【インタビュー】THE PRIVATES、結成30周年「求められる音でなく、自分たちの求める音楽を」
■僕らのやってる音楽って、車の中で隣には女の子がいて
■カーステレオから極上のRock and Rollが聴こえてきたら最高っていうもの
──あらゆるものを試した結果、確信めいたものがみえたわけですね。では、デジタル配信を意識した部分はありましたか?
延原:それはないかなー。レコーディングスタジオのいいスピーカーで再生して、ローが足りないとかハイはもっとこうしたいとかデジタル配信対策をやって作っても、iPhoneの小さいスピーカーから鳴らして聴いてる確率が高いわけだよね。それはもう僕ら作り手の想像の範疇を超えてる話になる(笑)。もちろん最高の音作りに対する妥協はないけど、その先の聞き方はユーザーに委ねるかな。
──延原さんご自身は、音楽の聴き方へのこだわりはありますか?
延原:僕は特殊なんだけど、ラジオで聴くんですよ(笑)。もちろんステレオも持ってるけどね。
──CDなどの音源を、あえてラジオのスピーカーを通して聴くということですか?
延原:60年代のイギリスのPYEというメーカーのラジオがあってね。たまたまイギリスに行った時に買ったんだけど、アンプを作ったりできる友達に外部入力を付けてもらってさ、そこから出力しているという(笑)。
──ほぉ。それはかなり斬新。
延原:あはは、斬新だよね(笑)。いろんな装置で音楽を聴いてきたけど、昔のラジオで聴こえる音が僕は一番好きなんだよね。結構大きな音を出しても、やかましいけどうるさく聴こえないんですよ。海外映画のダイナーのシーンとかで、キャストが会話してる後ろでかかってるような感じって言えば分かるかな。一日中音楽を聴いているとしたら、ステレオで大きな音を鳴らすとかハイファイなサウンドよりは、ラジオを通した方が心地いいんだよね。友達なんかに聴かせてもわりと評判いいですよ。
──今の時代、ハイレゾなどの高解像度の音か、簡素にデジタル化された音の極端な選択肢になりがちですけど、違った楽しみ方もあると。
延原:そうだね。もし一流のオーケーストラで著名なマエストロが指揮するような、ダイナミックレンジもすごいような音源だったら数百万円もするようなハイエンドなステレオで聴くのがいいかもしれない。でも僕らのやってる音楽って、車の中で隣には女の子がいて……そのときにカーステレオから極上のロックンロールが聴こえてきたら最高、っていうものだったりするからね。
──先ほどアルバムを制作中との話がありましたが、30周年を意識した内容になりますか?
延原:それはもう、意識しまくってますね(笑)。2枚組で1つはオリジナル、もう1つはカバー集。オリジナルに関しては、30周年ってことはあまり考えず、自分らの最新アルバムを作る感覚でしたね。カバーのほうは、日本で30年間ロックンロールをやってきて、交流を持ったり尊敬してる人たちと一緒に作れたらなと。
──仲井戸麗市さんやチバユウスケさん、甲本ヒロトさんと真島昌利さんなど、すごく豪華なメンバーで。
延原:そう。それにカバーを作るとなった時、最初は国籍も時代も関係なく曲を選ぼうって話をしてたんです。でも、それだと散漫になり過ぎるかなと。僕らは“ロックンロールの使者”という命を受けて活動していると自負してるから、そのセンスも分かりやすく出したいなとも思ったんですよね。最初の話にも繋がるけど、50年代や60年代というロックンロールが生まれた黎明期でビートルズやストーンズも出てきたでしょ。実は2007年に一度カバーアルバム(『BEAT BEAT BEAT』)を作ったんだけど、そのときは60年代UKグループのリズム&ブルースから楽曲を選んだこともあって。だったら今回も、その流れを組んで50年代や60年代のリズム&ブルースだねって決まっていきました。ビートグループやガレージもやりたかったけど、そういうカバーはまたいつか別のときにやれるかなってことに落ち着いたんですよ。
──当時のリズム&ブルースは多くのバンドやロッカーがリスペクトして、カバーもされてますね?
延原:うん。ビートルズやストーンズ、フー、キンクスといった僕らが好きなバンドをはじめ、その時代のバンドがたくさんカバーし尽くして、いわば虫食い状態だったりする。だからあえて、彼らがカバーしてない曲で、なおかつレアすぎない曲を選ぼうってことに決めた。オムニバスだけに入ってるとかじゃなく、ストーンズが取り上げた曲も入ってるアルバムの別の曲とかね。
──選ぶのが大変だったのでは?
延原:それがね、やっぱりまだまだ良い曲、カッコいい曲はいっぱいあるんですよ(笑)。
──カバーも魅力的ですが、久しぶりのオリジナルアルバムも相当気になります。
延原:こっちもね、カッコいい曲、そろってますよ(笑)。僕らはこれまで1~2年ごとに1枚アルバムを作ってきたんだけど、東日本大震災があった頃にちょうど新しいアルバムを作ろうとしてて。スタジオに入れなかったとか、そういう物理的な理由ではないけど、みんな気持ち的にザワザワしちゃってレコーディングどころじゃなくなったんだよね。そのタイミングを逃した結果、僕らはずっとライブツアーをやり続けてるから、そうこうしてる間に4年も経ってしまった感じ。2年くらい前から、自分らとして周りからも「今年こそは」って感じだったから、やっと出せるなって。アルバムには、「キッスを、もう一度」みたいな曲もあればエッジの利いた曲もあるし、言いたいことを言ってる曲も、ロマンチックな曲も、全部一緒の気持ちで真摯に作ってる。ジャンルやカテゴリーなど何ものにも縛られず自由でいたいということだね。
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