【ライブレポート】minus(-)、初の東名阪ツアー最終公演で「この曲は演りおさめ」

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元SOFT BALLETの藤井麻輝と森岡賢によるユニットminus(-)が10月27日、初の東名阪ツアー<minus(-) tour2014 [D]rive>のファイナル公演を渋谷WWWで開催した。

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先頃リリースされたばかりの1stミニアルバム『D』をひっさげての本公演のチケットは即日ソールドアウト。文字どおり、ぎっしり満員の場内にはピアノのインストゥルメンタルが流れ、ロックのライブというより演劇の公演が始まるかのように静まりかえっている。もちろん、それは期待を胸に秘めた静寂だけれど。

誰もいないステージを照らしていた緑の光の筋がやがて客席にも向けられ、射るような強く青い光に変わっていく頃、SEが徐々に大きくなり、藤井と森岡、サポートドラマーの平井直樹が登場すると場内は拍手と歓声に包まれた。

オープニングはアルバム『D』幕開けの曲「No_9」だ。幻想で美しいピアノのフレーズに藤井のノイズが絶妙に絡み、イマジネーションをどこまでも広げてくれる。徐々にカオスになっていく展開は宇宙の営みのような壮大さを感じさせた。平井のドラムが加わる「RZM」で森岡がハンドクラッピングで誘い、両手を広げて、パフォーマンスしながら歌い始めると息を呑むようにひとつひとつの音に耳を傾けていたオーディエンスが身体を揺らし始めた。

張りつめた緊張感のあるサウンドワークと浮遊するシンセのフレーズが何とも心地よく、アルバムの曲順どおり、「No_6」へと突入した前半戦で、空間は完全にminus(-)の世界に支配されてしまった。エキゾティックでテクノな「No_4」ではキーボード2台を操りながら歌う森岡がヴォーギングのようなダンスを披露。ループするフレーズ、藤井の音のクールで鋭いセンスが場内を熱くさせて、エンディングでは拍手と大歓声が沸き起こった。

「こんばんは。minus(-)です。ツアー最終日、盛り上がっていきましょう! 愛してるぜ!」と森岡がテンション高めなのに対し藤井はゆったりした低い声で「藤井です」とひとこと。森岡が漫才コンビ風に「2人揃ってminus(-)……」と言うと、それを受けて藤井が「です」と返し、場内には笑いが。男性ファンの「藤井さん、お帰り!」という声に言葉は発さず、右手を挙げて気持ちを表した。

サポートドラムの平井氏が紹介され、「ホットなヤツ、行くよ」と煽ると、中盤は森岡がセンターで踊りながら歌う「PEEP SHOW」から「CLOSE」へ。躍動感あふれるナンバーに客席も手を挙げて盛り上がり、エレクトリックなダンスグルーヴに耽溺できるこのゾーンは、音源とはまた違う彼らの顔を垣間見せてくれる。テンションが上がりきった場内に藤井が「では、残り2曲です」と告げると「えー!?」という声があちこちで上がる。そして、青い光がステージを包んだ「No_2」では夜間飛行の旅に連れていかれるような錯覚に襲われた。そしてラストナンバーは藤井がボーカルをとった(音源ではクガツハズカムがゲストボーカル)「B612」。音楽に絶望していた時期の自らの心情に近い歌詞だと取材時に語っていたが、メロディの素晴らしさもさることながら、奥深くまで刺さってくる切ない歌は強烈な印象を残した。

アンコールではハイテンションで歩きまわりながら「SWEET BABY YEAH!」と叫ぶ森岡に「いつから演劇部になったの?」と藤井がツッコミを入れて笑わせる場面もありつつ、11月9日に新代田FEVERで追加公演(アルバムにゲスト参加しているFAKE?のKEN LLOYDがボーカルのATOM ON SPHEREも出演)を行なうこと、2015年の2月にLillies and Remains のツアーに参加することを告知した。

「最後なので1曲だけ。この曲はこれでやりおさめです。データ破棄。今いる人は耳に焼きつけてくれ」──藤井麻輝

残念がる声の中、SOFT BALLET時代のナンバー「JIM DOG」を演奏し、ステージを去った。客電がついてもアナウンスが流れても、アンコールの声はしばらく鳴りやむことがなかった。

誰もが想像しなかった藤井と森岡のタッグによるminus(-)。その強力な存在感と緊張感と癒しが交錯する一音一音の吸引力に魔法をかけられたような気分になり、音楽をやるべき人間のステージに圧倒された。

取材・文◎山本弘子 撮影◎緒車寿一

■<minus(-) tour2014 [D]rive>
10月27日(月)@渋谷WWWセットリスト
SE
1.No_9
2.RZM
3.No_6
4.No.4
MC
5.PEEP SHOW
6.CLOSE
7.No_5
MC
8.No_2
9.B612
encore
10.JIM DOG


■minus(-) 1stミニアルバム『D』
2014年10月22日発売
【CD+DVD】AVCD-93018/B /2,500円(税別)
1.No_9
2.RZM(GUEST VOCAL:KENT/Lillies and Remains)
3.No_6
4.No.4(GUEST VOCAL:KEN LLOYD/FAKE?,OBLIVION DUST)
5.B612(GUEST VOCAL:クガツハズカム)
6.No_2
[DVD]
※5月30日<minus(-)1st experiment“too short to show”>at 高円寺HIGHより
1.No_2
2.No_4
3.No_6
4.No_5(CD未収録)

■<[AM] bit minus(-)xATOM ON SPHERE>
2014年11月9日(日) 新代田FEVER
出演:minus(-)、ATOM ON SPHERE

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