【インタビュー】sukekiyo「“このバンド、何するかわかんないな”っていうのがsukekiyoなんです」

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2014年4月発表の1stアルバム、『IMMORTALIS』に続き、早くも『VITIUM』と命名された新作をリリースした異形のバンド、sukekiyo。一応はミニ・アルバムという体裁になっているが、今後、他のアーティストたちがミニ・アルバムという言葉を使いにくくなるんじゃないかというくらい収録量も豊富で、当然のように濃密な仕上がりになっている。この作品の発売と前後しながら、すでに『双卵の眼』というキーワードを伴った対バン形式のツアーを展開し、2月9日からは単独公演が控えていたりもする彼らだが、今回はそんな時間の合間にBARKSのために全員集合し、たっぷりと語ってくれた。作品自体の解釈はそれぞれのリスナーにおまかせするとして、とにかくこの5人との会話から、他とはひと味違うこのバンドの“今”の空気を感じていただければ幸いだ。

◆sukekiyo~画像&映像~

■前作は“他にはないもの”や“変態”とかのイメージがあった
■まあ、その変態的な部分は今回も変わってないと思うんです


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――ゼロからのスタートだった前作と、前作があるうえに成り立っている今作とでは、あらかじめ思い描けるものの色濃さが違っていたはずだと思うんです。

京:うん。まあ、前作があったからこそこれが出来たのかなっていうのは勿論あるし、ライヴでの経験も当然のように影響してると思うし。いろんな刺激があったからこそ完成したものだという感覚ではありますね。でも、「こういうものを作ろう」というのは今回も特になかったんです。普通にアルバムを出して、ツアーをやっていけば、そこで「次はもっとこうしよう」とか「ここはこうしたほうが良かったかな」というのが自ずと出てくるはずだと思ってたし、それをフルに反映させていけば、自然にもっと深いところに行けるんじゃないかなと思っていたんで。とにかくまだまだ2枚目だから、そこはわりと簡単に出てくるかなと思っていたんです。

匠:ただ、やっぱり今回は制作段階での意識がまるで違っていて。前は結構、作り込んだ感じというか、そういうイメージがあったんですね。それこそ“他にはないもの”とか“変態”とか(笑)、そういうキーワードも出ていたし。まあ、その変態的な部分は今回も変わってないと思うんですよ。元々の人間性として、もはや自分たちではあんまり気付いてないところで、そういうのはあるわけで(笑)。ただやっぱ、ライヴをやってきたことで見えてきたこと、というのがすごく多かったんで。多分もうちょっといろいろ出来るな、というのがあった。そういう意味ではなんか、活動を経た流れのなかで出来たものだってことを、前よりもすごく感じますね。前回はそれがない状態で作り始めたものだけど、今回の作品は活動ありきで作ったものなので。流れのなかで出てきたもの、というのがある。

――しかも“他にはないもの”を求めてはいても、“変なもの”を作ろうとしたわけではないはずでしょうし。

匠:そうですね。そこはもう、勝手に出てくるものというか。

YUCHI:基本的な作り方というのはまったくと言っていいほど変わっていないと思うんです。でもまあ、ライヴをやったりツアーをやったりして、メンバーと顔を合わせている時間というのが前回よりも圧倒的に長くなってるわけで。そこで「こういうのカッコいいよね」とか、「こういうのを入れたら面白いんじゃないか」とか、そういう話がいろいろと出来たうえで作った曲が多いんですね。前作と違う仕上がりというか、違った雰囲気になった部分というのがあるとすれば、そこが結構大きいんじゃないかと思います。

▲京

▲未架

▲匠

▲UTA

▲YUCHI

――なるほど。要するにメンバー間の理解度が深まった状態。誰にどんなことが出来るのかというのもあるでしょうけど、それ以上に、お互いの人間的な部分をより理解出来た状態にあるからこその違いがある、ということでしょうか?

YUCHI:それが音に出てるかもしれないですね。変な話、出来るだけ直接会わずに取るコミュニケーションと、頻繁に会ってディスカッションしたうえで生まれるものは、またちょっと違うかなって思うんです。

――確かに、PCの画面上だけのコミュニケーションだからこそ生まれ得るもの、というのもありそうですよね?

YUCHI:そうですね。もちろん、京さんと匠さんは仕事柄、一緒にいる時間が長いと思うんだけど(注:匠がDIR EN GREYでマニピュレーターを務めていることを指す)。

――仕事柄(笑)。バイト仲間かなんかみたいな響きですけど。

匠:シフトが重なることが多い、みたいな(笑)。

YUCHI:ふふっ。でも実際、前回はまだお互い会ってから間もなくて、人間性もろくに知らない状態で作った感じでもあったわけですよ。勿論、だからこその面白さもあったんですけどね。

匠:そこはすごく僕も感じました。制作自体を通じては、そんなに頻繁に会いながら作ってきたわけじゃないんですけど、ライヴを経てきたことでいろいろわかったうえで……。たとえば、ここのグルーヴとかはYUCHI君に委ねよう、とか。そういうのは多かったですね。何を誰に委ねるべきか、というのが見えてきたことは大きかった。

――きっとツアー先でのサウンドチェックの時間なども重要だったはずですよね? 具体的なプリプロの作業とか以上に、お互いの駆け引きのあり方みたいなものが見えてくるところがあるはずだし。

YUSHI:確かにそれはありますね。

UTA:前回との違いってことになると……なんかもうみんな言ってくれましたね(笑)。まあ俺としては、単純に1枚目よりもカッコいいものを作りたかっただけなんです。聴いた瞬間にカッコいいと思えるような。何度も聴いてようやくじわじわくるっていうよりは、数回聴いたぐらいのところでカッコいいなと思えるようなものにしたいな、というのがありました。そのせいか、俺にしてはめずらしくリフものが増えたし。変態に行き過ぎず、だけども変態の良さを残しながら、という感じでしたね、自分としては。

――確かに一聴してストーンと腑に落ちるというか。わかりやすいとまでは言わないにしても、そういう曲が今回は目立つようにも思います。

UTA:多いですよね、今回はそういうのが。そこはまあ、ある程度は聴き手のことも考えながら。あと、正直な話、1枚目はホントに難しいんですよ、自分のフレーズ的には。それに比べると今回はリフものが多くて、ずっと前を向いて弾いてられる曲が多いかな(笑)。

未架:基本的にはYUCHI君が言ってくれたみたいに、『IMMORTALIS』を出して、ライヴがあって、制作しているときもちょっとそれをイメージ出来たというか。前作のときは、とにかく面白いものを作っていこうというのがあって、ライヴ感だったりステージ上の空間がどうなるかのいうのは、そこまで意識してなかったんですね。それを一旦置いておいて、制作に打ち込んでたというか。それに対して今回は、作っていくうえでより肉体的になってきてるところがあると思うんです。それもごく自然に、ライヴの時間でのちょっとしたコミュニケーションのあり方とかから出てきたものなのかな、という気がしていて。あと、基本的に匠はいつも曲をカチッとまとめてくるんですけど、今回はより他のメンバーに委ねるようなアプローチをしてくれてるんで、それがまた、より肉体的…というかバンドらしいアンサンブル感になっていることに一役買ってるのかな、と思えていて。

匠:そこはちょっと、自分でもモードを切り替えてたかもしれませんね。

未架:本来はすべての音符を整理したい人だと思うから、多分。

匠:うん(笑)。でも今回は、そんなに整理してないかな。言葉は悪いけど、そういうことは気にせずバーッとやろう、というのがあった。

――きっと性格的に匠さんは、なかなか“バーッとやろう”とはなりにくいタイプですよね?

匠:ええ。前はもう、とにかく全部を把握出来てないと……。でも今回は敢えて、なんかある意味、いちギタリストとしてだけ挑んだ、みたいな。そういう意味では全然違いますね、前回とは。

――それでいいんだ、と思えたのはやはりアルバム発売後のさまざまな経験があったからこそですか?

匠:そうですね。やっぱりみんなも言ってたように、ライヴが大きかったと思う。前に曲を作ってたときは、みんなが演奏してる様子とか、見えてなかったですから。

――京さん、こういった変化が生じることになるのは、あらかじめ読めていたんですか?

京:いや、読めてなかったですし、考えようともしなかった(笑)。自分としては、もっと縛りがなく、ジャンルがよくわかんない曲が前より出てきたような印象なんですね。こういう曲、というのが口では言いにくいような。ここに収録されてない曲というのも実はいっぱいあったんで。

――5人で一緒に過ごしてきた時間の量の違い、という意味では、たとえば僕らの目が届かないところでいえば、2014年のヨーロッパ・ツアーというのも大きかったんじゃないかと思うんです。国外ツアーの場合、どこか合宿にも近いようなところがあるわけで。

YUCHI:ええ。より人間性とかがやっぱ、わかってきますよね。

匠:10日間ぐらいでちょうど良かったな、と思います。俺、いびきが酷いんで(笑)。あれ以上続いてたら問題あったかも。でも、すごく良かったです。いびきの件はさておき(笑)。

UTA:ほっぺた叩きたくなったよ(笑)。

匠:あとはまあ、ライヴの環境がやっぱ日本とは違ったんで。トラブルもありましたし。でも、そこでバンド力が試されたようなところがあって。

京:ギターの音が出えへんときとか、あったな?

匠:ええ、オープニングでいきなり。そこで強引にピアノで繋いでみたりとか。あと、持ち替えてギター・ソロを弾こうってときに音が出なかったこともあって、そのときも無理矢理ピアノで弾いてみたりとか。

京:そういう意味では、僕はめっちゃラクでしたけどね。ハプニングも大好きだし。どうやってこれを切り抜けんのかなっていう。

匠:でもそこで、海外だからっていうのもあるかもしれないけど、意外と気負わず“仕方ねえな”って感じで切り抜けられたんで、“よっしゃ!”みたいな。

京:でも実際、ハプニングを乗り越えると成長するんですよね。だからね、ハプニングが起こるたびに僕はすっごくワクワクするんです。「あ、ギター鳴ってない。どーすんの、どーすんの?」みたいな(全員爆笑)。

――京さん、まさかハプニングを仕掛けてたりしないでしょうね?(笑)

京:ふふふ。なんか、DIR EN GREYでも、よりによって歌だけになった場面でマイクを落としたりして「どうやって切り抜けるんやろ?」みたいな空気になったのを何度も味わってるから。そういうとき、他のメンバーは何もしようがないから「どーすんの、どーすんの?」という感じでずーっと見てるわけですよ。でも、それがオモロいんですよね。しかも海外のツアーは、ホントに少ない機材と最小限の人数で行っていて、全然恵まれてない環境でやってるから。僕はそれを逆に楽しんでましたけどね。

――ハプニングを楽しめるのは強いですよ。そういえば2014年の日本青年館での公演時は、演奏中に未架さんのバスドラの皮が破れる、というのもありましたけど。

未架:ありましたねー。今はもう懐かしいです(笑)。でも、まさに今の京さんの言葉通りですね。乗り越えると、そのぶん強くなれるというか。

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