【対談】逹瑯(MUCC) × マオ(シド)、異種格闘技対談-Ring 番外編「ガチンコでフルスイングの闘いになる」
■だって俺、小学校の時の夏休みの宿題なんか提出したことないもん
■9月いっぱいを乗り切れば、うやむやになるんですよね(笑)──逹瑯
逹瑯:歌詞のほうはどういう時に書いてるんすか?
マオ:俺はもう“作詞期間です”っていうのをいただいて、そこで締切りに向かって、他のものをシャットアウトして家で書くっていう。
逹瑯:1曲の歌詞を書くのにどれくらいかかってます?
マオ:最近、速いっすね、俺。
逹瑯:速いんだ?
マオ:すごく速い時は、2時間とかで書きあがることもあるし。
逹瑯:すげえな、それ。
マオ:もちろん2日とかハマっちゃうこともあるんですけど。とはいえ2日間ずっと書けないんじゃなくて、何回も書くんですよね。で、どんどん削除していったり。そうやっていくうちに2日間かかっちゃったりすることはあります。
逹瑯:確かにあるもんなあ。ずーっと書いてって、書き終った時に“あれ? 俺は結局、何が言いたかったんだ?”みたいになること。“これは駄目だな”って。
マオ:ああ、全然あります。
逹瑯:そうやってすっげえ行き詰まった時の、リセットの仕方は?
マオ:リセットですか……。もう止めますね、その日はそこで一回。で、普通に酒呑んだりして。“ああ、今日はもう駄目だ”って諦めます。
逹瑯:で、吞みながら書く?
マオ:いやいや、それはないですけど(笑)。ただ、一応の態勢としては、なるべく部屋にいるようにしてるんですけどね、そういう時でも。急に何か出てきた時のために。やっぱり外だと俺、あり得ない気がするんですよね。外にいて急に何かが来るっていうのは。
逹瑯:俺、それが結構あるんすけどね。俺の場合、“あ、もうほとんど大丈夫だな”とか思えたり、ある程度固まってきて“サビの頭のここだけ出てこない”みたいなところまで来たら、そこでもう寝ちゃうんですよね。その日はもう止めて。で、次の日の歌入れの現場に向かってる途中とかになると、脳味噌がリフレッシュされてまた違う感じになってるから、前の日だったら絶対思いつかなかったようなのが出てきたりするから。そうやって結構、ギリギリの自分を信じて寝ちゃったりするなあ。
──ギリギリまで追い詰められた時に何かを発揮することを知ってしまった、ということですね?
逹瑯:いや、なんか、そのままギュッと絞り出しても、まあそれなりのものは何か出てくるんでしょうけど、一回ぐっすり眠って脳味噌を休ませて、昼間になって景色の変わった外を見ながら音楽を聴くと、脳味噌の違うところを刺激されるというか。それでなんか、より開けた感じの言葉が出てきやすくなるというか。そういうのも結構、経験上あるんで。
──それはなんか、わかる気がします。原稿書きをするうえでも同じようなことはありますし。
逹瑯:ですよね? もちろん、見えないときはやり続けるんですよ。でも、大丈夫だなって確証があるときは寝ちゃいます。なんとなく。
──逹瑯さんもマオさんと同様、作詞期間みたいなものを決めてそのなかで取り組むやり方なんですか?
逹瑯:いや。ていうか、作詞期間があるっていうのはどういう状況なんです? この1週間は作詞をするぞ、みたいな?
マオ:そうですね。この期間に書いてください、という。
──この時期までに曲が揃って、この時期からレコーディングだから、その間に書きましょう、みたいな?
マオ:そう。曲はもうあるんで。作曲期間、作詞期間……もちろんその作詞期間の間にちょろっと撮影とかが入ってくることはあるんですけど。それでも基本的にはなるべくそういうものを入れずに、できれば集中させてほしいなって言ってますね。うちの場合はみんなそれを望んでますね。作曲もそうだし。「ここは作曲期間だからなるべく他の仕事は入れないで」みたいな。
逹瑯:うちの場合はレコーディングしながら、とかもあるから。まず、俺だけじゃないんで、作詞するのが。だいたい、レコーディングの本チャンが始まる頃になっても「これはどっちが歌詞書くのか?」って決まってないこともあったりするんで。
マオ:えーっ!
逹瑯:で、なんとなく「この曲は自分が書いていったから歌詞も自分で書く」とか「この曲の詞は誰々が書くだろうな」というのがありつつも、なんとなく宙ぶらりん状態の曲というのも出てくるわけですよ。だから「とりあえずこっちから先に手を付けておくけど、こっちも書くことになるのかな?」みたいな。制作中はリーダーがいろいろ作業してるから、余裕がなくなってくると「これの歌詞、やっぱり書いて」みたいなのも出てきたりするわけですよ。だから、いつ「書いて!」というのが来てもいいように、なんとなくのネタは広げてあったりするわけです。この曲は来そうだな、というのを想定して。だけどまあ、あっちが書くって言ったらそれはそれでいいや、みたいな。
──「これは俺が書くから歌詞のことは忘れていいぞ」みたいなことはないんですか?
逹瑯:ないですね。逆に言うと、仮歌詞までリーダーが付けてた曲についても「やっぱ書いて!」ということになったりもするわけですよ。そうなってくると、仮歌詞のイメージが自分のなかでも強いから、それを一回消し去って書こうとするんだけど……それこそ自分のなかでの譜割りも仮歌詞に沿ったものになってたりするからそれにも寄り添わなきゃなんないし、だけど俺の言葉で書きたいし……。そういう時がいちばん大変かな。
マオ:すごいっすね、それ。大変そう。
逹瑯:でも俺、逆に「この期間は作詞期間です」ってまとめて1週間とか渡されたら、夏休みの宿題みたいな感じになっちゃいそうな気がする(笑)。
マオ:ああ、最後のほうに集中的に(笑)。でも、こういうやり方に慣れてくると、そうやって最後にまとめてやるのが絶対的に辛いっていうのがわかってくるんで。やっぱ、ろくなことないんですよ(笑)。特にアルバムの歌詞とかの場合は、そうやってまとめて書こうとすると。たとえば「この期間で7曲の歌詞を書いてください」みたいなことがあるんですけど、俺の場合はまず前半のうちに3曲ぐらいやっておかないと、絶対無理なんです。曲のジャンル感も全然違うし、最後にまとめて全部書こうとか思っても無理があるというか。だから自然と、頑張っちゃうんですよね。特にその期間の初日とかは、ちゃんとやろうという感じになるなあ。
逹瑯:俺、初日は絶対、みっちり遊んじゃう気がする(笑)。
──宿題に対する取り組み方がまったく違うんですね、お2人とも。
逹瑯:うん。だって俺、小学校の時の夏休みの宿題なんか、提出したことないもん(笑)。
──そういうことを自慢しないように!(笑)
マオ:ははは!
逹瑯:でも実際、提出したことなくて。だって小学校の夏休みの宿題とかって、やらなくても、9月いっぱいを乗り切れば、うやむやになるんですよね(笑)。9月のうちは毎日のように「明日持ってきなさい」って言われるんだけど、そんな日々をなんとか乗り切れば、9月の後半ぐらいからもうみんな運動会とかの準備に入って、先生も忙しくなってくるから(笑)。そこでうやむやになるというのを知ってしまってたんで。
マオ:確かに(笑)。でも、気持ちが強いですよね。毎日そうやって先生に言われるのって、超イヤじゃないですか。恥ずかしいし、また明日も言われるわけだし。それを耐えるっていうのがすごいと思う。
──それを忍耐と呼ぶべきか、先生をナメていたというべきか(笑)。
逹瑯:でもまあ、とにかく俺は今のやり方のほうがいいですね。1曲1曲、自分のペースで。歌録りの期間というのも、そんなにまとめて何曲もという感じじゃないんで。「この曲のオケが上がったから、このへんでちょっと歌を録ろっか?」みたいな。
マオ:全然違いますね。もう真逆です。うちの場合はもうだいたいオケの録りが終わった時点から「じゃあ、ここから歌を録るぞ」という感じで。
逹瑯:俺、歌も毎日歌いたくはないから、今のやり方のほうがいいんですよね。合間にちょっとずつ、録れるうちに録っていって。まあどうしてもレコーディング後半は連日の歌録りになりますけど。録れるものから録っていくほうがいいかな、俺の場合。
──それはもう逹瑯さんとマオさんの違いというよりも、バンドとしての体質の違いみたいなものなのかもしれませんね。
マオ:うん。
逹瑯:もうそれで慣れちゃってるんでしょうね。
──MUCC方式で明日からシドのレコーディングを始めようとしても無理があるだろうし、その逆のケースについても同じことが言えるだろうし。
逹瑯:最近はよく、家で歌録りしてきちゃう人とか、いるじゃないですか。あれ絶対、無理。俺、家に仕事を持ち込むのがすごくイヤなんで。
──なんか発言としてはえらくカッコ良く聞こえますが。
マオ:ふふふ。
逹瑯:でもホントにあれはイヤだ。終わりがないっていうのがしんどい。
マオ:俺もそれは、やったことないですね。というか、そもそも1人じゃ何もやれないんで。まず何も扱えないし、メカ方面がもう無理なんで。どのマイクがいいのかとかもまったくわからないし。もうホントにまわりの人が「マオ君にはこれが合うから試してみなよ」って言ってくれたものを試してみて、「ああ、これはいいっすね」とか言ったりするんだけど、実は今ひとつわかってない(笑)。いや、普通にいいんですよ、実際。
逹瑯:俺もそれは全然わかんない。マイクが2~3本立ってて、歌ってみて、「ちょっと聴き比べまーす」みたいなことになって、それで決めてもらうまで待つだけなんで、俺の場合も。「はい、マイク決まりました」と言われるのを待つだけ。
──無頓着というのとはまた違うんですよね、それは。
マオ:そうですね。ただ、よく違いをわからないながらも、それで実際、納得いくものができあがってきてるんで、いつも。
──信頼できるまわりの人たちあってこそ、という部分があるわけですね。
マオ:うん。だからもちろんマイクだって何でもいいわけじゃないけど、その人たちが薦めてくれるものなら……。
逹瑯:まわりの人たちがみんな、驚くほどパソコン使いこなしますからね。俺なんか、iTunesとインターネットしか使わないくらいだけど。
マオ:俺もそんな感じですかね。あとはメールのやり取りぐらい。
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