【ライブレポート】INORAN、BIRTHDAYライブで炸裂!「もっと焼き付けさせてくれよ!!」
INORAN が恒例のバースディライヴ<INORAN B-DAY LIVE CODE 929/2014 B-DAY BASH!!!>を9月28日(日)に渋谷公会堂で行なった。
◆INORAN~拡大画像~
名古屋、大阪のライヴを終え、いつも以上にメーターのふりきれた熱いライヴを見せてくれたINORAN。“Get Laid!”、“OH YEAH!”のコール&レスポンスで会場が一体となるラストナンバー「Get Laid」では声を枯らせながら「俺、当分、ライヴねえんだよ!! だから、焼き付けさせてくれよ!!」と叫んだが、この切迫感とこの熱さがこの日のステージを象徴していたように思う。
オープニングナンバーは「No Name」。たたみかけるように「Hide and Seek」へと前半から導火線に火がついたようなアッパーチューンが放たれ、INORANの鋭角的なカッティングで始まる「SuperTramp」ではMurataと向かい合ってギターをかき鳴らし、Ryoのドラムとu:zoのベースもどんどん熱を帯びていく。ソロワークではバックのミュージシャンが変わることが少なくないが、INORANはずっとこの3人と音を鳴らし続けている。だからこそ、生まれるスリルとグルーヴ──。間髪入れずに演奏された歪みまくりのロックンロール「smoke」はバックスクリーンにケムリがたちのぼり、実際のステージにもスモークが焚かれるという超クールな演出の中、演奏された。
会場は椅子席のあるホールだが、INORANはオーディエンスが前のめりにならずにはいられない本気のヴォーカルとギターで挑発していく。イントロで弦楽器陣が呼吸を合わせるように背中を向け、ユニゾンすバンドサウンドのカッコよさを見せつけた「Selfless」では間奏で太くエッジーなギターソロを奏でるINORANに白い光が注がれた。
大歓声の中、2階から早くも“ハッピー・バースディ”と男性ファンが叫び、「ありがとう。でも、今?」とテレるINORAN。
そして、ここからのMCは多くのファンを驚かせた。
「43歳最後の日(この日はプレバースディ)なので終わり良ければ、すべて良し的な感じで昨日から楽しみにしてました。約1年ぶりに渋谷公会堂に帰ってこられて……思い出がたくさん詰まった小屋なんですけど、今日はMC考えてこなかったから、みんなの反応を見てしゃべろうかなと」
ビックリしたのはINORANがLUNA SEA時代から、いっさいMCをしてこなかった立ち位置だったということもあるが、入念に準備を積み重ねた上で爆発するタイプのアーティストだと思っていたからだ。そんなINORANがあえて白紙のままステージに立ったということは、またひとつ殻をぶち破ろうとしている証拠でもある。
「踊りたい人は踊ってください」と呼びかけた「no options」から「CANDY」への流れは極上の心地良さだった。ときにジェスチャーを混じえながら歌うINORANは大人の男の色気を漂わせ、その演奏はアルバム『Dive youth, Sonik dive』をリリースした2年前とは比べものにならないほど深みと迫力を増している。レゲエやヒップホップなどブラックミュージックをINORAN流に昇華した、このあたりのミディアムチューンも彼の音楽の醍醐味だと思う。グレッチのセミアコ(ホワイト・ファルコン)に持ち替えた「Joshua~Sakura」のメドレーではスクリーンにはらはらと落ちていた羽根がいつのまにか光の粒に変わり、客席に灯された無数の焔もあいまって渋谷公会堂はまるで光の洪水──。その幻想的な景色から、どこまでも続くハイウェイのモノクロームの映像が映し出され、12弦ギターの響きが郷愁をそそる「HOME」へと移行したのも印象的であった。
バンドのメンバーによるセッションタイムを挟んで、再び、ステージに登場したINORANは「俺、昨日、ハウス、テクノ系のフェスに行ったんだけど、悔しくてさ。こんなにロックって静かだっけ?もっとロックンロールが最高だっていうことを共有しようぜ!」と煽って、ツアー中のことを振り返って笑わせ、久々にシコ:zo(u:zo扮するラジカセを持った謎のヒッピー)を呼びこみ、ケーキを持って表れたシコ:zoに会場は大盛り上がり。ハッピーバースディの大合唱となった。
想いのままに本音で言葉を投げかけていたINORANは、PCだって文章だって体温がじかに触れあう生のライヴには叶わないというニュアンスのことも言っていた。まさにその通り。そのとき、その場にいた臨場感に勝るものはない。
後半戦では曲順を間違える場面もあったが、それも加速する想いを抑えられなかったことの表れであり、Murataのバンド、my way my loveとu:zoのバンド、Sonz of freedomの曲のカヴァーを披露し、疾走感のカタマリのような「One Big Blue」へと突入。スクリーンのモダンなアートワークと共に見せた「REDISCOVER ON ANOTHER」と、ヒートアップするオーディエンスと最高の景色を作り上げた。
冒頭に書いたように“まだ、まだ足りない”とばかりにINORANは「Get Laid」で声を限りに叫んだ。今日という日は今日しかない。今は今しかない。そのひりひりする時間を共有できるのがライヴであることは言うまでもない。
「また一緒にロックンロールしようぜ!」と去っていったINORAN。アンコールの声は客電がついても鳴りやまず、場内アナウンスのみならず、数人のスタッフがメガホンを持って終演を告げるという異例の事態にーー。こうして熱い熱いプレバースディライヴは幕を閉じた。
取材・文●山本弘子
撮影●Keiko Tanabe
◆INORAN オフィシャルサイト
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