ライブハウスの存在意義を問う、 高円寺の老舗「JIROKICHI」の本が濃い
ライブハウスへよく行く人にも行ったことのない人にも読んでもらいたい書籍がある。高円寺のライブハウス「JIROKICHI」の40年間のすべてが惜しみなく綴られた『ジロキチ・オン・マイ・マインド –ライブハウス高円寺 JIROKICHIの40年-』だ。
この本から、ライブを観る空間ということ以上に、いかにライブハウスが社交場として機能し、現場から地続きのリアルな文化を生み出し、さらには社会の受け皿となって人をも育てる特別な場所であるかを知ることができるはずだ。だが、ライブハウスという場所は、選ばれた人間だけが入場できる聖域などではない。階段をおりれば、いつも最高のライブが待っている。それを体験するのに資格も何もない。
この、日本のライブハウスの先がけ「JIROKICHI」が東京・高円寺で産声をあげたのは1975年2月1日のことだ。以来40年間、一度はJIROKICHIで演奏してみたいというミュージシャン、バンドマンから熱い支持を受け、いくつもの伝説のライブが日本のジャズ、ロック史に刻まれた。時代と並走したJIROKICHIの40年、それは、そのまま70年代から今日までの日本の音楽シーンの歴史でもある。ヨーロッパを放浪し、国も人種も肩書きも跳び越えて魂が鼓動し合うライブハウスのパワーに開眼した“ジロマス”ことJIROKICHIのマスター、荒井誠。そして彼の人柄に惹かれ集まった、ミュージシャン、クリエイターやスタッフ、そしてお客たち。彼らもまた、JIROKICHIならではの場を熟成させていくことになる。
具体的に今回の書籍には、山下洋輔、Char、Dr.kyOnなどJIROKICHIを愛してやまないミュージシャン、スタッフへのインタビューと、楽屋の段ボール箱に眠っていた貴重な記録が披露されている。甲本ヒロトなどからの寄稿も掲載。それらから、ライブハウスという名の店が乱立する今、世代を超えて支持される小さなライブハウスの物語が音楽の本質を垣間見ることができるだろう。ライブを愛し、音楽を愛する人たちすべてに贈る永久保存版だ。これは単なるノスタルジーを超越する、あくまでもリアルな一冊である。そして、40年間の全出演者リスト付きという、とてつもない企画も。
[インタビュー]
菊地浩司(映画字幕翻訳者)、龍野治徳(甲府・桜座)、山岸潤史、峰厚介、テリー(京都・拾得)、水島博範(京都・磔磔)、有山じゅんじ、白崎映美、辰巳“小五郎”光英、妹尾隆一郎、近藤房之助、Dr.kyOn、渋谷毅、金子マリ、小川美潮、吾妻光良、KOTEZ、井出情児(カメラマン)、山下洋輔、梅津和時、沼澤尚、Char、永井ホトケ隆、浜田真理子、tamamix、大久保初夏、ナカムラ(モアリズム)、大西ユカリ、ズクナシ、Rie “Lee”Kanehira、加藤エレナ、清野美土、河合わかば、小室等・こむろゆい(掲載順)
[寄稿]渡辺祐、甲本ヒロト、本田珠也(掲載順)
[表紙カバー 帯コメント]
「入った瞬間にわかりますよね。カフェとかじゃなく、ザッツ音楽小屋みたいな。」(加藤エレナ)
「やっぱり店ってそうやんか。できたばっかりの時は音の響きも、壁の匂いも冷たいけど、お客さんとかミュージシャンとか、人の気が入るだけで良くなっていくんやな。不思議やな。」(有山じゅんじ)
「何が必要って、やっぱりライブできる場所だよ。ジロキチみたいなお店を作っていくのが、もしかすると 次の世代とか、次の次の世代の為に必要なことかな。」(Char)
「音楽を始めた時に持っていた、ややもすると置き去りにしている大切なものに気づくというのかな。もう 一回我に返らせてくれるような、ジロキチにはそういう力があるんですよ。」(小室等)
2014年12月17日発売
ISBN978-4-907276-25-6 ¥2,500+税
Live Music JIROKICHI 40th アニバーサリー実行委員会・編
A5判 272頁
発行:株式会社Pヴァイン
発売:日販アイ・ビー・エス株式会社
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