【ライブレポート】BUCK-TICK、刺激的に輝き続ける、唯一無二の世界

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9月26日。東京 NHKホールにて、<BUCK-TICK TOUR2014或いはアナーキー>の最終公演が行われた。このツアーは、6月4日にリリースされた最新アルバム『或いはアナーキー』を引っ提げて行われたもので、6月18日のオリンパスホール八王子を皮切りに、28公演を巡った大規模なツアーであった。実に、大規模なツアーは2012年の秋ぶりとあって、会場には、集まったファンたちの待ち焦がれた故の、他に吐き出し方を見つけられない熱で溢れかえっていた。

◆<BUCK-TICK TOUR2014或いはアナーキー> 9月26日@東京NHKホール公演 画像

アルバム『或いはアナーキー』は、2012年の9月にリリースされた前アルバム『夢見る宇宙』以来約1年9ヶ月ぶりのアルバムとなったが、ランキングチャート4位を獲得するなど、2013年のメジャーデビュー25周年を経た今、ここにきてまた“バクチク現象”が巻き起こっていることを感じさせた。それを証拠に、会場には、長きに渡って彼らの音を愛し続けてきた往年のロックファンに混じり、彼らがメジャーデビューした1987年にはまだ生まれていなかったであろう、10代の若いファンの姿も多く見受けられた。

古きを新しく感じる感覚はファッション界でも繰り返されるが、それは決してすべてに当てはまるものではない。いくら美しく輝こうとも、メッキはやがて剥がれて朽ちる。やはりいつまでも輝き、本来の美しさを保ち永遠の美しさを放つのは“本物”や“元祖”だけだ。しかし。その“本物”や“元祖”も、しまい込んでしまったり、持ち手が相応しくなければ、輝きを失い色褪せてしまう。宝の持ち腐れ。とはまさにそんなことを言う。

音楽というのは時代を象徴する宝と言える。その時代を映し出し、人が生きる上で、誰もが忘れたくない大切な思い出を持つとき、そこには必ず、その大切な記憶と共に瞬間を鮮明に思い描かせる音楽が存在する。音楽とは、そんな何ものにも代え難い宝なのだ。

BUCK-TICKというバンドは、メジャーデビューした1987年から絶やすことなく、27年間輝き続ける音と唄をコンスタントに発信し続けているバンドである。

これこそ本物。まさに。BUCK-TICKというバンドが放つサウンドとメロディと、そこに乗る前衛的でありながら気品のあるワードたちは、世代を超えた聴き手たちを、心地よい挑発で呑み込んでいくのである。

彼らがルーツとしてきた音楽を、BUCK-TICKというサウンドに落とし込み、80年代90年代の背景に溶け込ませてきたその独自な世界観は、その時代を生きてきた私たちには懐かしく心地よいモノであり、今の時代を生きる若者たちには、とても新鮮で素晴しく刺激的なモノなのだ。そう。BUCK-TICKというバンドの生き様を伺い知ることが出来る、エロスとタナトスの象徴を散りばめたデカダンな世界は、BUCK-TICKというバンドにしか生み出せない唯一無二なものなのだ。

『或いはアナーキー』。そんな含みを持たせたワード使いにもゾクゾクさせられる。『BUCK-TICK TOUR2014或いはアナーキー』の最終公演であったNHKホールの2日目。この日も彼らは、集まったオーディエンスを心地よい挑発で酔わせてくれたのだった。

大歓声に包まれステージに現れた彼らは、始まりの曲として「DADA DISCO -G J T H B K H T D-」を届けた。歯切れのいいリズムと、DISCOな時代をリアルに生きて来た彼らならではの感性が、コントラストの強い白と黒のストライプが描かれたステージと、赤と紺と白を基調としたセットと、バックに映し出される不思議なコラージュ世界に一瞬にして溶け込んだ。

最高の幕開け。さすがである。すでに、この時点でそのセンスの良さに感銘を受けずにはいられなかった。もちろん、彼らを渇望していたオーディエンスは、一瞬にして彼らの魅力に呑み込まれていった。

間髪入れずに届けられた「SURVIVAL DANCE」で櫻井敦司(Vo)は大きく左右に手を広げ、サウンドに合わせゆっくりと舞った。サンバなノリを艶やかに包み込んだBUCK-TICKならではのそのダンスナンバーは、会場をダンスフロアへと染め上げていった。同期に合わせて手拍子が起った「Devil’N Angel」では、跳ねたリズムと猟奇的な音色のギター音とアッパーな曲調が、バックのスクリーンに映し出された赤、紺、白の3色と連動し、よりその場の世界観を強く印象づけた。

「ありがとう。ようこそ──。化けの面のまま躍りましょう──」(櫻井)

「masQue」の歌詞の冒頭にあるワードを櫻井が発すると、今井寿(G)と星野英彦(G)が櫻井を挟み両サイドからアコギをかき鳴らし、その曲は始まった。“互いの眼球に舌 這わせましょうね”と歌われるこの曲こそ、エロスとタナトスの象徴を散りばめたデカダンな世界。彼らにしか描き出せない妖艶な仮面劇がそこに広がった。

ライブはそこからさらにディープな世界へと流れていった。逆にまわり時を遡る時計や闇に浮かぶ十字架、炎を揺らす蝋燭——。死後を思わす世界をバックに届けられた「PHANTOM VOLTAIRE」。深い黒と赤の世界に沈められる錯覚に引きずり込まれたメランコリックな「サタン」。櫻井は自らが纏っていた黒と赤の衣装を翻しながらその曲を妖艶に唄い躍って魅せた。

ヤガミ・トール(Dr)が魅せた美しく流れるタムがとても印象的だった「世界は闇で満ちている」の美しいメロディは、それまでのディープな世界を一変させ、櫻井はその柔らかな世界観の中で敢えて声を濁して唄った。タイトルと曲調の明るさのギャップのギミックは見事。これもまた、さすがである。そこからの流れで届けられた「ONCE UPON A TIME」。この曲が描き出す景色が、2014年に響きわたる幸せに心が躍った。80年代を思わす鮮やかなメロディを今のサウンドを持って放てるのは、彼ら以外に他に居ないだろう。今の時代には生まれてこないであろうこの世界観を、手放しに“今の音”として描くことが出来るBUCK-TICKは本当に素晴しいバンドだと改めて思った。

彼らは、本編ラストを5月14日にシングルとしてリリースされた「形而上 流星」で締めくくり、アンコールの声に応えた。アンコールでは、ボーカル、ピアノ、アコーディオンを担当するゆかとヴァイオリンを担当するさちの2人からなる女性ユニット黒色すみれをステージに呼び込み、「VICTIMS OF LOVE」「DOLL」「DIABOLO」を届けた。ここでは樋口豊(B)もアップライトベースでよりクラッシック要素を加え、ノスタルジックな世界へとオーディエンスを誘った。

2014年というこの時代に、BUCK-TICKというバンドが在り続けてくれることを誇らしく思った。ロックというジャンルをネイティブとしない日本だが、BUCK-TICKの放つ音は、日本が生んだネイティブなロックと言えるだろう。この日、改めてそれを痛感し、それを誇りに思った。

10月22日には、このツアー(7月31日の渋谷公会堂のライブ)の音源が収録されたライブアルバム『TOUR2014或いはアナーキー』がタワーレコード限定でリリースされるという。こんなにも早くライブを体感出来るとは嬉しい限り。またこのツアーは、<TOUR2014 metaform night~或いはアナーキー~>とタイトルを変え、11月2日の愛知 DIAMOND HALLを皮切りに、全国10会場11公演をまわるスタンディングツアーをスタートさせる。

このライブアルバムで体をならし、その興奮を是非スタンディングツアーで発散させてもらいたい。
今こそ。BUCK-TICK。

取材&文◎ 武市尚子 写真◎eri shibata

<TOUR2014 或いはアナーキー>
2014年9月26日 東京 NHKホール公演セットリスト
1.DADA DISCO –G J T H B K H T D-
2.SURVIVAL DANCE
3.Devil’N Angel
4.ICONOCLASM
5.ボードレールで眠れない
6.masQue
7.PHANTOM VOLTAIRE
8.サタン
9.世界は闇で満ちている
10.ONONCE UPON A TIME
11.LIMBO
12.宇宙サーカス
13.メランコリア
14.NOT FOUND
15.無題
16.形而上 流星
EN.1
1.VICTIMS OF LOVE with 黒色すみれ
2.DOLL with 黒色すみれ
3.DIABOLO with 黒色すみれ
4.LOVE PARADE
EN.2
1.STEPPERS –PARADE-
2.NATIONAL MEDIA BOYS
3.夢魔-The Nightmare-

■BUCK-TICK オリジナル香水
甘美な死骸 - qüan vie nnâ sigue eÿe - (オードトワレ)
内容量:50ml (1.7FL.OZ.)
販売価格:¥7,200(税込)※初回製造3000個限定
ご予約は10月1日 12:00よりスタート
http://edt.buck-tick.com/
※商品のお届けは、11月下旬を予定しています。

■単行本リリース情報
『ユータ −A DAYS OF INNOCENCE−』
10月22日発売(タワーレコード限定発売)
予価:¥3,000(税込)
発行:(株)音楽と人
※この書籍はタワーレコードのみで販売いたします。一般書店、CD店ではお買い求めいただけません。
※お近くにタワーレコードがない場合はタワーレコード・オンラインより予約、お買い求め下さい。
送料無料
http://tower.jp/item/3718896

LIVE CD
『TOUR2014 或いはアナーキー』
2014年10月22日発売
タワーレコード&TOWERmini全店・タワーレコード オンライン限定発売
TJJC-19052 ¥3,300+税
TOWER RECORDS ONLINE http://tower.jp/
CD 2枚組/全23曲収録】
■初回プレス分限定応募特典
「TOUR2014 或いはアナーキー」(初回プレス分)を購入していただい方を対象に、『BUCK-TICK特製パネル』を抽選で50名様にプレゼント
応募締切日:2014年11月22日(土)当日消印有効
■リリース記念“BUCK-TICK × TOWER RECORDS” コラボ特典
ご予約者先着特典:“BUCK-TICK × TOEWR RECORDSコラボ缶バッジ”
(ご予約者のみの特典になります。各店頭にて無くなり次第、終了となります)
特典:“BUCK-TICK × TOWER RECORDS”コラボポスター
(各店頭にて無くなり次第、終了となります)

◆BUCK-TICK 2014特設Facebook
◆BUCK-TICK オフィシャルサイト
◆徳間ジャパン BUCK-TICK
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