【ライヴレポート】Angelo主催イベントで異種5バンドが交錯「不可能が可能へ」

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Angeloの提唱による夏のイベント、<THE INTERSECTION OF DOGMA>も2014年で三回目の開催を迎え、そろそろ“恒例の”という言葉が似つかわしくなってきた。直訳すれば“教義の交差”といった意味合いになるこのタイトルが示唆しているように、この場では独自の美学や信条を持ち合わせた者たちが交錯し、単体では引き起こし得ない化学反応が生まれることになる。今回もそれは例外ではなかった。

◆<THE INTERSECTION OF DOGMA> 拡大画像

▲D’ESPAIRSRAY
▲FAKE?
▲lynch.
▲RIZE
▲Angelo
7月29日、夕刻。Zepp Diver Cityのステージにまず登場したのはD’ESPAIRSRAY。HIZUMI(vo)の声帯治療を目的とする休止期間を経て2011年6月に解散を表明したこのバンドにとっては、2010年末以来のライヴということになる。いわゆる解散ライヴを行なっておらず、復活宣言めいたものを行なっているわけでもないだけに、どこか複雑で不明瞭な思いを抱えながらこの日を待っていたファンも少なくないはずだ。が、ステージを覆う幕にこのバンドの名前が映し出された瞬間に、オーディエンスは歓喜の声とともにステージ前へと押し寄せていた。わずか4曲のパフォーマンスではあったが、ブランクを感じさせない歌唱と演奏には、“次”を期待せずにいられない魅力と吸引力があった。補足するまでもないはずだが、このバンドのギタリストはAngeloの一員であるKaryu。全出演者のうち彼だけが、この夜、2ステージを掛け持ちすることになった。

その熱を追い風にしながら二番手に登場したのは、FAKE?だ。防毒マスクを装着したKEN LLOYDがステージ上を縦横無尽に駆け回りながら、客席を挑発する。しかもマスクを外した後は、その躍動にも加速がついていく。メンバーが固定的なわけではないFAKE?は、基本的にはあくまでKEN自身のソロ・プロジェクトということになるわけだが、鋭角的なセンスを持った実力者ぞろいのメンバーたちが繰り出すサウンドには、充分過ぎるほどの整合感が備わっているうえに、イビツな刺激に満ちている。ある意味、FAKE?の音楽自体に“ジャンル分けの無用さ/無意味さ”を無言のうちに伝えてくれるところがあるわけで、そうした意味からもこのイベントにはうってつけの出演者だったといえるはずだ。

続いては、ちょうど最新アルバム『GALLOWS』に伴う全国ツアーを展開中のlynch.。メンバーたちは黒ずくめの衣装に身を包みながらも、1曲目の「EXODUS」から、そのクールさとは裏腹の激情型アグレッシヴ・サウンドを存分に炸裂させた。年々、ヘヴィ・ロック・バンドとしての説得力を増している彼らだが、それが単なる時代性の追求や“壁の向こう側のスタイル”への接近にとどまらず、生来の美意識に忠実なまま進化が実践されている事実には、もっと広く注目/評価されるべき価値があると思う。このイベントに3年連続で起用されているのは彼らだけだが、それはおそらく、そうした点をAngeloのキリトもまた高く評価しているからではないだろうか。当然ながらそれは、他の出演者たちにとっても同じことだろうが。

嵐のようなlynch.の演奏が終わると、そこにはさらなる嵐が。RIZEの登場だ。いわゆるジャンル感の部分でいえば、Angeloをはじめとする他の出演ラインナップからいちばん遠くに位置すると言っていいはずの彼らだが、彼らもまた、デビュー当時から邦楽/洋楽の壁やジャンルの枠組を蹴り飛ばしながら活動してきたバンド。しかも各々のプレイヤーとしてのアビリティやセンス、プレゼンスの強烈さ、印象度の強さなど、どこにも欠点がない。非常に乱暴な言い方になるが、曲を知らない人たちにもこのバンドのすごさは伝わり得るし、逆に免疫のない人たちこそ、そのインパクトを最大級に味わうことができるのかもしれない。実際、客席からステージへと押し寄せてくる熱波は、曲を重ねていくごとに温度を高めていった。

そして、こうしたさまざまな色の熱狂を経ながら、最後の最後にAngeloが登場。「FAITH」で幕を開けたステージは、彼ら自身がこのイベントの主宰者であるにも拘らず、アンコールを含めてもわずか8曲。そこで自分たちだけを優遇しようとしない彼らに、心意気めいたものを感じた。なかには物量的な意味での物足りなさをおぼえたファンもいるだろう。が、そのコンパクトな時間枠内で体現された世界観の色濃さといったものには“さすが!”と唸らされるものがあった。また、キリトという存在のユニークなカリスマ性(マイクスタンドを床に叩きつけて破壊してしまう凶暴さもあれば、MCで観衆を和ませる術も心得ている)は相変わらず注目に値するが、いわゆる今日的なヘヴィ・ロックとしての音楽的評価も、もっと獲得して然るべきバンドだと改めて感じさせられた。

この夜の最後に演奏されたのは、Angeloの「REBORN」。その演奏途中、キリトがステージ袖に向けて合図をすると、lynch.の葉月、FAKE?のKEN、D’ESPAIRSRAYのHIZUMIという3人のヴォーカリストが現れ、キリトともにこの曲を歌いあげ、キリトと葉月が肩を組みながら歌うという場面も。こうして夏の宴は、最後は和やかに幕を閉じた。ステージ上のキリトが口にした「不可能だと思われていることを、僕たちの側が可能にしていけたら……」という言葉が、とても印象的だった。果たして次はいかなる不可能が可能へと変換されることになるのか? Angelo、そして各出演バンドの次なる動きに注目しておきたいところだ。

取材・文◎増田勇一

■<Angelo Presents「THE INTERSECTION OF DOGMA」>
2014年7月29日(火)@Zepp DiverCity Tokyoセットリスト
【D'ESPAIRSRAY】
1. Garnet
2. DEATH POINT
3. DEVIL’S PARADE
4. MIRROR
【FAKE?】
1. Hedfuc
2. Someday
3. Lucifer’s Cut
4. Everglow
5. Radio’s dead
【lynch.】
1. EXODUS
2. DEVIL
3. GREED
4. An illusion
5. INVINCIBLE
6. MIRRORS
7. ADORE
【RIZE】
1. KAMI
2. ZERO
3. SUCKER
4. LOVE HATE
5.Gun Shot
6.カミナリ
【Angelo】
1. FAITH
2. RIP
3. Script error
4. MADMAN QUANTUM VARIATION
5. PROGRAM
6. シナプス
7. PLOSIVE
encore
en.1REBORN

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◆Angelo オフィシャルサイト
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