イット
7.ユー・キャント・キープ・ア・グッド・マン・ダウン
8.ラヴ・ウォークド・イン
9.アイ・ラヴ・ユー・モア・ザン・ロックン・ロール
ディスク3『キラーEP』
1.キラー
2.アズ・タフ・アズ・イット・ゲッツ
3.ビッグ・ガンズ
4.ドント・セイ・ザット
【メンバー】
ダニー・ボウズ(ヴォーカル)
ルーク・モーリー(ギター)
ハリー・ジェイムズ(ドラムス)
ベン・マシューズ(ギター&キーボード)
クリス・チャイルズ(ベース)
◆サンダー『ワンダー・デイズ』オフィシャルサイト