【ライブレポート】BUCK-TICK <或いはアナーキー -N P P N B D K N->で美しい世界、夢のような時間を体感
2014年6月にリリースされた最新アルバム『或いはアナーキー』を引っ提げ、ホールツアーとスタンディングツアーという2つのメニューを用意し7か月にわたり全国を駆け巡って来たBUCK-TICKが、12月29日、その集大成となるファイナル公演<或いはアナーキー -N P P N B D K N->を開催した。年末の日本武道館は15年連続開催となり、衰えることのない人気とますます高まる魅力を再認識する公演となった。
◆<或いはアナーキー -N P P N B D K N-> 画像
時刻は午後6時40分頃。黒、白、赤を基調にしたライティングがステージを彩った後、SEに合わせて映し出されたのは、いくつもの巨大な歯車が互いに噛み合うメカニカルなイメージ映像。“或いはアナーキー”という文字のシルエットが浮かび上がると、星野英彦(G)の歯切れの良いギター・カッティングを皮切りに、最新アルバム『或いはアナーキー』の1曲目である「DADA DISCO –G H T H B K H T D-」がスタートした。
一段高い後方、赤い絨毯の上では櫻井敦司(Vo)はゴージャスな羽根飾りをまとって妖艶に佇み、腰掛けて脚を組んだ今井寿(G)は、まるで暗号を唱えるかのようにシュールな歌声を響かせる。冒頭からしっかりとその世界に引き込んだ後、明滅するライトに照らされながら櫻井がステージ前方へとようやく歩み出して来ると、今井、星野は互いに立ち位置を入れ替わるようにダイナミックに動き、華やかなステージングで魅了。武道館は早くも、日常からは遠く離れた異界へと様変わりしていた。
やがて、鳴り響くサイレンのような不穏でスリリングなリフが鳴り響き、「ICONOCLASM」へと突入。星野の緻密なストロークと、今井が新たに付け加えたヒネリの効いたフレーズとが絡み合い、会場は熱狂する。両手を優雅に広げてお辞儀した櫻井は、「皆さん、今日は集まってくれてどうもありがとう。楽しんで行ってください」と挨拶した。明るい色彩を帯びた天井画がいくつもの小窓から覗く神聖な映像をバックに、「ボードレールで眠れない」を、優しく語り掛けるような、笑みを含んだような声音で歌い届け観客を陶酔させたかと思えば、「PHANTOM VOLTAIRE」の冒頭、しなる鞭のような樋口豊(B)のベースフレーズで覚醒を促す。歌謡調のメロディーと性急なビートが絡み合いながら疾走するBUCK-TICKらしいこのロックナンバーは、逆回りの時計、月、燭台といったモチーフの映像との相乗効果で、ますますオーディエンスを幻惑していく。
降りしきる雨や鮮血を思わせる映像と共に披露された「サタン」は、マイクスタンドを胸に突き刺すようなアクションの後、息絶えるようにのけぞる櫻井。その姿は壮絶な美しさを帯びていた。続く「masQue」では、白い仮面を小道具に、顔を覆ったり露わにしたりといったパフォーマンス。歌と表情、身体の動き……その表現者としての奥深さは計り知れない。
折り返し地点を迎えると、ステージは青い光に包まれ、瞬時にして清らかな空気感で満たされていった。星空が出現する中、披露されたのは「世界は闇で満ちている」。語弊があるかもしれないが、どこかフォークソング的な実直さを宿す美しいメロディーが心に深く沁み込んでくる。腰掛けて歌っていた櫻井はやがて立ち上がり、メンバーを今井から順に指さし、続いて、客席側を指し示す。その姿に感じたのは、得も言われぬ優しさと人間的な温かさで、曲が終わり切る前に大きな拍手と歓声が起きたのは当然のことのように思えた。
「1、2、3、4!」と威勢のよいヤガミ・トール(Dr)のカウントでパッと視界が明るく開けると、「ONCE UPON A TIME」がスタート。櫻井が時折マイクを客席に向け、観客はそれに応じて歌う。客席も煌々と照らされ、圧倒的な解放感と至福のオーラに包まれていった。櫻井による吐息交じりの世にもセクシーなカウントダウンで始まった「宇宙サーカス」は、エレクトロニカのアプローチを取り入れながらもシンプルで骨太なロックのテンションが際立っていて、リズム隊のグルーヴ感がグイグイと迫って来て心地よい。ミラーボールがスクリーンに映し出される中、ロックンロール・ディスコとでも呼びたい魅惑の昂揚感溢れる「独壇場Beauty -R.I.P.-」、サンバのリズムを取り入れながらどこか民謡的なエッセンスをも含んだ「SURVIVAL DANCE」と畳み掛け、和洋、新旧、陰陽を分け隔てなくBUCK-TICK流にブレンドした音楽世界が広がる。ダンスミュージックとは、特定のリズムや曲調で括られるものではなく、ひとたび聴けばその音に反応し自然と身体が動いてしまう、そんな本能を呼び起こす音楽全てを指すのだ、と思い知らされた。
終盤へと差し掛かり、イントロの1音目で歓喜のどよめきが起きたのは「ROMANCE」。カーニバル・モードは鳴りを潜め、一気にシリアスな空気が立ち込めていく。観客がじっと立ち尽くして聴き入る中、ウッドベースのしっとりとした音色、ギターで奏でられるダークな旋律はどこまでも耽美。黒いレースをかぶり、跪いて祈るようにして歌う櫻井の姿には宗教画に似た厳かさがあった。
「絶界」では夕焼けのようなオレンジの光に切り替わり、小気味よいスパニッシュ・サウンドに乗せ、歌をどこまでも豊かに、深く表現。大きな拍手の中歌い終えると、「今年はたくさん、どうもありがとう! 皆さんにとっていい年でありますように。ひつじ年、行こうぜ!」(櫻井)と年末のライブらしいMCを盛り込みながら、最後は、「惡の華」で思いきりダークに激しく、続く「HEAVEN」ではすべてが浄化されるように清らかな美しさを湛え、本編は終了した。
アンコールは、デジタルビートが効いた「メランコリア -ELECTRIA-」でクールに、スタイリッシュに幕開け。「NOT FOUND」では規則正しいリズムを刻むヤガミのストイックなドラミング、ユータのベースに耳を奪われた。ギリシア風の柱が立ち並ぶ世界へと歩み進んで行くような視点で展開する映像を背後に、「形而上 流星」を披露。透明で美しく、時には力強く歌われるメロディーは、神秘的にしてエモーショナルだ。今井、星野のコーラスにも、観客の歌声を聴こうと耳に手を当てたりマイクを向けたりする櫻井の姿にも、強く胸を打たれた。
ドロドロとした液体のような、あるいは目を閉じると瞼に浮かぶ鮮やかな残像のような映像と、雄大な自然界の映像が重なり合う中、暗く奥深い世界を描き出したのは「無題」。バスドラのアタック音がずっしりと腹に響き、重厚な世界を体感することができた。
ダブルアンコールでは、まず「ノクターン -RAIN SONG-」を放ち、「コンサートも、今年も終わってしまいますが、今を楽しんでください、今!」(櫻井)と煽ると、「派手に行きましょう!」(櫻井)と「CLIMAX TOGETHER」を投下。「皆さんに幸せが訪れますように」(櫻井)と願いを口にして、初期曲「…IN HEAVEN…」「MOON LIGHT」を、’92年のセルフ・カバーアルバム『殺シノ調ベ』バージョンで披露。レアな選曲に鳥肌が立ち懐かしさがこみ上げるものの、その歌、音に映し出されていたのはあくまでも彼らの“今”。客電が灯されて目の当たりにしたのは、拳を突き上げて喜びに湧き立つ観客の姿だった。
「よいお年を! Thank you、ありがとう!」(櫻井)との言葉に続き、終わりを惜しむように長く長く音を鳴らし続けた後、キメの一撃で2時間30分に及ぶライブは終演。最新アルバム『或いはアナーキー』収録曲を中心に据えながらも、1年を締めくくる恒例のライブらしいサプライズや自由さも盛り込まれた、美しい夢のような時間だった。
Text by 大前多恵
Photo by 森 久
<或いはアナーキー –N P P N B D K N−>セットリスト
1.DADA DISCO - G J T H B K H T D -
2.Devil’N Angel
3.ICONOCLASM
SE
4.ボードレールで眠れない
5.PHANTOM VOLTAIRE
6.サタン
7.masQue
SE
8.世界は闇で満ちている
9.ONCE UPON A TIME
10.宇宙サーカス
11.独壇場Beauty -R.I.P.-
12.SURVIVAL DANCE
13.ROMANCE
14.絶界
15.惡の華
16.HEAVEN
アンコール1
1.メランコリア -ELECTRIA-
2.NOT FOUND
3.形而上 流星
4.無題
アンコール2
1.ノクターン -RAIN SONG-
2.CLIMAX TOGETHER
3.…IN HEAVEN…
4.MOON LIGHT
LIVE Blu-ray & DVD『TOUR2014 或いはアナーキー -FINAL-』
[DVD初回限定盤]2DVD+2DISC(プラチナSHM)+PHOTO BOOK
TKBA-1221 ¥ 9,000(税抜)
[DVD通常盤]2DVD
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[Blu-ray初回限定盤]Blu-ray+2DISC(プラチナSHM)+PHOTO BOOK
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[Blu-ray 通常盤]Blu-ray
TKXA-1044 ¥ 6,500(税抜)
Blu-ray&DVD初回限定盤特典
■LIVE DISC(プラチナSHM 2枚組)※通常のCDプレイヤーで再生可能な高音質ディスク
■PHOTO BOOK(80P)
■スペシャルパッケージ仕様
収録予定曲
SE ~OR ANARCHY~
1.DADA DISCO - G J T H B K H T D –
2.SURVIVAL DANCE
3.Devil’N Angel
4.ICONOCLASM
SE ~BDLR~
5.ボードレールで眠れない
6.masQue
7.PHANTOM VOLTAIRE
8.サタン
9.世界は闇で満ちている
10.ONCE UPON A TIME
11.LIMBO
12.宇宙サーカス
13.メランコリア
14.NOT FOUND
SE ~FOOL~
15.無題
16.形而上 流星
-ENCORE-
17.VICTIMS OF LOVE with 黒色すみれ
18.DOLL
19.DIABOLO
20.LOVE PARADE
21.STEPPERS –PARADE-
22.NATIONAL MEDIA BOYS
23.夢魔 -The Nightmare
『惡の華 -Completeworks-』 完全生産限定・メモリアルボックス
VIZL-772 ¥13,800+tax
発売から25年。オリコンチャート1位、ダブルプラチナディスクを獲得した日本ロック史に残る金字塔アルバムが新たにミックスした記念盤。
仕様/ディスク5枚組+ポートレートカード
■Disc-1 / アルバム『惡の華(2015年ミックス版)』プラチナSHM
1.NATIONAL MEDIA BOYS
2.幻の都
3.LOVE ME
4.PLEASURE LAND
5.MISTY BLUE
6.DIZZY MOON
7.SABBAT
8.THE WORLD IS YOURS
9.惡の華
10.KISS ME GOOD-BYE
■Disc-2 / シングル『惡の華 (2015年ミックス版)』プラチナSHM
1.惡の華(シングルバージョン)
2.UNDER THE MOONLIGHT(オリジナルアルバム未収録)
■Disc-3&4
ビデオアルバム『惡の華 (2015年ミックス版)』Blu-ray&DVD
■Disc-5
LP 『惡の華 (1990年オリジナル版)』アナログレコード
ハイレゾ音源1曲無料ダウンロードID封入(2015年12月31日まで有効)
シリアルナンバー入りLPサイズボックス収納
Album『惡の華(2015年ミックス版)』
プラチナSHM(CDプレーヤー再生用ハイエンドディスク)
VICL-78002 ¥3,500(tax out)
BUCK-TICK初のハイレゾ配信も本作にて同時スタート
ハイレゾ配信価格 ¥3,500(tax in)
Video Album『惡の華(2015年ミックス版)』
Blu-ray/VIXL-139 ¥5,800(tax out)
DVD/VIBL-741 ¥4,800(tax out)
◆BUCK-TICK オフィシャルサイト
◆BUCK-TICK 2014特設Facebook
◆徳間ジャパン BUCK-TICK
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