【インタビュー】AUBE・ボーカル海斗「今でも新しい曲がどんどん浮かぶ。解散するのにね」

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2010年5月に結成し、以降独特の“振り”を交えたステージングで活発にライブ活動などを行ってきたビジュアル系バンド「AUBE」。2014年8月16日に行われる池袋EDGEにて開催されるワンマン公演での解散が発表となっているが、ボーカルの海斗にAUBEに対する思いを語ってもらった。

◆AUBE 画像

▲海斗(Vo)
▲yu-ichi(G)
▲sae(G)
▲akiya(B)
▲しゅう(Dr)
──海斗さんはShulla等のバンドを経て、2010年にAUBEを結成されましたが、なぜビジュアル系のバンドを結成しようと思ったのですか?

海斗:原点はBOØWYがきっかけなんです。氷室さんがステージに立つ際はメイクをしてヘアーをセットして歌っていたから、ステージに立つにはそういう風にしないといけないんだ、と思って続けていたら…ビジュアル系と呼ばれるバンドになっていました。

──過去の話になりますが、AUBE結成以前のバンドから海斗さんの“振り”は独特でとても個性的で、当時そのような“振り”をするバンドが後を追うように増えていったようですが、AUBEではどんなことを考えていましたか?

海斗:他の人と同じことをやりたくないから、バンドを始めた頃は見せ方とか、どうしたら盛り上がるかっていうアイデアをすごく考えていた時期があって。今は当たり前のようにみんなタオルを使ってる振りがあるけど、その当時はタオルと言ったら矢沢永吉さんでしょう!と思っていて、永ちゃんみたいなタオルの投げ方をやったりしていました。振りとかパフォーマンス、見せ方や盛り上げ方で他のバンドより目を引くことを考えていたんです。AUBEになってからは俺も含め、他のバンドでいろいろ頑張ってきたメンバーと、初めての本格的な活動だったというメンバーで結成されたバンドで、俺とギターの二人は年齢も上で、結成最初は他の二人から「さん」付けで呼ばれていたから、その「さん」を取るというところが一番最初の壁というか課題でしたね。メンバーは家族や友だちよりも近い存在で、人と人との繋がりが大切だと思っているので。音楽に関していえば、音楽が好きでライブで歌うことが好きというのが本質。だから、売れるための見せ方や詞や曲を作ることも否定はしないけど、やっぱり自分の好きなものを歌っていたい、自分の意に反したことで売れるような音楽ならやらなくていい、と考えるようになりましたね。

──売れることを優先されていた時期もあったんですか?

海斗:これまでのバンド活動の中ではありましたよ。でも俺は流行りっていうのが好きになれなくて、周りから今はこういうことをすれば盛り上がるとか売れると言われても、それで盛り上がってもなあっていうのが強くて。実際、流行りにのって好きでもないことをしたところで売れたバンドがあるかっていったら、他のバンドもそれだけで売れているわけではないし。だから、好きなことをどれだけやれるかが大事だと思うし、今は好きな曲を歌ってその結果売れたらいいなというスタンスですよね。まあ、見せ方はこれまでの音楽活動の経験で身体に染みついている部分もあったんだろうけど。何より俺はAUBEの曲が好きだし、いい曲を書けばライブで歌うことができた。そりゃあ、流行りや他人のいうことを無視して、自分たちの姿勢を貫き続けるってことには怖さもあるんですよ。でも、虚勢を張ってでも俺たちは貫いてきたというか、ボーカルである自分が何も怖くないんだという強い気持ちでバンドを引っ張ってきた。

──海斗さんはそうやって前に進んできたんですね。

海斗:後ろを向かないようにしている部分もあると思いますけどね。あのときのステージはかっこよかったなとか、そういうのはあまり出さないし、それから自分を守ったりもしないですね。メンバーがいてくれるから、そしてお客さんが聞いてくれるから歌っているし、背中でメンバーを感じ、前からお客さんの視線を感じて歌えることが心地良い。俺の立ち位置としては、メンバーとお客さんの間にいる感覚で、そこは自分一人の世界っていう。ボクサーが一度リングに立って、勝つことを覚えたらやめられないというのと同じかな、と。

──前向きすぎる海斗さんが転ばないように進めたのはメンバーのおかげ?

海斗:そうですね。おそらく残りの4人のおかげですね。ただ何にしても、他のメンバーもどこかしら同じ考えがあったと思います。

──そんな同じ方向で活動していたはずのAUBEが、4年の活動期間を経て解散を発表しました。なぜ解散なんでしょうか?

海斗:ひとことでいうと世代感の違い、かな。音楽性の違いというよりは個々に成長したことで今後、音楽をやっていくうえでの人間同士の付き合い方を考えて、というのが一番の理由です。

──成長というプラス要素が、バンドにとって妨げになった?

海斗:結成当初は、メンバーの中に急に大きいステージに立つことになってついていくのに精一杯、こちらからしたらついてこさせるのに精一杯、そんな感じがありました。それが経験を重ねて成長して自分の立ち位置や現状が把握できたときに、今度は自分でこういうことをやってみたいと思う人もいれば、このまま行こうと思う人が出てくるのは人間は欲があるから仕方ないんじゃないかな。

──脱退や活動休止という選択肢は考えなかったんですか?

海斗:個人的には、俺は脱退はアリだと思ってます。自分のやりたいことがあってそれがAUBEではできないというのであれば、他でやればいい。この5人でなければ絶対にイヤということはないです。誰もがこのまま人生が終わるまでAUBEでいられるわけがないとは思っていたし、だからこそ今を必死にやろうと頑張ってきたわけだし。俺、バンドのメンバーに対してはコイツ、マジで嫌いだと思うことがあっても、やっぱりいて良かったとも思うことがあって、結局、メンバーにはいつも優柔不断でいられる自分がいるんですよ。だからAUBEって名前は「解散」という言葉で壊さずに活動休止でいいじゃん、たまに集まればいいんじゃない、そういうスタンスでも俺はいい。それぞれが個々に別のバンドを組んで活動するけど、AUBEの存在は残しつつという形を取りたかったんです。でも、やっぱりケジメをつけたいという人間もいて…ただ、誰かが脱退して新しいメンバーを迎える場合、もう一度新たなバンドを組むくらいの気力が必要なんです。今回、そこを踏ん張れるかっていうと、一人二人が抜けたときに残ったメンバーがもう一度新しい力を加えて前に踏み出す気力がなかったし、その一歩は後ろに下がっているような気がしたから。

──解散や脱退の話は、これまではなかったんですか?

海斗:いや、今までも何度かありましたよ。そのたびに越えてきたんだけど、今回はもう乗り越えられなかった。躓いて転んで起き上がろうと思うことができなかったというか…。「解散」とか「脱退」という言葉が誰かによって出たときは険悪になりましたけどね。そして誰が良い悪いではなく今後を本気で、真剣に考えた結果、解散が成立しちゃった。

──AUBEのボーカリストで、伝えるという意味ではお客さんに一番近い存在ですが、海斗さんは解散をどう伝えたんですか?

海斗:実は俺、MCとかではまだ伝えてないです。伝えられてない、というのが現状です。俺もメンバーもAUBEが好きでいることを感じてくれている人が多いから、5人ともAUBEが好きなのになぜ解散するのかって言われると、こっちも困るという。もうこのメンバーでやることはないって突っぱねてあげることがいいと思ってるし、ボーカルとして俺が伝えなければいけないんだけど、正直に言うとまだそれは言えない。自分の中で「解散ってマジかよ」という思いがあるので。いや、解散はわかってるし、もうすぐラストライブがあってこのバンドは終了なんだ、というのは頭ではわかっているけど、納得してないのかな。今後、人生の中ではプラスになっていくと思うけど、今は解散はしたくない。俺はAUBEが好きだし、続けたいって気持ちなのはメンバーにも伝わってます。きっと、個人的に当分は解散したっていう感覚は来ないと思います。

──ラストライブだけど、最後まで何が起きるかわからない。ちなみに、ライブのセットリストは?

海斗:もう出来ています。でもそれもどうなるかはわからない。

──ライブの途中でやりたくないってステージを投げ出す可能性は?

海斗:AUBEではそれはないですね。それよりも、もう1曲やろうぜって…。

──本当にAUBEが好きなんですね。

海斗:うーん。単純になっていった感じかな。ギター弾くのが好き、歌うのが好きとか。先日やったアコースティックライブに関しても、やってみようという話が自然と出るバンドになりましたしね。アコースティックでそれぞれの楽器をきちんと演奏したいというのは、AUBEが始まった当時よりも音楽だったり曲だったり、自分のパートが好きになっていったということだと思いますよ。

──最後の音源に、他のメンバーに対しての海斗さんなりの気持ちも込められている?

海斗:解散のことを考えていくうちに出来上がったのがラストシングル「P.S.」です。メンバーに向けてまだ言いたいことがある、終わってないっていう。詞を書いているときはyu-ichi(G)の顔はよく浮かんでいましたね。ちょっと顔の輪郭が昔よりまん丸になった顔が(笑)。

──“P.S.”って“追伸”ですもんね。その追伸の言葉は時間や場所によって、たとえば名古屋や大阪(ともに終了)でそれぞれ変わりそうですか。つまり、“P.S.”の終わりはまだないってこと?

海斗:いや、言葉自体は変わらないんじゃないですか、ただ「。」を付けられないだけで…今でも新しい曲がどんどん浮かぶんですよ。解散するのにね。

取材:重野彩加
文:岸端薫子

ラストシングル「P.S.」
2014年7月23日(水)発売
¥1,296(tax in) AUCR-0021
1.P.S.
2.Dear-Sunset Beach Ver.-

AUBEラスト東名阪ツアー<Dear “you”>
2014年8月15日(金)
@渋谷club asia
0PEN 17:30 / START 18:00
前売り3,500円 / 当日4,000円(ドリンク代別500円)
イープラス http://bit.ly/1lfCyWy

AUBEラスト東名阪ツアー追加最終公演<Dear ”you”>
2014年8月16日(土)
@池袋EDGE
0PEN 17:30 / START 18:00
前売り3,500円 / 当日4,000円(ドリンク代別500円)
イープラス http://bit.ly/W35xbK

◆AUBE オフィシャルサイト
◆BARKS ヴィジュアル系 V-ROCK
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