【ライブレポート】3人の潜伏者が集めたものは創造力、情熱、想像力。<TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30>東京公演

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TM NETWORKの全国ツアー<TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30>東京公演が、12月9日と10日、東京国際フォーラム ホールAにて開催された。

◆<TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30>東京公演 画像

1984年、地球を調査するために送り込まれた潜伏者・TM NETWORKの3人。その任務は30年。つまりQUIT30。ライブ終盤には、任務完了を前にした彼らの選択が明らかになる。

前のツアー<the beginning of the end>にて、最後に赤ちゃん=キャロルとともに地球へと放出されたバトン。今回のライブは、そのバトンから話がスタートする。

<Revolution>

宇都宮隆の声が鳴り響き、「SEVEN DAYS WAR」の流麗な調べが会場を満たしていく。映画のようなオープニングムービー、そして、どこかの街角で、国籍も異なる3人の潜伏者らしき人物(もっとも、潜伏者なので国籍以前に地球人ではない)がスクリーンに映し出される。この街は、神がダーツを投げる街なのか、はたまた少年と少女がすれ違っていく街角なのか、もしくは染まることができなかった古いレンガの街並みなのかは定かではないが、TM NETWORK作品とのリンクがどこかにあるのではないかと探してしまうのも、彼らのライブにおける楽しみというものである。

黒人男性の姿をした潜伏者が、手にした紙袋からTM NETWORKと刻印された“あのバトン”を取り出し、投げ捨てるようにおもむろに手から離す。転がっていくバトン。そして、それを拾い上げるのは、ステージ上に姿を見せた宇都宮隆。映像と現実がリンクする瞬間。バーチャルとリアルの境目かのような空間が始まっていく。

バトンとともに地球に放出されたカプセルに入った赤ん坊=キャロル・ミュー・ダグラスが案内人を務める今夜のTM NETWORKのライブ。「Birth」では、(この30年の間に起こった)地球上の様々な出来事が、情報の洪水のように、もしくはシナプスが結合していくように、次々に映し出されていく。さらに、オーディエンスの鼓動を早めていくかのように体を打ち付けるビートと、光の粒が眩いばかりに回って「WILD HEAVEN」。集まった5500人もWILD HEAVENを目指すかのように宙を指して体を揺らせば、宇都宮隆は、「Let me know what to do tonight」から始まる台詞を、それはまさに愛を誓うように片膝をついて囁く。もちろんそんなウツのパフォーマンスに、女性ファンからは黄色い歓声が一気に上がる。

小室哲哉のMOTIF XF6から紡がれるピアノの音色に誘われての「TIME TO COUNT DOWN」。高まる客席のボルテージをそのまま音に変えたかのような、疾走感全開なサウンドで、宇都宮隆は時空の渦、デジタルの渦へと飛び込んでいく。そんな映像ともリンクした演出は、観客をステージに釘付けにする。

しかし次の瞬間、何かしらの事件を告げる不穏な赤いランプが回る(<START investigation>で“発砲事件”が発生した時のような)。そして30年経って大人になった女性=キャロルが、一台の車へと乗り込む。不安さを掻き立てる中で、人とは何かを3人が声を重ねて歌い上げる「The Beginning Of The End」「Mist」。

キャロルは言う。3人の潜伏者が集めたものは断片、破片、欠片に過ぎない。しかし、その3つを組み合わせたりつなげると、我々に大切なことを伝える、と。

そんな3人が集めた欠片を視覚化したであろう、3つの三角錐が空から降りてきて、ひとつに重なる。そしてアルバム『QUIT30』のリード曲でもある「Alive」へ。これぞまさしくTM NETWORKとも言うべき、懐かしい雰囲気と新しい音が調和したサウンドが、会場を包み込むと、あまりの気持ちよさに観客も自然と体でリズムをとりながら、その音に身を委ねる。

暗転し、「君がいてよかった」へ。ある意味、本ツアーの大きな見せ場のひとつでもある。

中盤、演奏が止まり、スポットライトを浴びる木根尚登。木根は、ステージの端に座って観客も座るように促す。そしてアコギソロと、静まり返る客席に向けて、ノーマイクで「月はピアノに誘われて」を歌い上げる(12月9日公演。10日公演は「LOOKING AT YOU」)。そんな“木根がいてよかった”コーナーを経て、大きな喝采を背中で浴びながらエレキギターに持ち替える。ショルダーキーボードを手にした小室哲哉も登場し、今度は「GIRLFRIEND」のフレーズも織り交ぜながらのギター×キーボード対決へと移行する。「くじけない君を / 僕は自慢にしているよ」というフレーズをお互い(もしくは3人とも)に思っていたりするのだろうか。そんなことがふと浮かぶ瞬間でもある。いずれにせよ、存分に魅せていくふたり。客席の興奮も一気に高まってきたところで、宇都宮隆も再度、ステージに姿を見せて「君がいてよかった」を終えた。

続く「Always be there」で、温かい光に包まれた3人が歌い上げたハーモニーからの、流れ星も流れる星空をバックに歌い上げる「STILL LOVE HER」。もう26年も前のこの曲。宇都宮隆の変わることない歌声が、多くの人たちを一瞬にして、(ひとりひとりがこの曲に出会った時期は異なるだろうが)その当時の景色へと連れて行く。また、中盤の木根尚登のハーモニカで、宇都宮隆と小室哲哉も木根のそばに寄って、これまたいつまでも変わらないスリーショットを見せる。そしてそこからは、会場の誰もが口ずさんで、やがて大合唱を巻き起こす。TM NETWORKのTMがTime Machineであるなら、この空間こそ、まさに、時を越えたタイムマシーンなのである。

日常生活を木根尚登に狙われるキャロル(TM NETWORKの3人も潜伏者だったことを思い出す)。彼女は言う。どの時代にも潜伏者はいる。隣の人や父親がそうかもしれない。そして、潜伏者が敵か味方か。その答えは“あの船”に乗れば見つかる、と。

3分割された移動型のスクリーンも登場し、“あの船”が地球を分析・観察している映像を流しながら「Glow」。本ツアーは、7年ぶりのオリジナルアルバム『QUIT30』を引っさげて行なわれているが、このアルバムのキーワードも“俯瞰”。考えてみれば、今回のライブ自体、我々を物語の中に誘っていったこれまでの<START investigation><THE BEGINNING OF THE END>とは少し異なり(キャロルがナビゲーターを務めているということもあり)、潜伏者たちの行動を俯瞰で観ているような感覚を覚える。

“あの船”から常に見られている、微かに感じる得体の知れないプレッシャーをはねのけるように、「I am」では、会場を巻き込んでの「Yes I am」の大合唱が再び巻き起こる。それは、大国のトップがシャウトしたって世界は変わらない。変えるのは、上のほうで国を動かしている人たちではなく<Yes I am, Yes I am / Yes I am a human>と叫ぶひとりひとり、未来を変えるのは、新しい未来を創っていくのは、ひとりひとりであることを強く胸に刻ませる。そして、キーボードに囲まれた小室哲哉が木根尚登のアコギとともに観客を攻撃的なサウンドで煽り、「Get Wild 2014」へ。<Get wild and tough>。総じて、潜伏者たちもきっと調査の中で知ることになったであろう“人間の強さ”を感じさせる展開だ。と、同時に、今もなおアップデートされ続ける「Get Wild」の最新形態に誰もが歓喜した。

3人の潜伏者は任務を終えるはずだった、というキャロル。ところが彼らの中のひとりが行動を起こしたために、その計画は変更されたという。彼らが人間を学んだために。

アジアの異国(インドネシア)で、厳重な警備に守られながら小室哲哉が車を降りる。「Loop Of The Life」に続き「Entrande Of The Earth 1」が流れる中、スクリーンでは、ホテルの廊下で“あのバトン”を拾い上げる小室の後ろ姿が。そのまま「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」へ。赤く照らされるステージで、マイクスタンドを撫で、抱え上げて、ライトの光で金色に輝くようにも見える髪をなびかせてターンを決める宇都宮隆。そのスマートかつセクシーなパフォーマンスにオーディエンスは大きく沸く。

興奮は「Self Control」に引き継がれる。学校の情景が次々表示される中で、転がったホワイトボード用マーカーには「EXPO」のロゴがチラリ。また会場では、小室哲哉と木根尚登がステージを左右ギリギリのところまで行ってのライブパフォーマンスを見せると、観客は熱狂。小室哲哉も思わずショルキーを客席へと投げ入れる。

そして“あの船”が登場する。バックでライブを支え続けたサポートミュージシャンのRUYと松尾和博もスクリーンに映しだされて「LOUD」。これまでのTM NETWORKのライブ映像がスクリーンに表示されながら、12月9日のTM NETWORKのライブとコネクトする。時間と空間を越えてエモーショナルなまま一体となっていく会場。

歌い終えると宇都宮隆は軽く手を上げて、木根尚登とともにステージから姿を消した。

キャロルは言う。自分には特別な力があると。しかしその力は、3人の潜伏者が集めた3つの欠片をつなぎ合わせることで、ひとりひとりにも存在するという。創造力(creation)、情熱(concentration)、想像力(imagination)。そしてこれを目覚めさせるものが音楽である、と。

キャロルからのメッセージを経て、再び、あの船のハッチからTM NETWORKがステージに姿を見せる。最後に「The Beginning Of The End II」と「The Beginning Of The End III」を高らかに歌い、そして今夜の物語は幕を閉じたのだった。

ところで、最後に3人が古いレンガの街並の向こう側、ひとりずつロンドン、ニューヨーク、インドネシアに散らばっていくシーン。木根尚登は車を止めてPCを開く。そこに表示されていたのは「Next mission is commanded.」の文字。

2015年1月には愛知と福島での追加公演も決まったTM NETWORKの本ツアー。“Next mission”にあたる次の公演は、2015年2月7日と8日にさいたまスーパーアリーナ、2月14日と15日に神戸ワールド記念ホールで開催となる、<TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA>アリーナ公演だ。

text by ytsuji a.k.a.編集部(つ)

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