【インタビュー】柴田淳、初めて経験した空っぽの自分と向き合いもがきながら作り上げたアルバム『バビルサの牙』

ポスト

■いま若さからも開放されてようやく女、大人になれたって思うんです
■ただ単に恋愛の歌を書くんじゃなく女の歌を書いていきたいなって


▲『バビルサの牙』初回限定盤
▲『バビルサの牙』通常盤

――「王妃の微笑み」は一曲目にふさわしいインパクトがあります。さらに「反面教師」のイントロでドラムの刻みがしばらく鳴ってるでしょ? どんな曲が始まるのかすごいワクワクしちゃうんですよ。あれは打ち込み?

柴田:打ち込みです。最初はあんなにイントロは長くなかったんです。後ろからやってくる感じもするし、トランスみたいな感じでどこまで盛り上がってっちゃうの~?ってところまでいって、バンってはじまったらカッコいいよなぁと思ったから、伸ばすだけ伸ばしてもらった。

――普通は「イントロ長っ!」て思うところがぜんぜんそういう気持ちにならないのが不思議ですよね。

柴田:ほんと? それは良かった! でもね、このアレンジを作ってもらって、どんな歌詞を載せたらいいの?ってなったんですよ。私の場合、怒りにしても、ムカつくって書かないで、ちょっと遠回しに書いたりしていたんですが、今回は、そういう計算もすることができない感じだったので、ムカつくことは「ムカつく」でしか書けなくて。

――それは「哀れな女たち」もですよね。

柴田:そう。これはストレートもストレート。すごい性格悪いって思われるかもしれないけど(笑)。

――いや、共感しました。そう思う女性は多いはず。

柴田:いいんですよ、性格悪いと思われても(笑)。

――この曲、女性心理を鋭く突いていますよね。何か作るきっかけがあったんですか?

柴田:今回のレコーディングって、みんなとも足並みが揃わなくて10ヶ月近くになってしまったんです。常にこもって何かやってて、その10ヶ月ほとんど休みがなかった。10ヶ月の間でプライベートを楽しんだのって、一度、3時間だけ、外に出て友達とお酒を飲んだことくらいで。その他のストレス発散と言えばネットしかなかったんですけど、その時に、主婦からOLから様々な女性たちが集う掲示板を沢山見つけたんです。凄いですね! 今のネットって! びっくりしました。そしてちょっと覗いてしまいました(笑)。で、そういうのを見ていると、女の優しい部分だけじゃなくて汚いところもたくさん見えてきて。でもそれを100%否定できない。誰でも持ってる感情が出ているだけなんですよね。でも、ここまでひねくれたり、妬んだりしてる人は、それだけのストレスを抱えて生活してるってことじゃないですか。みんないろいろ抱えてるんだなぁって思っちゃって、ちょっと応援したくなりました。

――うんうん。

柴田:私もアラフォーになって、相変わらず一人で(笑)。アラサー世代のときは、結婚とか出産とか、なんか無言のプレッシャーを感じて、勝手に自分と人を比べて勝手に劣等感を抱くっていう微妙な時期も過ごしているから、そういういじけてしまう気持ちもわからないでもないんです。アラサーの頃って、中途半端に若いから、私は変に若さにしがみついていましたね。なんか必死だった。それが今、若さからも開放されて、ようやく女になれた、大人になれたって思うんです。しかも、恋に依存せず、まずは自分で楽しむっていうライフスタイルが確立できつつあって。葛藤している人たちをたくさん見ていたから、ただ単に恋愛の歌を書くんじゃなく、女の歌を書いていきたいなってすごい思ったんですよ。

――今後のスタイルがちょっと見えたんですね。

柴田:はい。まだ明確ではないんですけど、この曲でヒントをもらったかなって思います。この曲は、ズバっと言い切るのは気持ちよかった。ただ、昔、映画を見たときに、すごく不快な思いをさせられたことがあるんですね。今までは不快な思いをさせてもいいから人の心を動かしたり、何か反応してもらうっていうことが喜びだったし、凄いことだと思ってたんです。でも自分が不快な思いをさせられたときに、やっぱりそれは嫌だなぁと思ったし、心を動かすって言っても、いろいろあるなぁって。だから、誰かの心を動かすにしても、今の私でしか書けないものを書きたいって思ったんです。母も姉も結婚して子供を生んでますけど、彼女たちが唯一わからないのは、シングルで生きる女の気持ちなんですよ。私は妻と母親の気持ちがわからないけど、シングルの女性の気持ちはわかるっていうことを武器にして、今後も何か書いていけたらなぁってすごく思っているんです。

取材・文●大橋美貴子

『バビルサの牙』

『バビルサの牙』
2014.12.17発売
●初回限定盤 VICL-78001 \3,600+税
※デジパック+プラチナSHM仕様
●通常盤 VICL-64265 \3,000+税
01.王妃の微笑み
02.反面教師
03.白い鎖
04.牙が折れても~instrumental~
05.車窓
06.哀れな女たち
07.ピュア
08.愛のかたち
09.横顔
10.記憶


◆インタビュー(1)へ戻る

この記事をポスト

この記事の関連情報